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ドキュメント立山縦走①【室堂〜一ノ越〜雄山編】


剱岳にすっかり熱を上げている私は、一直線に剱岳に近づこうとした1日目とはアプロ―チ方法を変えて、2日目は剱岳から離れたところで山に登って、そこからツルギくんに向けて1歩ずつ近づいていく攻め方をしようと考えた。


剱岳に向かって歩いていく方法をとると、ツルギくんを見ながらずっと歩けるし、だんだん大きく近づいていくなんて嬉しすぎる方法なのではないかと頭の中で思い描いて興奮していた。想像の中ではずっと晴れている想定で、雨が降るなんてことを考えない愚かな私なのであった。
天気予報は一応チェックして、午前中から昼くらいまでは晴れている絶好の天気らしいということは分かっていたので、早朝に起きて、写真に写る立山連峰の一番右端の一の越から雄山に登り、大汝山、富士の折立、真砂岳、別山と歩いて剱御前小舎でツルギくんと最接近するというコースとなる。
いわゆる「立山縦走」と言うらしい。

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写真を見ると、最初の雄山までが恐ろしく急激な登りで、それ以降は、下から見上げている限りでは、多少アップダウンはあるものの、なだらかに見えた。雄山まで登ってしまえば、ツルギくんを見ながら天空をお散歩するくらいのもんだろう、と舐めてかかっていた。
一応、立山縦走についてネットで調べたが、雄山まで登ればあとは「稜線歩きが爽快な気分」「室堂の絶景を見ながら歩ける」「黒部湖まで見下ろせる」「剱岳の迫力を感じられる」などなど、魅力的な言葉が並んでいるものの、そこまで難易度がなさそうな感じではあった。
写真で見ると、下から剱御前小舎に上がるのと、下から雄山に登るのと、それほど高さに違いがなさそうだったし、少し傾斜が急激だなあとは思ったが何とかなるだろうと高を括っていた。ヘルメットまでは必要ないらしいが登山届は出すべきというアドバイスにより登山届を提出して登り始めることにした。
早く出ようと5時50分に目覚ましのアラームをセットしたが、きっちり止めて、7時前まで二度寝したり布団の中でウダウダした。山に登るのなんかやっぱりやめて、1日お布団の中にいようかな、とすら考える私は生粋の怠け者である。この日の朝は無性に気が乗らなかった。だけど、剱岳を見に来たし、行くっきゃないか…と諦めて腹を括り、7時過ぎに山小屋を出た。

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少し秋めいている気がする。

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みくりが池を通り過ぎ、登山口までダラダラと、30分で着くところを小一時間かかった。まだ登り始めていないのに、やはり私は標準タイムの2倍近くかかる人間だ。日没までに山小屋に帰れるのかいささか不安がよぎる。おにぎりと行きに買ったバナナチョコレートマフィンを頬張りながら登り始めることにした。 雄山の辺りは尋常じゃない程の恐ろしい雲に覆われていた。もう少し早く起きるべきだったかもと、この日100回は頭によぎるセリフの1回目が浮かんだ。

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AM8:00、とりあえず一ノ越を目指して、出発。

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予想通り、一ノ越までとそこから雄山に登る道は、トレーニングも何もしていない素人の、コロナ太りしている43歳にとっては、地獄のようにキツかった。
一ノ越は40分くらいで着く人もいるらしいが、1時間15分後の9:15に一ノ越に着いた。

遠目から見てもなかなかの傾斜だと思ってはいたが、ネットの情報によると40分くらいで一ノ越から雄山まで行けるとのこと。すでに500ccのアミノバイタルを飲み干していたのでポカリスエットを1本買い足し、立山縦走最後のトイレを済ませる。コロナのせいで途中の山小屋は閉めておりトイレも使えないらしい。トイレ大丈夫かしら…。あと6〜7時間、トイレに行けないと思われる。野ションは平気なタイプだが、身を隠せる所があるのかが謎だ。

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トイレを済ませて雄山に向けて出発。一番上が見えない。とにかくゴツゴツした岩山で傾斜も凄い。

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時々手を使ってよじ登る。物凄い傾斜だ。
これだけでも、富士山よりハードだと確信する。

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向こうに剱岳が見えた!!嬉しい。凄い傾斜越しにツルギくん。

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一番上が見えてきた。私の剱御前小舎の経験上、すぐそこに見えても、そこから20〜30分はかかる。

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あのみくりが池が小さく見える。私の今日帰るべき山小屋も小さく見える。それにしても、立山で過ごした日々の中で1番の好天!青空が青い!
11時前、雄山の頂上到着。
悪くないだろう。
キツすぎる道のりの登山は、40分〜1時間で着くところを1時間40分くらいかかった。まあ、私のスピードはそんなもんだ。

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標高3003m地点にある雄山神社は閉まっていた。富士山よりも773m低い。そう考えるとそれほどしんどくなかったような気もしてくる。記憶とは曖昧だ。

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雄山から、物凄く格好いい剱岳が見えた。カッコいい♡
しかし、この道を進んでいくのか…。めちゃくちゃアップダウンがありそうな予感。
雄山まで上がればあとは平坦な稜線を歩くだけって思っていたが、ほんまにそうかな?
果てしなく遠そうだ。大丈夫かな。
しかし、まだよく晴れている。
そしてまだ11時前だ。余裕余裕。

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大汝山方面縦走路の看板を見つけ進むことにした。
岩山をまたいで恐る恐る下りる。もうすでに予想と違って、何度も手をついて慎重に下る険しい道だった。
だけど、来た道を戻るのも恐ろしい。あの急勾配の岩道を下りる方が危険な気がした。
雄山まで登ったらもうほとんど立山を攻略したも同然だと勘違いしていた私は、「絶景を見ながら気持ちの良い稜線をのんびり歩く」のを目指して立山縦走を進むことにした。
「昼からちょっと天気が崩れるかもな」とスマホを見てポツリと言っていた山のおじさんがいたが、この1時間半後、天気は笑っちゃうくらいに急激に悪化し土砂降り中の土砂降りがやってくるとは、そして身の危険が迫っているとは、私はまだこの時は1ミリも思ってはいなかった。
〜ああ、空はこんなに青いのに
風はこんなにあたたかいのに
太陽はとっても明るいのに
どうして、こんなに雨降るの〜
と、キテレツ大百科の睡眠不足のテーマソングの替え歌を口ずさむことになるまであと2時間も残されていないとは知る由もなかった。

なぜなら、慎重に岩山を下ろうとはしていたが、内心、私はツルギくんがくっきり見えてルンルンだったから。
うっかり自分が雨女であることを忘れ去っていたのだ…。

続く…





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