恋がとまらない (ショートストーリー)

夏といったら恋ですね。線香花火のような切なく哀しい恋のストーリーをあなたに。


「K君は学生の頃、クラス替えで自己紹介のときに、女子がキャーキャー言ったでしょう?」

人懐っこくて男女の友達も多い、ルックスも良いK君にそう聞いた。私の憧れのアイドルだ。

『いや、俺はそうでもない。見た目も一瞬で "わぁ" と言われるタイプでもないから。……でも、そうだな。俺の場合、いつの間にか心を掴むタイプかも』

またそんなこと言って。私はまさにその通りだよ。最初はそう、あなたと同じグループのN君のことが好きだった。でも、N君を見ているうちにあなたの口からさりげなく出る、他人を元気づける言葉や暖かい眼差しを見つける度に今はあなたしか見えなくなった。あざといよね、本当は沢山の女の子から最終的に選ばれるタイプだって知ってるくせに。

人って知らずのうちに壁をつくる。K君があの子を昔から大切に思ってることは知ってる。あの子は容姿端麗で男性からも大人気だけど、K君は自分なんかが近づいてはいけない人って思ってる。周りがその子に抱くイメージを自分によって壊しちゃいけないって思ってるのね。

『あいつを誘えって?無理だよ、俺のよく行く中華屋とか定食屋なんかつれていけないよ』

いやいや、あの子はK君と同じ世界を共有したいの。同じ物を食べて、同じ景色を見てみたいわけ。分からないかな?

それにK君、あの子は望んでるんだよ。K君が自分に「お前が一番好き」と言ってもらえるのを。あの子はいつも不安なの。K君がいつもたくさんの友達、知り合いに囲まれて話してて、自分とは縁のない世界で楽しそうにしてるのを。

K君があの子のことを聖域の中の花として見続けることでずっとお互いの恋は平行線を辿る。

『俺はそれでもいいよ。あいつが心から楽しそうに笑ってるのがいい』

そうやって優しそうに見つめる目に、また何人の女の子が溜め息をつくだろうか。とどめに、

『俺は女の子なら誰でも好きだよ』

とニヤニヤして、私みたいな女の子にもウェルカムな姿勢を保つんだ。

" 背が高くても低くても、洋服もなんでもいいよ。わがままだって出来る限り聞いてあげたい。俺から電話切ったことってない。相手が男でも女でも、相手が切るのを確認するまで切れないんだ。もしも付き合ってる彼女と恋愛関係が冷めても付き合い続けられるか? えー、それは寂しいなぁ……。俺からフるってできないよ、なんならいっそのこと、俺をフッて……"


……私の恋心にもどうせ少しは気づいてるんでしょう?


本当に罪な人。






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