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台湾、阿里山を歩き回る③【「隙頂」という隙間の頂きで、いただきます】

阿里山に向かうバスの途中で、思い付きで降りた場所「隙頂」。

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バス停付近で見かけた看板によると読み方は「Xiding」らしい。
大昔の大学生時代に第二外国語で習った中国語の記憶を辿り、「シーディン」と読むことは分かったが、私は「すきまのいただき」と心で呼び続けることにした。
隙頂(すきまのいただき)にはどうやら散歩道があるらしく、歩き旅が好きな私の勘は大当たりの匂いがしてきた。
看板を見ると、「茶霧之道 Tea&Mist Trail」という表記がある。
イラストや雰囲気から推測するに、茶畑と雲海のような道なのだろうか。漢字の国で良かったと思うのは、中国語や台湾語のこういう単語でも漢字から推測する楽しさがあるから。
「隙頂星之歩道」も気になるが、昼間なので星は見えないし、「茶霧之道」と「二延平歩道」を歩いてみることにした。「すきまのいただき」で「お弁当をいただきます」をすることを決めて歩き出してみてびっくりしたのだが、その名の通り、茶霧之道は、茶畑が一面に広がるお茶の道であった。
山の斜面を利用した茶畑が波のように広がっていて、その間を縫うように散歩道が続いていく。

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茶畑を歩いていると、インド、ダージリンを旅したことを思い出す。あの地も豊かな茶畑でしっとりした空気だった。お茶で有名な地を旅すると、その後もお茶を飲むたびに旅の空気や匂い、景色を思い出せるから、ダージリンティーも特別なものになっている。この場所もそうなるのかな。


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山並みと茶並み(造語)
茶畑の隙間を歩いて進む。

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ありきたりな言葉で言うなら、台湾なのに、古き良き日本の田舎の原風景のような景色に思える。台湾に失礼な話だが。日本も台湾もやはりアジアで同じだなぁと思う。

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こういう木々の中を歩くのも好きだ。登り道はしんどいけれど、空気もいいし、景色もいいし、よく分からない場所をひたすら歩いているという自分の状況がより一層登りの道のりを楽しくさせる。
途中、台湾人のおじさんに出会い、「我是日本人」と言うと驚かれた。何故こんな場所を日本人の女が1人で歩いているのか?とやたら聞いていたのが面白かった。カタコトの台湾語とジェスチャーで楽しくやりとりをしながら、おじさんは見晴らしのいい場所に行けるらしい歩道の入り口まで連れて行ってくれた。

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整備された道が出てきて、そこをひたすら登っていく。雲が雲海のように下界に広がっていき、天上界へ通じるような気持ちになる。

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天上界へと通じる階段を登り続けると、ポツンとある東屋へと辿り着いた。画像10

もう、ここしかないでしょう。

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登って来る間に見えていた見晴らしは良かったが、東屋に着くと下界に雲があっという間に広がって一面が雲海になってしまった。なってしまった、と書くと残念がっているようだが、その逆で、雲海のおかげで幻想的な風景になって私のジャッジでは「絶景」そのものになった。
登り続けて1時間ほど。
リュックをテーブルに下ろしてお弁当を広げる。
貸切のこの場所が最高すぎる上に弁当もシンプルかつ最高。
甘めのタレ付きのトンカツがご飯の上に乗ったお弁当。お肉にも添え物のザーサイにも八角の味がしっかりついていていかにも台湾の味。肉食系女子の私にはこれくらい肉が主役のお弁当で良いのです。
登りの道が続いたおかげで汗だくだったが、台湾烏龍茶のペットボトルが美味しくてゴクゴク飲んで、お弁当もぺろりと食べた。「すきまのいただき」の絶景でいただきます作戦は大成功だなぁと一人で雲海を見下ろしながら、ニタニタ笑った。

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空の上でご飯を食べているかのような天上界気分。
いやぁ、こんな場所に辿り着けるなんて。
「隙頂」の地名に惹かれて、思いつきで途中下車して本当に良かった。

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ゆっくりと雲の中を下界へと降りていくことにした。
帰りはちゃんと名前の通り、雲海だか霧だか分からないものに包まれて、茶霧之道となっていた。

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この辺りの茶畑で作られるお茶も阿里山高山茶になるのだろうか。地図で調べたら、ここは阿里山から35kmの場所に位置していたから、おそらくこの辺りのお茶も阿里山高山茶なんだろうなぁと思う。この場所を特別な思い出にするために、阿里山のお茶を買って帰ろうと思った。

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気持ちの良い竹林を抜けバス停に戻ってきた。

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行き当たりばったりの時間を持てたこと。
勘が当たって絶景の場所に辿り着けたこと。
決められた行程からふらっと道を外れてみて、そこで出会えるもの、人、場所、解放感がある。
寄り道、途中下車、当てずっぽう、最高。
さて。
道を外れてもまた戻ればいい。
予定通りの行程に戻り、目的地の阿里山へと向かおうと思い、次に来る阿里山行きのバスに再び乗った。

いよいよ阿里山、続く…。


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