折原カズヒロ:装丁夜話

ブックデザイナー:デザイン事務所&ギャラリーを運営しています https://twit…

折原カズヒロ:装丁夜話

ブックデザイナー:デザイン事務所&ギャラリーを運営しています https://twitter.com/soteiyawa https://oriharakazuhiro.jimdofree.com ブックレーベルもhttps://www.timelessbooks.info

最近の記事

明日20日から「遠別少年」装丁展アンコール

2月に開催した「遠別少年」装丁展は5月20日から再開催いたします。坂川さんの残したこの本と、デザイナーとイラストレーターたちが作り上げたカバーをぜひご覧ください。 2月の展示のことはこちらを→これは追悼展ではありません  「遠別少年」装丁展 この展示は見所が3つあります。 1.装丁のおもしろさ 本好きであればきっと楽しんでもらえるはず。 ひとつの本に対して10の別々の装丁が作られました。(バリエーションを合わせると14)これはデザイナーが自分の思い通りに作ったカバーで

    • 『遠別少年』解説 クマの置きみやげ(坂川朱音)全文掲載

      20日から始まる「遠別少年」装丁展で制作した坂川栄治『遠別少年』の解説文を掲載します。 『遠別少年』は装丁家・坂川栄治さんが少年時代を過ごした北海道遠別町での体験をもとに書いた短編小説集。その1冊を10人のブックデザイナーたちが装丁するという展示企画を立ち上げ、2020年開催予定で準備を進めていました。その最中の2020年8月、坂川さんは長野の別荘で心筋梗塞により旅立ちました。 その後、残された赤字原稿をもとに本を完成させ、展示会も2022年2月に開催することができました。

      • 遠別少年はまだ続く

        『遠別少年』をサンデー毎日の書評で取り上げていただきました。 以前の版でご縁のあった川本三郎さんに、著者の娘であり新装『遠別少年』をデザインした坂川朱音さんが献本したところ書評を書いてくださいました。 内容を的確に、魅力的にご紹介いただきとても嬉しい。ぜひお読みください。 なにより嬉しかったのは、書名の下に著者名とともに装丁者名も表記していただいたこと。 同誌ではこれまではこうした例はないようですので、装丁展のために作られ装丁家の娘が父親の本を装丁したということを編集部に

        • 手ぶらで帰さない。

          ああ、やっちまった。 「遠別少年」装丁展は週末の金土日のみ×3週間のうち2週目を終え、明日25日から最後の3日間が始まる。 1週目はコロナや家庭の事情でオープンに作品が揃わなかったり、オープン前日に積雪があったり、そもそもまん延防止期間にガッツリかぶったりして、盛況とは言えない様子でした。(来ていただいた方々、本当に感謝します!) 状況を考えれば想定内のことで、悲観するべきではないのですが、ちょっとしょんぼり。目の前のことに一喜一憂してしまう。人間て悲しい(笑) 2週目

        明日20日から「遠別少年」装丁展アンコール

          カワツナツコ 個展「pen×me」のお知らせ

          カ2020年にパリスケッチ本「Sketches 100 - PARIS scene through my eyes」を一緒に作ったカワツナツコさんが甲府で個展を開催しています。 パリスケッチ本では線画の世界を披露していただきましたが、今回は本に掲載している絵と新たな線画を合わせて展示しています。 カワツさんの在廊はありませんが、山梨方面の方はぜひオシャレでカワイイ、カワツさんの世界を堪能ください。 パリスケッチ本「Sketches 100 - PARIS scene t

          カワツナツコ 個展「pen×me」のお知らせ

          小説 『遠別少年』の魅力

          「遠別少年」装丁展は2月11日に無事オープンし、3日間を終えました。 金土日の3日間×3週間という変則的な開催ですが、そのうちの1/3が過ぎたことになります。 この3日間、オミクロンと雪というダブルパンチに見舞われました。 寒さ厳しい遠別が舞台の小説だから、開催するなら一番寒い2月がいいんじゃないかとこの時期に決めたのですが、まさか都内に積雪とは——東京を遠別化してやろうという坂川さんの演出じゃないだろうな。 そんな状況にも関わらず、大盛況とはいきませんが少なくない方にい

          小説 『遠別少年』の魅力

          一人称→三人称|新旧『遠別少年』の大きな違い

          2月11日からの「遠別少年」装丁展で展示するのは10人のデザイナーとイラストレーターが作ったカバーと原画ですが、本体というか元になる一冊の本が最重要であることは言うまでもありません。 坂川栄治さんは単行本に直接書き込むことで赤字を残してくれました。 左の本です。 そこに書かれてあったのは一人称を三人称にするという大きな修正。 13の短編が収録されているのですが、単行本ではすべて「私」という一人称で書かれています。「私」が坂川さんであることは時々「エーチャン」と呼ばれている

          一人称→三人称|新旧『遠別少年』の大きな違い

          これは追悼展ではありません  「遠別少年」装丁展

          2022年2月11日よりGallery装丁夜話で「遠別少年」装丁展が始まります。 概要を簡単に説明すると—— 装丁家・坂川栄治氏(1952〜2020)の自伝的小説『遠別少年』を新装版として甦らせ、そのカバーを10人のブックデザイナーが作り展示販売します。 ということになります。 もう少し掘り下げると—— 『遠別少年』は2003年に刊行され(リトル・ドッグ・プレス)、2007年に文庫化されました(光文社文庫)。 単行本はまだ新刊が購入できるようですが、文庫は品切れ、電子版が

          これは追悼展ではありません  「遠別少年」装丁展

          山川直人版『猫町』はいかにして出来上がったか

          4月に水窓出版より山川直人著『短篇文藝漫画集 機械・猫町・東京だより』が刊行されました。 これは漫画家の山川直人さんが横光利一・萩原朔太郎・太宰治の小説を漫画化したもの。原作も一緒に収録され、読み比べて楽しむことができます。 この本の刊行、私としてもヒジョーーーーに喜んでおります。 というのも、収録されている『猫町』は、私がタイムレスブックスというレーベルで2019年に刊行した本が元になっているものなのです。 夢想状態から実現へ それまで、本を作ってそれを元にデザイナ

          山川直人版『猫町』はいかにして出来上がったか

          折原カズヒロ ハヤカワ・ミステリ文庫&創元推理文庫リメイク装丁展 Revival (2)

          遅くなりましたが装丁展は無事終了しました みなさまありがとうございました! そもそも2回目の展示で、コロナ禍でもあるしどうなるかと思ったのですが たくさんの方にいらしていただきました 密にならないくらいにほどよく(笑) ゆっくりお話できてよかった 展示・イベントをいろいろ考えながらやっていきたいと思います 画像はセバスチアン・ジャプリゾ『シンデレラの罠』 写真の倒れた男は私です 空いている駐車場で撮ってもらいました 小説の内容とは全然合っていないんですけど… かつてのミ

          折原カズヒロ ハヤカワ・ミステリ文庫&創元推理文庫リメイク装丁展 Revival (2)

          折原カズヒロ ハヤカワ・ミステリ文庫&創元推理文庫リメイク装丁展 Revival (1)

          本日4/16から個展が始まりました。 少年時代にミステリーにハマった。ふつうにホームズや乱歩から始まって、横溝正史ブームがやってきて飲み込まれ、そのあと出たての栗本薫や辻真先などあちこち行きまくり。 そして海外物といえばハヤカワ・ミステリ文庫と創元推理文庫。この二つは古典ミステリーを取りそろえ、ミステリー好きなら知らない人はいないだろう。その内容にものめり込んだが、装丁がとても印象に残っていた。「装丁」という言葉ももちろん知らなかったしデザインなんて意識していなかったけど、

          折原カズヒロ ハヤカワ・ミステリ文庫&創元推理文庫リメイク装丁展 Revival (1)

          カワツナツコ 表参道スケッチ展「OMOSKE」(2)

          カワツナツコ 表参道スケッチ展「OMOSKE」は終了いたしました。 展示中は様々な方にいらしていただきました。 カワツさんや折原の知人友人など展示をお知らせした方ももちろんですが、カフェということもあり、なにも知らずに来店して観ていただいた方もいらっしゃいました。特にお話を聞くことはできなかったですが、表参道の空気とともに絵のオーラも感じていただけたのではないでしょうか。と信じています(笑) 会場の設営から展示作品、店内などをスライドショーにしました。終了前のアナウンスの

          カワツナツコ 表参道スケッチ展「OMOSKE」(2)

          カワツナツコ スケッチ画集「Sketches 100 - PARIS scene through my eyes」(2)

          2020年に制作した本の話の続きです。 前回はこちら → カワツナツコ スケッチ画集「Sketches 100 - PARIS scene through my eyes」(1) イラストレーター・カワツナツコさんに声をかけてできあがったパリスケッチの本。どんな本にしようか考えたときに思い浮かんだのは、小ぶりな正方形がいいなということ。 手に取りやすく、小さなスペースにも置いてもらえるような。 小さくても存在感のある本にしたかったので、コデックス装という背がむき

          カワツナツコ スケッチ画集「Sketches 100 - PARIS scene through my eyes」(2)

          カワツナツコ 表参道スケッチ展「OMOSKE」(1)

          3月17日よりカワツナツコ 表参道スケッチ展「OMOSKE」は開催しています。 昨年出版した「Sketches 100 - PARIS scene through my eyes」の著者のカワツナツコさんの個展です。 パリのスケッチを描いたナツコさんが、表参道のスケッチを描いたら面白いだろうなとナツコさんと、本を扱ってもらっている山陽堂書店の萬納嶺さんに提案して実現したものです。萬納さんは3Fの山陽堂珈琲でコーヒーを淹れていて、そのスペースで展示することになりました。

          カワツナツコ 表参道スケッチ展「OMOSKE」(1)

          カワツナツコ スケッチ画集「Sketches 100 - PARIS scene through my eyes」(1)

          はじめまして、ブックデザイナーの折原カズヒロです。 ブックデザイナー=装丁家とも言いますが、本のカバーや本文のデザインをする仕事です。出版社などから依頼を受けてする仕事なのですが、ときどき自分がつくりたい本を自分でつくったりもしています。 「自分で作る」というのは紙を束ねて手づくりする…わけではなくて、普通の出版社と同じように「出版する」ことに近くなります。だいたい数百部程度なので「スモール出版(パブリッシング)」という方が近いかもしれません。 今回はそのひとつを紹介し

          カワツナツコ スケッチ画集「Sketches 100 - PARIS scene through my eyes」(1)