見出し画像

文章のトーンを変える(2)硬質に

硬質な文章トーン

“やさしいトーン”の次は、「枕草子」の現代語訳
[原文A]を、“硬質なトーン”に変えてみます。
「枕草子」がそもそも逆の世界で、
広告に適当な事例はないのですが、
一般的には、B2Bの機械や車輌、                        
自動車などもその範疇に入るかもしれません。    
ここでは「硬質」を演出するために、
「である調」と言われる「常体」を採用し、
トーンの差を出すために漢字を用いつつ、
ハードタッチに書いてみました。
前回の「やさしい」トーンと比較してみてください。 

春は、夜明けを推す。
外が徐々に白み、稜線で切り取られた空が少し明るさを帯びて、
淡い紫色に染まる雲が、細く横に移動するような景色が好みだ。

夏は、夜だ。
月が美しい日は無論だが、新月も格別である。
多くの蛍が飛び交かう様も、
僅か一匹二匹が、幽かに光りを放ちながら          
飛ぶ風情にも心動く。
雨が静かに降る闇の中も好きだ。

秋は、夕暮れが一番である。
夕陽が赤々と射し、山の輪郭に今にも沈むかという瞬間、
古巣へ向かう烏が、三羽四羽、二羽三羽と急ぐ状況さえ、
深い感慨に満ちた趣がある。
まして、連続して飛ぶ雁が、
彼方に小さく見える景色には胸躍る。
日が完全に落ち、風の音、虫の音などが反響する時間は、
言葉で表現不可能なほどだ。

冬は、早朝と言える。
雪が降る朝は言うまでもないが、
霜が一面に白く降りている朝も、そうでなくても、
凍えるように寒い夜明け、瞬時に起こした炭火を
運んで回る過程は、いかにも冬の朝だ。
昼が来ていつの間にか寒さが落ち着き、
火鉢の炭火が白く灰に覆われる段階に至っては失望する自分を感じる。


やさしいトーンと元となる原文~比較のために

前回、紹介した「やさしい」トーンを再度、紹介します。

春は、夜明けがいい。
窓の外がゆっくりと明るくなって、
遠くに見える山が空と溶けあうあたりが、
ほんのりとあたたかくて、
淡い紫色に染まった雲が、
細くたなびくような景色もたまらない。

夏は、夜がすき。
月がきれいな日はもちろん、新月もいい。
たくさんの蛍がふんわりと飛ぶ姿も、
ほんの一匹二匹が、ちいさく光りながらただようのもいい。
雨がしっとりと降るなかで感じる闇も、すき。

秋は夕暮れにうっとり。
夕陽の赤が空を染めて、いまにも山にかくれそうなとき、
なじんだ巣へ帰る烏が、三羽四羽、二羽三羽と急ぐうごきにさえ、
じんわりとする趣があって。
もしも連なってはばたく雁が、
遠くに小さく見える景色に出合うときには、おもわず見とれてしまう。
日がすっかり落ちて、風の音、虫の音などがひびく時間は、
もう言葉になんてできない。

冬の朝は早いほどいい。
雪が降る日はもちろん、霜がいちめんに白く降りても、そうでなくても、
こごえるように寒い夜明け、大急ぎで起こした炭火を
運んで回るうごきは、とても冬の朝らしい。
昼になっていつの間にか寒さがゆるんで、
火鉢の炭火が白く灰につつまれてしまってはつまらない。

元にしたのは前回と同じく
下記の[原文A]です(インターネットを参考にアレンジしています)。

[原文A『枕草子』自己流訳]
春は、夜明け。
あたりがだんだんと白んで、
稜線で切り取られた空がほんのりと明るくなって、
淡い紫色に染まった雲が、細くたなびくような景色がいい。

夏は、夜。
月がきれいな日はもちろん、新月もいい。
たくさんの蛍が飛び交かう情景も、
ほんの一匹二匹が、ほのかに光りながらただようのもいい。
雨が静かに降る闇にいるのも好きだ。

秋は、夕暮れ。
夕陽が赤々と射して、山の輪郭にいまにも沈もうというとき、
古巣へ帰る烏が、三羽四羽、二羽三羽と急ぐ風景さえ、
しみじみとした趣がある。
まして、連なってはばたく雁が、
遠くに小さく見える景色はたのしい。
日がすっかり落ちて、風の音、虫の音などが響く時間は、
言葉に尽くせないほどだ。

冬は、早朝。
雪が降る朝はもちろん、霜が一面に白く降りている朝も、
そうでなくても、
凍えるように寒い夜明け、大急ぎで起こした炭火を
運んで回る動きは、いかにも冬の朝らしい。
昼になっていつの間にか寒さが緩んで、
火鉢の炭火が白く灰をかぶってしまっては興ざめだ。

「トーン」については、こちらのnoteでも語っています。
リライト論[第二章]リライトの定義(1)トーンを変える  


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?