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エッセイ 自分自身を見つめて

 吉田拓郎のファンで『我が良き友よ』を紹介したりしましたが、彼は、ラジオなどを聞くと(中島みゆきもそうですが)すごく饒舌で、面白いんですね。だけど歌う歌は暗いものが多い。特に初期のものは『自殺の詩』とか『どうしてこんなに悲しいんだろう』とか『人間なんて』『たどりついたらいつも雨ふり』と、暗い歌が多いです。自分の悩みを正直にストレートに歌っている。それによって、彼自身もストレスの発散になっていただろうし、聴いている私も自分の代弁者のような気がして嬉しく思ったものです。しかし、私には彼の真似はできませんでした。音楽的才能がありませんから。
 それから本を読みました。太宰治や遠藤周作、吉行淳之介のエッセイなどです。彼らは自分のコンプレックスや失敗談を面白おかしく書いているんですね。太宰の『佐渡』や『畜犬談』などは読んでいて笑いをこらえることができませんでした。決して他者を笑い者にせず、自分を笑いのネタにして、人を笑わせる。太宰の言う「道化」ですか。こういうものなら、自分にも書けるかもしれないと思ったんです。自分のコンプレックスを逆に利用する。書くという武器を手に入れたことで私は明らかに強くなりました。
 自分を書くためには自分を知らなければなりません。自分の人生を何度も何度も振り返り、だんだん自分という人間が見えてきて、見えてきた自分の姿と比較して他人を知る。苦手だった他人とのコミュニケーションにもいい影響が出てきました。
 今の若い人のことはよくわかりませんが、SNSで繋がっているようで、本音のところでは切れているような気がするのですが・・・。傷つけられたくない、傷つけたくないと、気を使いすぎて、上っ面だけの繋がりになってはいないでしょうか。人付き合いの下手な私が言うのもおかしいですが。(苦笑)

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