学習指導要領のコード化とデジタルアーカイブ(後編)
はじめに
前回は学校教育がデジタル化によって大きく変わってきているという背景を確認しました。そのような状況の中で、学校の学習内容と教材やデジタルアーカイブ等のデータ情報を結び付けたいという目的から考案されたのが、学習指導要領のコード化でした。後編では、実際に学習指導要領のコード化とは何かを整理したいと思います。
1.学習指導要領のコード化
コード化では、学習指導要領の冒頭から順番に16ケタのコードが割り振られます。それぞれの数字には科目や学年、指導要領の項目などが当てはめられています。第1ケタは「告示時期」、第2ケタは「学校種別」、第3ケタは「教科」といった形です。
具体的な例として、高等学校の日本史の学習指導要領を見てみましょう。江戸時代について学ぶ部分、やや階層が深いですがC-(1)-ア-(ア)の内容です。見出しは「C 近世の日本と世界」です。次に「(1) 近世への転換と歴史的環境 諸資料を活用し,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。」と指導の目的が示されています。そして「ア 次のような知識を身に付けること。」と指示があり、具体的に「(ア) 織豊政権の政治・経済政策,貿易や対外関係などを基に,中世から近世への時代の転換を理解すること。」と内容が示されます。このC-(1)-ア-(ア)のコードは「8434503311100000」となります。
コード「8434503311100000」がどのような情報で構成されているのか確認します。
以上がこのコードが示している情報です。授業は学習指導要領に沿って組み立てられていますので、このようなコードが教材やデジタルアーカイブなどの資料に付与されていれば、使う教材や資料が探しやすくなるのです。
※1 高等学校学習指導要領コードについては、文部科学省が公開している【83V11】バージョン1.1をもとにしています。コードの構成については、文部科学省が公開している「学習指導要領コードのコード割り当て表」を参照しました。(リンク:文部科学省 教育データ標準)
2.学習指導要領コードの研究と利活用
現在では、このような学習指導要領コードをどのように利活用していくか新たな技術開発や研究が進められています。
コードが学習指導要領の何を示しているのかを簡単に検索できるものとして、学習指導要領LOD(Linked Open Data)があります。コード割り当て表を見ながら数字を確認する必要がないため、コードの利活用促進に寄与しています。このサイトについては、榎本聡、大井将生、高久雅生ら「学習指導要領のLinked Open Data化による学習への利活用に向けた検討」(『日本教育工学会研究報告集』2022(1)、2022・5)が紹介と利活用についての考察をしています。
また、中川 哲、清遠 和弘、白鳥 亮ら「学習指導要領コードを用いてデジタル教科書と外部教材を連携させるシステム開発に関する検討」(『日本教育工学会研究報告集』2023(2)、2023・7)では、デジタル教科書から外部教材(動画)にリンクさせることで、教材の利用を促進させています。
おわりに
学習指導要領コードの付与によって教科書と教材、デジタルアーカイブ等の情報を連携させることが出来るようになったことがわかりました。さまざまな研究によって検索や連携も容易になってきており、この先、ますます学習指導要領コードとの連携が求められるでしょう。今後、デジタルアーカイブを開発していく際には、学習教材としての利活用や学習指導要領コードとの連携を踏まえて取り組んでいく必要があることを認識させられました。
参考文献・関連リンク
・文部科学省「学習指導要領コードについて」(初等中等教育局学びの先端技術活用推進室)
・文部科学省 教育データ標準
・学習指導要領LOD
・榎本聡、大井将生、高久雅生ら「学習指導要領のLinked Open Data化による学習への利活用に向けた検討」(『日本教育工学会研究報告集』2022(1)、2022・5)
・中川 哲、清遠 和弘、白鳥 亮ら「学習指導要領コードを用いてデジタル教科書と外部教材を連携させるシステム開発に関する検討」(『日本教育工学会研究報告集』2023(2)、2023・7)