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伝説の外資トップが説く リーダーの教科書 (新 将命)

新たではないが・・・

 新将命氏の著作は読んだことがあると思っていたのですが、改めて振り返ると、「1冊の本」という形では本書が初めてでした。

 本書で説かれているアドバイスは、それほど目新しいものではなく、どれも至極当たり前のことのように感じられます。しかし、その示唆するところは、外資系も含めいくつもの会社の経営に関わった実地の経験からのものであるだけに、読んでいてもひとつひとつに納得感があります。

 以下に、本書で紹介されている要諦のいくつかを覚えとして記しておきます。

 まずは、評価における「結果とプロセス」について。

(p18より引用) 「結果」の重要性を問えば問うほど忘れてはならないのは、同時に「プロセス」も評価するということだ。どういうやり方で、その結果を生み出したか、ということである。・・・意識すべきは、結果とプロセスのバランス、である。・・・
 もちろん結果は重要だ。だが、最後に判断を大きく左右したのは、人間性であり、人格だった。すべての会社がそうとはいわないが、結果を重視する外資系でも、そういう姿勢を貫いている会社もあるのだ。

 また、最近流行の「チェンジ」「チャレンジ」に不可欠なリスクテイキングの覚悟について。

(p20より引用) 誰もリスクをとらない会社は、実は最もリスクの大きな会社なのだ。・・・ビジネスの世界での現状維持は、実際には後退を意味する。

 その他にも、著者の長年にわたる経験から、多くのスパイスの効いたアドバイスが開陳されています。

(p164より引用) コミッティがたくさんあるということは、通常の組織がうまく機能していないということを暴露しているにすぎない。通常の組織が機能不全に陥っているのだ。

 著者のいうコミッティとは、タスクフォースやプロジェクトチームといった特別の組織のことです。機動的な対応を目的とした、こういった部門横断的な組織はどの企業でもみられると思います。
 が、著者の考えは、明確に「否定」です。

 最後に、私自身も笑うことができない実際ありそうな風景です。
 「自責と他責」に関わるやりとりです。

(p61より引用) ある企業で講演をしていたとき実際に私が経験した話だが、「会社の中に自責の風をまっさきに吹かすべきなのは誰か」という質問にこう答えた部長がいた。「社長から」。立派(?)な他責発言である。もちろん、正解は「自分から」である。

 いつも気にしようと心がけていても、咄嗟の反応で意識の甘さが出てしまいます。
 「人には厳しく、自分に甘く」というのは本能レベルで刷り込まれているので、あらゆる機会を捉えて振り返らなくてはなりません。自戒です。

スキルとマインド

 著者は、本書の中で、繰り返し「スキル(仕事力)」と「マインド(人間力)」の重要性を訴えています。

 特に「マインド」面についてのアドバイスで、私も記憶にとどめたいと感じたものを書きとめておきます。

 まずは、言葉遊びのようでもありますが、「自信と過信」について。
 「自信」には、さらに向上しよう伸び続けようという気構えがあるのです。

(p43より引用) 自信と過信、慢心、傲慢とは何が違うのか。自信には含まれているが、それ以外には含まれていない要素がひとつだけある。「学ぶ心」だ。

 「自信」は、「成功」との共振によりスパイラル的に強まっていきます。その過程では「失敗」も付き物です。

(p133より引用) 「失敗をしないための最高の方法は何もやらないことである」という表現もある。こうなれば、最悪である。失敗はない。だが、成功も永遠にないのである。

 「成功」するためには「行動」を起こさなくてはなりません。その「行動」は「意識」されたものであり、そこで「意識」すべき対象が「目標」なのです。

(p275より引用) 成功の条件を一言でいうとすれば、目標を持った生き方をすることだ。自分に納得のいく目標を段階を追って達成するプロセスを経ること。これこそが成功の定義であり、条件である。・・・成功の反対は、目標のない生き方なのである。

 「目標」は未来に向かったものです。この前向きの姿勢を鼓舞するものとして、著者は、以下のような言葉を紹介してくれています。

(p278より引用) 「今日の自分は、昨日までの自分の結果である。将来の自分は今日からの自分の結果である」
 過去を変えることはできない。過去は終わってしまっている。過去からできることは学ぶことだけだ。だが、未来を変えることはできる。さらにいえば、未来を創り出すことはできる。

 30年ほど前、管理者として赴任した勤務地で、会社の先輩からこう言われたことがありました。
 「社員にとっての最大の職場環境は『上司』だ」
 本書を通して一番印象に残ったのは、この言葉と同じ趣旨のフレーズでした。

(p82より引用) 部下を持つという視点の中で忘れられがちなのは、上司は部下に幸せをもたらす存在であるべきだ、ということだ。会社に勤める人は、基本的には自分の働く会社を決めることができる。・・・だが、会社は選べるが、上司は選べない。・・・上司は、自分の部下として持った人の幸せづくりについて、非常に大きな影響力と責任を持った存在だということである。

 とても大事なことです。いつも心しなくてはなりません。


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