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クスクス食べたい

Bonjour! 東京フランスかぶれこと新行内です。陸サーファー的にフランスを語っております。

フランスに行ったら必ず食べる料理がある。そのうちのひとつが、タイトルの通りCouscous(クスクス)。

クスクスの定義は以下の通りである。

硬質小麦の一種であるデュラム小麦の粗挽粉に水を含ませ、調理後の大きさが約1mm大の小さな粒になるように丸めてそぼろ状にしたものである。またその粒を主食とし、肉やスープ類と共に食べる料理を総称してクスクスと呼ぶ場合もある。マグリブ地域の重要な料理であり、アルジェリアでは「タアム طعام (ta'ām)」(食べ物)と呼ばれるほど、常食されている。                                      (wikipedia より引用)

今では日本でもクスクスが食べられるお店が増えたし、ちょっといいスーパーに行けば、お惣菜でクスクスのサラダなども売っていたりする。輸入食材店にはクスクスの粉が売られていて、スープを調理すれば自宅でも気軽に食べられるようになった。

wikipediaでも説明している通り、この料理はマグレブ地域の料理である。フランスはその地域を植民地としていた歴史的背景から、アルジェリアやモロッコなどのマグレブ系移民が多い。それゆえにマグレブ料理店はとても一般的である。

私が最初にクスクスを食べたのも留学していたアンジェという街にある小さなマグレブ料理店だった。

黄色くホカホカと湯気を立てるスムール(クスクスの粒のこと)とズッキーニやニンジン、鶏肉がたくさん入ったあたたかなスープはが運ばれてきたとき、何とも言えない幸せな気分になった。スムールを皿に取り、少しずつほかほかスープをかけて食べる。想像していたよりもずっとさっぱりとしているけど野菜と肉の出汁、そしてコリアンダーやクミンのスパイスが効いたスープがスムールの粒々によく沁み込んで、実に美味しかった。

私が一緒に食べている友達に「おいしい、おいしい!!」と訴えながらスプーンを口に運んでいると、お店のご主人が出てきて、「うまいだろ?日本人は特にみんな感動して食べてるよ。米に似てるんだろう?」と嬉しそうに言った。スムールと米は全く味も食感もちがうのだけど、確かにカレーライスや、汁をかけたごはんなどとタイプが似ているのかもしれない。パンばかりの主食に飽きた舌にはごちそうであった。

その後も、その店には時々行っていたし、外食する時にはクスクスを選ぶことが多くなった。私はこの料理が大好きになったのである。

新婚旅行でパリを訪れた時も、パリ在住の友人に美味しいモロッコ料理店に連れて行ってもらって夫と3人でクスクスを食べたし、そのあともフランスに滞在する時には必ずクスクスを食べに行く。

羊肉やメルゲーズと呼ばれる辛いソーセージなど、具がたっぷりのクスクスはクスクス・ロワイヤルと呼ばれ、とても豪華で食べきれないほどのボリュームがある。(トップ画の写真はパリの Château Rougeにあるクスクス専門店でクスクス・ロワイヤルとロゼワインをいただいた時のもの)

いちばん思い出に残るクスクスは、パリのモスク、 Grande Mosquée de Paris (グランドゥ・モスケ・ド・パリ)の中にあるレストランで食べたものだ。モスケ の中庭にある席でひとりで食べたのだが、スムールが運ばれてきた瞬間から、中庭を優雅に歩き回っていた鳥たちが一斉に私のテーブルの上に集まってきたのだ。

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ここがモスケ・ド・パリ

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鳥が苦手(鶏肉は好き)な私はパニックに陥り、はじめは手で鳥たちを追い払っていたが、彼らはそんな生ぬるい攻撃はものともせず、何度もテーブルの上に上ってくる。私は悲鳴に近い声で、ウエイターの男性に「助けて~!!」と叫んだ。

すると、なんとそのウエイターは鳥と格闘している私を見て笑っていた。そして私のテーブルに駆け寄るとスムールの横に置いてあったナプキンで、スムールの皿を覆った。「はい、これで大丈夫ですよ」と言いながら。

私は、「なんではじめからこの技を教えてくれなかったんだ!」と思ったけれど、ナプキンをかけた時点から鳥がみないなくなったのに気づき、おかしくなって思わず吹き出してしまった。ウエイターの男性も笑っている。

「私が鳥と戦っているのを見て面白かったですか?」と聞くと、「ごめんなさい、でもすごく面白かった。」と答えてくる。緊張がほぐれ、ふたりでしばらく笑いながら美味しいクスクスをいただいた。こんなハプニングのおかげで、とても思い出深い食事となった。

★★★

クスクスと言えば、こんな映画も観た。

クスクス粒の秘密(原題:La graine et le mulet)

「アデル、ブルーは熱い色」で日本でも一躍有名になったアブデラティフ・ケシシュ監督の作品。フランスの港町セートに暮らすチュニジア系移民の家族の物語である。主人公の港湾労働者スリマーヌが船上レストランを開くまでの物語なのだが、日曜日に大家族が母親の家に集まり、みなでクスクスを食べるシーンがある。このシーンがとてもリアルで大好きだ。演技なのかドキュメント映画なのかわからなくなるような食事風景が見事。

きっとこのシーンを観たらだれでもクスクスが食べたくなるのではないだろうか。ストーリーは派手ではないが、フランス社会と切り離せない移民たちが抱える問題やその生活を映し出すよい映画である。


迫りくる暑い夏、よく冷やしたロゼワインとクスクスを楽しむ日を計画したいと思う。

それでは A bientôt!

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