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ぼっち在宅介護 義母、eちゃんのこと

二年前に他界しました義母、姑のeちゃんのことを少し書いてみようと思います。

義母のeちゃんは、50代?で脳溢血か脳梗塞か?何かで、片半身不随になりました。
出会った頃は、お辞儀したような姿勢ではありましたが、自宅内は物を伝い歩けていました。
視力と聴覚は大変ダメージを受けたらしく、聴覚はほぼゼロ、視覚は片目の真ん中5ミリくらいと、教えてくれたのはeちゃん自身です。

eちゃんとのコミュニケーションは、主に筆談でした。口話と言って唇を読んでくれたり、指文字や手話なども交えていました。
eちゃん自身はリハビリを頑張り、トークできていましたので、eちゃんの意思確認はとりやすかったのですが、こちらからの呼びかけや意図を理解してもらうのは、こちらの努力も必要で、やれる人がやる感じでした。

出会った頃は、まだまだ家の仕事の仕切りもできて、週に一度のコープさんの注文もやっていました。
書くことはかろうじてでき、読めると言う感じではありましたが、ファックスやハガキを使って、頑張って書いていました。

読書が大好きで、本屋には行けない母に、主人は1円や0円と言った安い中古本を、eちゃんの好きなテーマで探してたくさん送っていました。送料がかかるので、結局、1円ではないのですけど…それはそれは母が喜んで読んでいまして、「Sちゃん、この本よかったわ。Kちゃんにありがとうって言っておいてね。この本ね、いくらだと思う?1円よ、1円。素晴らしいわね。いい時代よねぇ。送料はかかるけど、ありがたいわぁ。面白いから持って帰りなさい。」と返してくれたり、「これはね、地域の方に自由に読んでいただきたいから、図書コーナーに移して」など、内容によって選り分けたりしていました。


さて、片目の5ミリの視野で、どう読んでいたのでしょうか…


ちょっとわかりにくいですが、、、

こんな感じ。老化で垂れてきた瞼を見える目の方だけ片手で上に引き上げ、もう片方の手で焦点があうところまで字やみたい物を引き寄せて、一文字一文字、辿って読んでいくのです。
すごいですよね。

で、いい加減かと言うと全然そうではなく、読むのも書くのも一字一字しっかり捉えていました。
さすがに、書くのは、片手が片目の瞼抑えに使っているため、紙がずれたりしてなかなかうまくはかけませんでしたが、頑張って自分の仕事や好きなことに、時間を費やしながら頑張っていました。



ある日、帰省で帰った私に、eちゃんはいいました。

「Sちゃんは、宝石は何が好き?」

私は、本当にそっちに興味のない人で…

「あまり、好きじゃない。興味がないから、好きなものがわからない」
と筆談しました。

「あらそう。私はね石が好きなの。指輪とかそう言うのはどうでもいいんだけど、原石とか集めるのが好きでねー。で、もうこんなで歳にもなると何ににもできないでしょう?そろそろ形見分けをしておこうと思うんだけど、息子(婿も含み)3人はお金の方がいいだろうから、ちょっとだけお小遣いを包むつもり。娘(嫁を含み)3人には、私の原石コレクションから好きな石を選んでもらって、指輪かなんかにしたらどうかと思うのよ」と言う…

主人に困った顔を見せると、
「お母さん、Sはいらないって」と口話(唇で会話)で伝えてくれましたが、

「いいのよ、生活に困ったら売ったりしてもいいの。だけど、お金だと息子らと一緒でしょう?〇〇さん、ジュエリーのデザインできるから頼むつもりなの。Sちゃんの誕生石は※※※※でしょ?どう?」と言われて…

あんまり楽しみにしてはるので、断りきれず

「じゃ、お願いしよっかなー」と作ってもらうことにしました。


あんまり可愛いデザイン、華やかなデザインは嫌だなぁ…とか、色も本当は派手っぽくなく普段につけれる感じがいいなぁとか、
eちゃんといろいろ筆談していたら、、、

「ダイヤは好き?」と聞かれ

「嫌いじゃないけど、ギラギラしたのはちょっと…」

「違うの、笑っちゃうくらい小さなゴマみたいなダイヤならあるんだけど…」

「きゃー、それ可愛いじゃん!それ一つちょうだい。それがいいや!」

「一個なんかダメよ、全部使うといいわ」

「えー!いいの?」と主人を見たら

筆談のやり取り見てた主人が「いいよ」って顔をしまして…

「じゃ、お願いします。」

と、あとはeちゃんとデザイナーさんにお願いをして、預け話になっていました。


次の帰省で帰ると、指輪は2個できていました。

一つは誕生石のモノ。

もう一つは、eちゃんのダイヤモンドが7つ並んだ指輪。

デザイナーさんと、いろいろ話して作ってくれたのでした。

「いやだ!可愛いじゃん!ダイヤの素敵〜」
※写真のもの

「そうでしょ?ここだけの話よ。Sちゃんのに一番お金かかっちゃったわ😜」と。

「え?ごめんなさい」

「いいのいいの、楽しかったから。いいのができてよかったわ〜」とeちゃん。

後日談を聞いたらば、他のお二方とも母との打合せがうまくいかなかったのか、あまり興味がなかったのか、、、現金支給と残る原石支給になったらしいのです。


主人が、
「あんなに宝石に興味や執着があるなんかしらんかったわ。指輪作るの付き合ってくれてありがとうな。」と言いました。

私は、ただ楽しく得しただけだけど、主人にしたら、あれに付き合えるのはそうはいないし、
付き合う人がいたところで本人が楽しいかはわからないし、誰にでもできなかったから、やってもらって本当に良かった…と思ったそうです。


それから、私は帰省するたびに、ダイヤの指輪をはめて帰り、第一声、母に声がけする前に、母の見える目の前に指話を突き出して見せるようになりました。

当初、主人は「見えねえよ」と言いましたが、
「絶対見えるから!」と自信を持って見せたら…

「あ!Sちゃん!帰ってきてくれた?Sちゃん?」とeちゃん。

「ほらな」と私

「マジかー!」と主人

「作ってほんまによかったわ、ありがとうありがとう」と主人



そんなこんながあり、やがて、eちゃんは動きづらくなって、車椅子生活になり、義父(舅)だけの介護が難しくなり、ショートステイやデイサービス、リハビリ利用などを経て、コロナの前年、私たちが住む街の施設に入ってもらうことになりました。


施設に入り、毎月、義父にお見舞いに来てもらっていましたが、私が実家へ帰ることが増え、コロナ禍になり、家族と会えない日々が続きまして、緊急事態宣言でシャットアウト。

eちゃんの意識も、他の方に漏れず、だんだん遠のいていっていると聞きました。


許される範囲で、主人はお見舞いに行っていましたが、もともと聴覚もほぼない、視野も狭い、いくらアピールしたところで、なかなか意思疎通ができずに苦労しておりました。


「もう、お前のことわからんかもしらん」

ある日、そう主人に言われて、来たかー…と言う感じで。お見舞いに行きたい!と思いました。


私の父に事情を話すと
「もう危ないんか…行け!行ってこい!」と送り出してくれました。


わかるかなぁ…どうかなぁ…
とにかく、指には指輪だけはめて、eちゃんの好きな上生菓子とホットコーヒーを手に向かいました。


部屋に着いても、eちゃんには物音くらいではわかりません。
指輪を目の前に差し出して、瞼をそっと持ち上げると…

「Sちゃん?来てくれたの?」

えーえーえー!わかるやん!

「来たよ」大きな声で叫びました。

指輪のつぶつぶを指で撫でながら、
「あー、来てくれてありがとう」
とかとかいろいろすごく喋るので、指輪をeちゃんの指にはめてみました。

ずっと触って、
「いいねぇ、このデザインやっぱりいいよねぇ、作ってよかったねえ」と。

「お母さんの指につけて帰ろうか?」
と、筆談と叫びで伝えると

「あなたが持ってなさい。また見せて」
とeちゃんはいいました。


私は、全然まだいける❗️と確信して、主人に写真と動画を送りました。

「すげ〜な」

「でしょ?」

「やっぱり、お前、高齢者担当な」

「…」


悔しかったんだと思います(笑)
指輪一個で、そこまで会話ができたことや、まだまだ大丈夫ってことや、eちゃんのことやいろんなこと、ちょっとだけ悔しかったんだと思います(笑)でも、嬉しそうでした。


そっから、しばらくは本当に頑張ってくれて。

会いに行くたび、指輪で入室チェックしてくれて。


今、この指輪はずっとつけています。
私のお守りになっています。


コロナとか老化とか、いろいろ病気とかで症状が進んで、気持ちが遠くに行ってしまいそうな方、いるかもしれません。
娘も孫も一瞬わかってくれなかったりします。

それは、、、こちらも老けたから(苦笑)

ウチの父でも、間の空いた親族、よくわからなかったりします。
その実、私から見ても老けてる…(笑)


好きなモノ、こだわりのモノ、形の変わらないモノであれば、持っている人が誰かはわかってくれるかもしれません。

すごい速さで、eちゃんの脳がうごいた様に私には見えました。

好きな人ほど、一番いい時期、
カッコいい
可愛い
きれい
なまま、記憶をフリーズさせようとしてるかも。


ぜひ、思い出のお品と共にお見舞いに行かれてはどうでしょうか。

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