私を捨てたなら、幸せになってほしかった

ドラマなどで
別れたカップルの会話で
よくきく

私を捨てたなら、いっそ幸せになってほしかった。

一方的にフッた方が
戻ってきた時に
フラれた方がいうこのセリフ。

幼い頃、
このセリフが
理解できなかった。

捨てられたなら
不幸になった方が
よくないの？

あわよくば
それで戻ってきたら
嬉しくない？？

そんな風に思っていたが、

この言葉の意味が
最近わかった。

「幸せに」なってほしいのか？

大切な人に
一方的に別れを
告げられて、

数ヶ月後、数年後に
その人が戻ってきた

そんな
経験はありますか？

私は付き合っていた人に
突然別れを告げられて

気づいたら他の女性と
結婚していた経験がある。

数年後、
結婚生活がうまくいかず
ボロボロになって
戻ってきた時、

それを望んでたはずなのに
がっかりしたことを
覚えている。

こんな姿が見たかったわけじゃないのに…

そう感じた。

この時にやっと、
ドラマのセリフが
わかったような気がした。

しかし、一つだけ
違和感が残っていた。

私を捨てたなら、いっそ幸せになってほしかった。

この
「幸せになってほしかった」
というのは

本当に、心から、
相手の幸せを願っているのか？

そう言いながら、

相手の心配よりも
「がっかり」が先に来るのは
なぜだろう。

ずっと引っかかっていた。

最近わかったのは、
このセリフは

相手ではなく
自分のための言葉だった
ということ。

幻想のままでいてほしかった

結婚生活がうまくいかず
戻ってきた時に感じた

「いっそ幸せになってほしかった」
は、自分にベクトルが向いていた。

何かあったのかな、
大丈夫かな、
などの相手の心配より、

彼に抱いていた
幻想が壊されたような
虚無感を感じた。

別れるまでは、
彼を世界でいちばん
素敵だと思ってたし、

この人を逃したら
もうこれ以上の人には
出会えないと思っていた。

だから他の人と結婚して、
数年間苦しんだ。

苦しむほど大好きで
キラキラした人だったから、

ボロボロになった姿を見て、
正直、幻滅した。

フラれた後
数年の月日を経て
気づけば彼を魅力的に
感じなくなっていた。

ボロボロになった上に、
昔ほど魅力的でない彼を見て

見たくなかったと
思ってしまった。

彼を当時の姿のまま
記憶してたかったんだろう。

私は彼という人間を
愛していたのではなく、

その人が持つ、
雰囲気・能力・見た目など
うわべを好きだったことに
気がついた。

自分の作り上げた
幻想を追い求める
どこまでも独りよがりな
恋だった。

私を捨てたなら、いっそ幸せになってほしかった。

この言葉は、
相手の幸せを望んだ
言葉ではない。

私捨てたなら幸せになって、幻想のままでいてほしかった。

幸せな姿を見て、

ほら、やっぱり。
私が選んだ人は
素晴らしかった。

そう思いたかった。

なんでこの人を好きだったんだろう

と思うことは、
過去の自分を否定するようで
苦しい。

魔法が解けたように
急に現実をつきつけられた
感覚になる。

相手の幸せを願っているようで、
ベクトルは自分に向いていた。

心から幸せを思う言葉

今は、こう思っている。

元気でいて、幸せになってほしい。
相手の女性とも良い家庭を築いてほしい。

心から幸せを思う時、
文章の主人公は
「相手」になることを知った。

彼の結婚生活が
どうなったのかは知らない。

不幸であれば、悲しいし、
幸せであれば、よかったと思う。

それ以上でも、それ以下でもない。

幸せになってほしいと思うが、
望むほどではない。

ある意味、もう、どっちでも良い。

去る者追わず

他にも数人、
私の元を去った人がいる。

今でも
なぜ去ったのか、
私の何が悪かったのか
考えてしまうことがある。

それは未練が残る部分がある証拠。

私の中に、
幻想のかけらがある。

でも、その記憶のまま
残しておこうと思う。

そのほうが、
後で振り返った時に
きれいな思い出になる。

もし別れずに
続いてたとしても
遅かれ早かれ
別れが来る縁だった。

今さら再会したところで
自分も変化してるので
当時感じていた魅力は
感じないだろう。

自分を魅力的にする
努力を続けていれば、
また出会いはある。

いずれ別れがきたら
辛いだろうけど

それでもまた、出会う。

そうしてるうちに
幻想だのどうだのは
どうでもよくなるような、

存在が愛おしい
心が通じ合う人に
出会えたら
とても幸せだと思う。

過去に去った人は
そのちょっと胸が痛いまま
記憶に残しておくのも
悪くない。