岩倉博『吉野源三郎の生涯 平和の意志 編集の力』 (2022、花伝社)を読む
吉野源三郎と言えば児童小説『君たちはどう生きるか』の作者であり、その作品が宮﨑駿監督作の映画の発想の元になったことでその名も改めて周知されることになった。改めて、とあえて記述したのには意味がある。本書を読むと第二次世界大戦後の日本社会において、吉野がいわゆる進歩的知識人・言論人・編集者・作家として歩んだ生涯の足跡の大きさ、もっと言えば偉大さを感じる。しかし、私自身は宮﨑監督作を観るまでは、これまで特に吉野自身に注目したことはなかった。不勉強ではあるが、1981年にその生涯を閉