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夢の終わりと「大人」の死:「シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版」感想
※ブログ記事の採録です。
昨日、エヴァが終わった。
永遠に終わらないと思った物語が終わった。
長い夢が、25年分の愛や憎しみやらがないまぜになった屈折した思いを引き連れて終わったのだった。
後に残るのは、一抹の寂しさと、それと幾分かほっとしたような気分。
そう、エヴァは終わったのだ。
……終わった終わったとばかり言っていてもらちがあかないので、
ぽつぽつと気持ちを整理していきたいと思う。
窓の向こう側(後編)
<承前>
それからの一週間はすぐに過ぎた。ただでさえ速く過ぎていく時間がさらに速度を増したかのようだった。それゆえ、過ぎていく日常はぼやけた遠景のようで、読み流す英文の一節一節が、あるいは数学や国語の問題の一問一問が、確かに頭の中を通り過ぎ処理されていくというのに、何もかもが他人事のようで、自分自身ではない誰かが機械的にこなしているみたいだった。理科や社会の問題を解けば、記憶装置が要求された知
窓の向こう側(前編)
きっと、惚れた異性に初めて告白するときにはこんな気分になるに違いない。
絵のモデルになってくれないか、ただその一言を絞り出すのに随分勇気が要った。
「モデルって……」
「いや、ヌードとかじゃなくて、普通に座っているだけでいいから」
慌てて早口で付け足した言葉は空回りした気がした。俺はさぞ滑稽な顔をしていたのだろう。そんな俺の様子が可笑しかったのかもしれない。斉藤ははにかみ半分、微笑んで言った
日常という煉獄の先:ヤマシタトモコ『ひばりの朝』感想
ネタバレは少し含む。
ある種の人々には自明のことではあるけれど、毎日の生活というものは煉獄以外の何者でもない。
閉じた人間関係。 押し寄せる大量の雑事。その実変わり映えしない、ただ生きづらい毎日。
繰り返される茶番にいつしか感情は鈍麻する。
愛想笑いを浮かべながらも、この終わりのない刑罰にうんざりしている。
とはいえ、自分で終わらせるほどの勇気はない。
ふいに隕石が地球に衝突しない
日の当たる場所、あるいは奇跡のない世界:映画「この世界の片隅に」感想
※テスト稼働ということで、2016/12/09のブログ記事の採録です。
――ネタバレを含む。当然ながら。
こういうことをよく考える:
ある作品が特定の人々を感動させる一方で、特定の人々に対しては何の感動ももたらさない、といったことがあるのはなぜだろうか。
僕自身、人と温度差を感じることが多いので、なぜ自分は他のひとと同じような楽しみ方ができないのかと自責の念に駆られる。
単なる個人差