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『君たちはどう生きるか』の映画感想まとめ

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『君たちはどう生きるか』についてのすてきな映画感想をまとめるマガジンです。 #君たちはどう生きるか
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#映画

映画『君たちはどう生きるか』をようやく観に行った【ほぼエッセイ】

その日は東京に台風が直撃していて、洗濯機日和だった。 公開されてから1年以上観ることができていなかった『君たちはどう生きるか』の上映館を調べ、下高井戸に向かった。 高いが下にある井戸とは一体何か。 湿気と疑問が交錯する京王線に乗った。 慌ただしい乗り換え。新宿から高幡不動行きへ。 車内は空いている。誰もいない優先席に腰を下ろす。私はふと、いきものがかりの「さよなら青春」を思い出していた。 窓の向こうの雨の街並みにぼんやりと視線をやりながら、けだるい体を起こして映画館まで移動

映画「君たちはどう生きるか」の衝撃から一年

 宮﨑駿監督作品「君たちはどう生きるか」が公開されてから一年が経った。 ということで、私のnoteでは何度か「君たちはどう生きるか」について書いているのだけど、改めて個人的な作品の感想などをこの映画を振り返りながら書いていこうと思う。 ※ネタバレあります。 驚きの映画体験「君たちはどう生きるか」は「宣伝をしない」ことで話題になった。 前情報はあのポスターのみ。 「本当に宣伝なしで行くのか!?」っていう人もいれば宮﨑駿の新作が出ることすら知らないという人もいた。 そして

【映画レビュー】「君たちはどう生きるか」

いやまぁしかし、毎日暑くって死にそう。こんなに暑い中でも人間は生きていけるのか!生きていかなければならないと言うのか!そう俺は問いたい!てな訳で無事にソフトも発売したので、そろそろ宮崎駿の「君たちはどう生きるか」の話をしたい。もちろんネタバレ全開で。 〜あらすじ〜 病院の火事により母親を亡くした主人公の眞人。 疎開先で父の再婚相手であり、母親の実の妹でもある夏子に迎えられ、怪しい塔が隣に立つ新居へと移り住む。だがそこに人間の言葉を話す謎の青サギが現れ、眞人は異世界へと誘わ

深読み 米津玄師の『さよーならまたいつか!(『虎に翼』主題歌)』第11話

前回はこちら 2024年2月某日 (主題歌の依頼から三日目) 都内某所の自宅 まだまだ続きがあるんだよ。 秀次郎さんが『石橋』の話を終えた頃、お店に女性が入って来たんだ。 ワン? その女性の名は、さくらさん。 新宿二丁目で「キリコ」という小さな居酒屋を営んでいる人だよ。 さくらさんは秀次郎さんを探しに来たんだ。 ワン? そう。「キリコ」は駅のすぐ近くにある居酒屋だ。 なぜわかったの? ♬bowwow bowwow~ bowwow bowwow~ boww

【後編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

前編はこちら▼【以下後編】字体統一のメリットとデメリット新聞のルールで名前の字体を変えた結果、その人が普段使っている表記や他のメディアでの表記と異なることで、「同じ人物」を指すことが分かりにくくなってしまうとすればデメリットと言わざるをえません。 新聞は「分かりやすい」記事を旨とします。普段「臺」を使っている人の名前を「台」にすると、字体は「分かりやす」くなりますが、「臺」と「台」が〈字体が異なる同じ字種である〉という知識を読者に要求する、という点では「分かりにく」くなって

【前編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

「宮﨑 駿 監督作品」泣く子も黙るスタジオジブリ作品「君たちはどう生きるか」が公開された2023年夏、校閲部内(の一部)に動揺が走りました。 宮崎駿が「たつさき」になっている…ざわ…ざわ アシタカ「じいじ、何だろう」 じいじ「分からぬ。人ではない」 アシタカ「村の方はヒイさまが皆を呼び戻している」 じいじ「来おった……タツサキだ!!」 アシタカ「タツサキ!?」  ♪ デッデー、デデデッデー 映画ポスターの監督名表記がこれまでの「宮崎駿」から「宮﨑駿」にさりげなく変わって

239 生き方は生きて学ぶしかない。

どう生きるか? その問いズルくない? まあ、見ていない映画のことを言うのもなんだけど。映画『 君たちはどう生きるか 』のタイトルを見たとき、もちろんその前に吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』があって、そこからの漫画『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著、羽賀翔一著)が話題になっていたことを思い出した。  いまのところ、書籍も漫画も読んでないし、映画も見ていない。  ただ、「どう生きるか」は、生きている間にずっと、ただしふわっと浮かんでいるテーマだろうから、きっと誰もが一度は

海外へ向けて説明したい『君たちはどう生きるか』のポイント

とあるご縁から、海外向けに『君たちはどう生きるか』の記事を書くことになった。バイリンガルの翻訳家と一緒に映画を鑑賞し、どんなポイントが海外の方にとって伝わりづらいかを話し合ったのだが、いつもと違う視点と考え方で、新鮮かつ非常に面白い。 そこで英語に翻訳される前の日本語記事(少し日本用に整えたもの)を下記に掲載してみた。日本人による日本の解説は「当たり前」と思われる部分もあるかもしれないが、本来は海外向けであるので広い心で読んでいただきたい。 ▼ここから記事(翻訳前) 宮

岩倉博『吉野源三郎の生涯 平和の意志 編集の力』 (2022、花伝社)を読む

吉野源三郎と言えば児童小説『君たちはどう生きるか』の作者であり、その作品が宮﨑駿監督作の映画の発想の元になったことでその名も改めて周知されることになった。改めて、とあえて記述したのには意味がある。本書を読むと第二次世界大戦後の日本社会において、吉野がいわゆる進歩的知識人・言論人・編集者・作家として歩んだ生涯の足跡の大きさ、もっと言えば偉大さを感じる。しかし、私自身は宮﨑監督作を観るまでは、これまで特に吉野自身に注目したことはなかった。不勉強ではあるが、1981年にその生涯を閉

映画「君たちはどう生きるか」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第84回

生きるに値する世界だと思えますように 2023年公開映画「君たちはどう生きるか(The Boy and the Heron)」の指輪 文・〝美根〟 「賛否両論」「カオス」「難解」「今までの作品を思わせる描写」・・・ 口コミは口コミであって、実際観てみると全然違う!という経験も多くしてきたのに、やはり観る前に口コミを見てしまうし、自分でもこうして観た感想やらを書き留め、紹介している私です。 第96回アカデミー賞長編アニメーション映画部門賞受賞した「君たちはどう生きるか」も、正

わたしはどう生きるか #67

こんばんちゃんこ〜!わたちゃんこです☁️   さいきんね、ふと将来が不安になったりするの。 わたしの周りはみんな才能あふれる人ばかりで、すごく努力のできる子、高学歴で頭の回転の速い子、起業した子や将来のために行動してる子ばかり。 同じ芸能の仕事をしてる友達も大きな事務所に所属してたりで。 心配性だから今のんびりアイドルしてていいのかな、自分ももっと何かしなきゃいけないのかなってたまに焦る。 つ、つみたてにーさ…?資格とか………??? 聞いてるだけで嫌になってきます

ジブリ「君たちはどう生きるか」を消化できる人とできない人

第96回アカデミー賞長編アニメーション映画賞を受賞した宮崎駿監督映画「君たちはどう生きるか」だが、日本国内で絶賛する人と酷評する人の両極しかいないというジブリ映画としては大変珍しい現象が起きている。 本作はいつものジブリ映画だと思って休日に子供を連れて見に行ったら泡を吹くような映画となっている。駿やりすぎでしょってくらい駿ワールドのフルスロットル。渾身の右ストレートを喰らったような好きなモノ、やりたかったことを詰め込んだ映画となっているため、パクチー並みに好き嫌いが別れてい

<映画>予習は必要か?

話題の映画「オッペンハイマー」を観てきました。 予習は必要か?世間では予習が必要、という声が多くありましたが 思うところがあり、予習をせずに映画館に行きました。 めぐりあう時間たち 登場人物が多く、時間が交錯する感じは昔観た 「めぐりあう時間たち」を彷彿とさせられました。 https://youtu.be/-y4UPdx2s68?si=dX1U29qHHoPWscbr あの映画も予習が必要、と話題になりましたが確かに 映画館で観た時はわからなかったことが 様々な映画

『さみしい夜にはペンを持て』を『君たち』と読み比べると現代のことがわかる!?——『現代思想』の『君たちはどう生きるか』特集を読む(4)

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