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前菜からメインへ、舌と脳裏に刻み込まれた味と薫りの物語。#レトリカル食レポ

前菜はスモークされた三種の魚の身を、
味わう時間を味わう。
右の鰹は皮の焼き目の感触もつかの間、
とろりとした身が口のなかをぐるりとし、
燻香がふわりと沁み込む。
その横のサーモンの身は
舌の上で感じるまろやかな口どけの
奥に舌が鮭味を追う。
下に隠れたメカジキは、身の繊維を心地よく
ズズッと切るなか、
鼻先が薫りを味の深みに変える。
ホワイトアスパラのムースを
ひと口すくえば、
ふわふわと、そしてぷわぷわと
なめらかでソフトな
アスパラの波が口いっぱいに寄せる。



魚料理は、坂本シェフの真骨頂、
ブリック包み焼きをスズキで
(見出し画像)。
パリッとしたブリック皮を
カリリとつぶせば、
スズキの真っ白な身がふくよかに現れ
瞬く間に濃縮されたソースに包まれて
濃淡の味わいが頬と舌の間で交わり、
間をあけて、包みの上に置かれた
サマートリュフの弾力を感じる。
白身のまあるいふくよかさは、
ブリックの食感やソースの深い滋味を
まとって、いつの間にか
口のなかを横切る油絵のような強さに
舌がしたたる。



最後は牛フィレ肉のパヴェ。
舗石という名の通りの堂々とした
分厚いフィレ肉をじんわりと噛めば
照り焼きにも似た
甘みを隠したソース味が、美しい赤みの
フィレ肉と組み合って、
シャクッと噛む間にじゅわりとソースが
肉味に染み込み、
フィレ肉の醍醐味が、
隆起するように押し寄せてくる。

口直しのシャーベットと
デザートの盛り合わせを書くには
文章がお腹いっぱいになった。

神奈川県大和市の
市役所斜め向かいにある
フレンチ「SAKAMOTO」、
フランス仕込みのご主人の腕に
奥さまの温かみある
会話とサービスも素敵で、
いつもまた行きたくなる。
 
今日も、ご近所の味で。


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