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[読書] もし僕らのことばがウィスキーであったなら/村上春樹

みなさん、アイラ島という場所をご存じでしょうか?
イギリスの北西部に位置する、小さな島です。
この島はウィスキーの聖地として知られています。
そんな場所を旅した、村上春樹さんの体験記をご紹介します。

【著書について】

本著を執筆された村上春樹さんと言えば、日本を代表する小説家の一人として名前を聞いたことはあるでしょう。
代表作に『ノルウェイの森』『海辺のカフカ』『1Q84』などなど…。
そんな村上さんの作品は海を渡り、彼のファン(通称:ハルキスト)は国内外問わずいることで有名です。

今回ご紹介する本は、そんな村上さんがイギリスを旅した際の出来事を綴ったエッセイです。
本著は1999年に書籍化されています。

【本著を読もうと思ったキッカケ】

キッカケは、友人からのススメでした。

当時・22歳の僕は、お酒についての知識は皆無で、ウィスキーのことは何も知りませんでした。
そんな中、たまたま広島の知り合いと大阪で飲むこととなり、いろんな話をさせてもらいました。
その友人はバーでバイトをしていた過去があり、お酒の知識が豊富だったので、お酒のことについてもいろいろ教えてもらいました。
その中で教わったのが、ウィスキーであり、アイラ島であり、この本だったのです。

(友人には大変申し訳ないけど、26歳になるまで4年もの間、この本を眠らせてしまった…!
今さらながら、この本を教えてくれたことに感謝します。)

【本を読んだ感想】

本著は、ひとことで言うと飲み歩きの記録です。いやホントに。

アイラ島と、アイルランドの飲み歩きの記録が、たくさんの写真を添えて綴られています。
酒蔵を巡ったり、バーに行ってみたり、本当にそれだけの内容です。

本著は100ページちょっとの本なのですが、ホントに写真が多い。
本の半分ぐらいはカラー写真が掲載されています。
その分、文章はビッチリ書かれていて――あの遠回しな、クセのある言い回しで――その時の村上さんの心情と、風景を交互に味えるような本でした。

友人の言葉どおり、『アイリッシュ・ウィスキーを知ってこの本を読むと、ものすごくアイラ島に行きたくなる』本でした。
村上さんの貴重な追体験ができる、なおかつリラックスしながら読める本だと思います。

最後に、本著の前書きを少しだけ抜粋して、終わりたいと思います。
それでは、また。

もし僕らのことばがウィスキーであったなら、もちろん、これほど苦労することもなかったはずだ。僕は黙ってグラスを差し出し、あなたはそれを受け取って静かに喉に送り込む、それだけですんだはずだ。とてもシンプルで、とても親密で、とても正確だ。しかし残念ながら、僕らはことばがことばであり、ことばでしかない世界に住んでいる。僕らはすべてのものごとを、何かべつの素面(しらふ)のものに置き換えて語り、その限定性の中で生きていくしかない。でも例外的に、ほんのわずかな幸福な瞬間に、僕らのことばはほんとうにウィスキーになることがある。そして僕らは――少なくとも僕はということだけれど――いつもそのような瞬間を夢見て生きているのだ。もし僕らのことばがウィスキーであったなら、と。
(本著P.10 "前書きのようなものとして" より抜粋)

【著書情報】

題名:もし僕らのことばがウィスキーであったなら
著者:村上春樹
出版:新潮文庫


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