学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ― (工藤 勇一)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
いつも聞いているpodcastの番組に著者の工藤勇一さん(千代田区立麹町中学校校長)が登場して、ご自身の学校改革のお話をされていたのですが、その内容がとても興味深かったので手に取ってみました。
まず「はじめに」の章で示された工藤さんの根本的な問題意識。
工藤さんは、学校教育の「目的」は “「自律」する力を身に付けさせる” ことだと考えています。
その課題感をもって、工藤さんは数々の改革に取り組みました。
教師の立場、教育委員会の立場、校長の立場・・・、さまざまな職責での工藤さんの実績は、どれも独創的でありチャレンジングなものでした。特に、東京の「教育困難校」に赴任した際の経験談は強烈でしたね。
さて、本書を読み通してみての感想ですが、期待どおり数多くの気づきを得ることができました。
それらの中には、大いに首肯できるものもあれば、多面的により深く考えなくてはならないと感じたものもありました。
たとえば、「心の教育」についての工藤さんの考えです。
「違いを認める」までは多くの人が言っていることですが、「それゆえに『行動こそが大事』」と一歩踏み込んだ指導を志向しています。陽明学の「知行合一」と同根の考え方でしょうか。
そういった “割り切った考え” の工藤さんですが、同時に「弱者に対する心のケア」を忘れないのが素晴らしいところです。
もうひとつ、現代社会における未来を切り開く道筋について。
逆説的な言葉ですが、なるほどと思いますね。
そして、最後に、本書の中で工藤さんが何度も語っている「目的」の共有の大切さについて。
「手段の目的化」の弊害があらゆるところで顔を出す今日、「自律的思考」を身に付けた人材をいかに育成できるか、やはり「教育」が社会基盤再生のカギを握っているのは間違いありません。
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