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18きっぷ、岐阜の乱

JRの青春18きっぷで国内を旅するのが趣味でもある私。
数えきれないくらい18きっぷを駆使して電車に乗って旅をしてきたが、大きなトラブルに巻き込まれたことはない。
間違いなく旅運がいい方だと思っているのだが、いやいや、まあまあのトラブルは割とあるやんかとよく友達しめちゃんから指摘されがちである。
そうかしら。
18きっぷの旅で言えば、帰る予定の日に無事終電に間に合って家に帰れたら問題なしとみなしているし、終電に間に合わなくなってしまったことは一度もないから、やっぱりトラブルに巻き込まれたことはないと言える。

しかし、今回の飛騨高山からの帰路に関しては初めてのトラブルと言っていいかもしれない。帰れるのか帰れないかの瀬戸際の戦いが、そこにあった。

それは、岐阜駅から始まった。
お気楽に途中下車して高山ラーメンと炙りあげづけ燻製マヨを食べている間にどうやら事件は起こっていたらしい。
さっさと最後の岐阜グルメを満喫して、予定していた次の20:51の電車に乗ろうと駅の改札に戻ったら、なにやら雲行きが怪しい。
人がたくさんいて、3分の1は電光掲示板を見上げていて、3分の1は自分のスマホとにらめっこしていて、残りのみんながみどりの窓口に押しかけて駅員を取り囲んでいた。3分の3がみんな焦った顔をしている。
こりゃ電車の遅延かな、と瞬時に悟った私だが、岐阜駅から大阪へとつながる電車の最終電車は21:51で、米原に22:42までに着ければ良いのだし、まだ最終電車には1時間もあるから、ある程度遅れてずれこんでもまあだいじょうぶだろうと高をくくっていた。

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(路線図は簡単に書くとこんな感じ。
信長は自信作である。ささっと書いたわりに相変わらず絵心溢れていると思っている過信。
琵琶湖の形を間違えているから滋賀の人にバレたら、しばかれてしまう。)


そんなに慌てて怒って駅員を問い詰めてもしょうがないやんか。
まだこの段階では、落ち着いて私はそう思っていたと思う。
一応、「どれくらい遅れるのですか?」と駅員に聞いたら、「ちょっと分かりません」と言われ、まあそのうち電車は来るだろうと思っていたのである。
しかし、待っている人だかりが段々とヒートアップしてきて「京都に今日中に帰れるんですか?!」「大阪まで電車に乗り継げるんですか?!」など声を荒げていて駅員さんは「申し訳ございません」と謝り続けているため、「え?今日中に帰れない可能性があるの?」と少しばかり不安になってきたのである。
私は何としても22:42には米原までに着かないといけないのである。
どうやら米原近辺で何かが起こっているらしい雰囲気である。

「米原から先のことはJR西日本の管轄となり、JR東海の我々には分かりかねます」とかいう、18キッパーからすると、JRの線路は続くよどこまでもとちゃうんかいと詰め寄りたくなるJR東海の逃げ腰の駅員の発言。
先のことは知りませんという発言に僅かに、この調子だと今夜中に大阪までは帰れないかもよという臭いがする。
ねぇ、どういうこと?
ホームに行ったり改札に行ったりしているうちに、米原行きの電車がホームにやってきた。
なんや、電車来たやん。
改札で駅員を取り囲んでいる連中を出し抜いて一足お先に米原に行きまーす、と電車に乗り込んだ。こういう時に集団の行動の裏をかく瞬間がたまらなく好きだ、悪趣味だけど。

走り出して、しばらくしてからアナウンスが流れた。
「この電車は大垣行きで米原までは行きません。大垣止まりです。」
どよめく乗客たち。
なんと。
18キッパーなら分かるだろうが、大垣駅には何もなくて地味な駅である。
大垣駅で降ろされてもなぁ。
どうしたもんだろう。
嫌な予感がし始める。
嫌な予感は的中で、大垣駅に降りてみてびっくりしたのだが、ものすごい人数の人がホームや階段、改札に溢れていた。
これはマズいぞ。
改札へ向かうと、一部の人がパニック状態となり、怒号が飛び交っていた。
「どうしてくれんねん!」
ああもう絶対関西人やん。
こういう時に怒鳴っている人は大概関西弁である。


「米原までの電車が来るかどうか分からんってどういうことやねん!」と言っていた。
ええ?ほんまにどういうことやねん。
「ですから、復旧の目処が立っておらず、電車が来るかどうかも言えないんです…。」
どういうことやねん。

私も駅員さんのところへ行き、
「今日中に大阪に帰りたくて、それだと、米原まで22:42までに行きたいんですけど、どうです?復旧の見込みあります?」と冷静に聞いてみたが、「復旧の見込みはあるともないとも言えないです。」と言われる。
どういうことやねん。
それをせめて岐阜駅で教えておいてくれたら、良かったのに。ホテルもお店もたくさんあったのに。
大垣駅で立ち往生って最悪やん。
ここにいる50人以上の人たちの怒りはもっともである。
クソ寒いし、ホテルもなさそうだし、ここでじっと待つのは得策だろうか…。
来るかどうかも分からない電車をこの大勢の人たちと一緒に待って、万が一電車が来ても全員乗れるか分からないしなぁ。
そうこうしている間に21:20になる。
大垣から米原まで30分以上かかるし、このまま電車を待っていても終電を逃す可能性が高い。
どうしようか。
路線図を見て、考えていた。
もうこれはワープしかないかもしれない。

ぎゅうぎゅうの満員電車でギリギリ終電に滑り込める僅かな可能性にかけて大垣駅に残るか、いったん岐阜駅まで戻る僅かな時間に、ワープも含めて作戦を立て直すか。
ただ大勢とじっとしておくのはこういう時はあまり良い結果を生まないので、勝負に出ることにして岐阜へと戻る電車に飛び乗った。

(大垣から岐阜に向かう電車は空いていて時間の遅れもなくやってきたし、岐阜にわざわざ戻る人はほとんどいなかった。)

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もしもあの高山ラーメンを食べる途中下車ディナータイムをとっていなければ、電車のトラブルに巻き込まれることもなく、スムーズに帰れていたのに。
という考えは私はあまり抱かない。
美味しいものに出会えたのだから構わないさ。
なんて、気取っていたが、頭の中では脳内会議で忙しかった。

プランA)
岐阜のホテルで泊まって明日大阪に帰る。名古屋に泊まってもいい。ホテル代と翌日の電車賃が予定外の出費となる。

プランB)
岐阜を通り過ぎて名古屋に出て新幹線に飛び乗って米原まで行く。それなら3000円台の出費で済むが、時間的に厳しすぎるし、米原から京都が動いていなければそこで詰む。

プランC)
今日中に帰ることを最優先しておとなしく名古屋から新大阪まで新幹線に乗る。出費は5940円。

さてどうしよう。
もうこの10分間くらいで方針を決めなければプランAしかなくなってしまう。

岐阜駅にまた舞い戻ってきた時にはもう22時が近づいていた。
さらにイライラしている人の人数が増えて怒号も増えていた。
そして電車はまだ動いていなかった。
それならそうと、米原までは今日は行くことができませんとはっきり言えばいいのに。大垣駅に取り残されている人たちは身動きが取れないじゃないか。

一言言ってやろうと思ったが、それよりも別の作戦のために聞きたいことがあったから駅員をとっ捕まえて聞いてみた。
とは言えとっ捕まえたから、前置きとして、米原まで行けると思って電車に乗ったのに大垣までになって、大垣から岐阜まで戻ってきたことを話し、もっと早く教えて欲しかったと言ってから本題へ。

「新幹線は米原あたりも含めて動いてるんでしょうか?」と聞いた。プランBとプランCのために確認したかったのである。
すると、新幹線は遅れもなく問題なく運行していると言う。
JR東海への信用度がゼロなので、本当に遅れていないか確認してほしいと言って聞いてもらい、自分でもネットで調べて新幹線は通常通り通じていることを確認できた。

よっしゃ。

18きっぷで2500円で大阪まで帰りたかったが、岐阜大垣岐阜と電車に乗りまくれているし元は取れている。
それに帰れなくなって駅で野宿するよりはマシだと覚悟を決めて、今度は岐阜駅から名古屋方面の電車に慌てて飛び乗った。
なんとも忙しい。
駅員に聞いている間にタイムオーバーで、プランB案は消えた。時間との戦いである。
信長公に今度こそ別れを告げて私は新幹線に乗るために、万策尽きる前に名古屋へと向かった。

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22:45に名古屋駅に到着。
ギリギリの戦いがまだ続く。
新幹線の切符売り場に並び、最終の新幹線の切符を買った。
一応窓口の人に「18きっぷを持ってるのですが、割引されないですよね?」と聞いた。
ルール上ダメだと知っていたが、今回はJR側に落ち度があるし…。
事情を説明し、振替運転にならないかとダメ元で聞いたら、予想通り割引はされないと言われた。
「本当は私だって新幹線に乗りたくないんですよ?」という訳の分からないことを口走って頼んだが無理だった。ちぇっ。
予想外の出費が悔しい。
だが、私だっていい大人だ。新幹線の切符代くらい、どうってことないぜ。

数秒悩んで、新大阪駅までではなく京都駅までの切符を買った。
新大阪まで5940円で買えば楽なのに、770円をケチって京都までの5170円にしたのである。
貧乏というかケチというかよく分からないが私の判断である。

だって、2500円の青春18きっぷを持っているからJRの新幹線特急以外は乗り放題なのに、在来線に乗って帰れる時間なのに、新幹線に乗らないといけないという状況が悔しすぎたから。
そんな訳で、プランC'の、18きっぷを使っている最中に新幹線に乗って18きっぷ使用に戻るという通称「ワープ」の裏技を使った。

お陰で2時間半ほどかかる名古屋から京都までの道のりを30分強でぶっ飛ばしてもらい、無事米原駅を通り抜けて京都に23:31に到着。
大垣や米原の人たちはどうしてるだろう。
御先に御免。
笑っちゃうくらいのスピードで米原をビューンと通り過ぎた。
再び新幹線の切符から18きっぷに持ち替えて、京都発の大阪へ向かう最終電車の23:58に無事に乗り込むことができ、最寄り駅には堂々と18きっぷで改札を出ることができた。
深夜1時前の帰宅だったが、なんとか家の布団で眠ることができたので、トラブルをギリギリ回避できたと思う。
自分の瞬時の判断に我ながら痺れた。

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ちなみに取り残されていた大垣駅にいた人たちは、結局米原駅までは行けたものの、米原駅に着いた時には最終電車が行った後でそこで試合終了となったようである。
この件は大問題だったようで、翌日、ニュースになっていた。

大勢の帰宅難民が発生し、米原駅にある使わない電車の車両をJR西日本の人たちがホテルとして貸してくれて、車両の中で寒さを凌いで眠ったらしい。

帰宅難民にならずに済んで本当に良かったと思う反面で、即席列車ホテルに泊まれる機会なんてそうそうないのに惜しいことしたなという気持ちもなくはなかったりして。
そんな訳で、
#飛騨タイムループ旅 は、岐阜大垣間で時空の狭間に引っかかってしまって、何とか抜け出して新幹線でタイムワープして取り戻すという、予想外のSFチックなフィナーレを迎えたのであった。
全くもって謎の、なんでこうなった的な、飛騨タイムループ旅の終焉。
家に帰るまでが旅である。


この件のネットニュース↓

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ネットニュースにこんなことが書かれていた。

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先の状況を見て難を逃れた人=私、優勝!
やっぱり旅運はいい方だと思う。

飛騨タイムループ旅、これにて終了。


↓そういや、結構トラブルになりかけているが…。



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