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山(目標)に登るのはどこから登ってもいいのさ。むしろ転んだり、汗を掻き掻き 半ベソくらいした方が、同じてっぺんに立っても、見える風景は格別なんだ。

7月22日で完結した伊集院静さんの「日本経済新聞」連載
「ミチクサ先生」の最終回前日で、
夏目漱石の人生観が
寺田寅彦を介してこう表現されている。

小説家になる前、中学校、高等学校、師範学校、専門学校、大学の
全てで教師を務め、しかも恐らく良き教師であった漱石の
それは自身を振り返った述懐だったのだろうか。

他人から見れば順風満帆の道を捨てたように見えて、
実際はこれ以外の道を進む勇気のなかった
私のような人間に、
いくばくかの勇気を与えてくれる言葉だ。


「ミチクサ先生」。

漱石という稀有な文豪だけでなく、
正岡子規などの有名作家たちの人となりが
伸びやかな会話と共に生き生きと活写され、
まさにいま呼吸しているかのように感じさせる

不思議な感覚の、傑作だった。

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