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焼岳、焼けました 【初めての上高地①】

良い、良いとは聞いていた、上高地。
保養地。避暑地。観光地。上高地。
噂には聞いていたけど、大阪からは遠くて行きにくい場所、と勝手に思っていたため、これまでに行こうと思ったことがなく私とは無縁の場所だった。
そもそも関東寄りの場所は、私の「次に行きたい旅先リスト」の選択肢から外れる。
長野は微妙なラインで行けそうな行けなさそうな場所。私の「行けそう」というジャッジはJRの青春18きっぷ、特に東海道本線で行けるかどうかである。東海道本線上にない長野県の特に山の方は、私の旅の線路上にはなかったが、数年前に仕事で松本に行く用事ができた時に、無理矢理18きっぷで行ってみたら普通に行けたので、一昨年も18きっぷで東京から大阪の帰りに諏訪湖に寄ってみたりと、私の方から長野県に歩み寄りつつあった。
それでも上高地は「大観光地」のイメージがあり、人が多そうな場所は興味がなく、縁遠いままであった。




しかし、昨年立山縦走で知り合った命の恩人くんと、コミュ力ハンパない兄さんの2人が昨年以来時々連絡をくれるのだが、2人はそれぞれ別でよく北アルプスに登っており、2人が登った焼岳や、穂高連峰の写真を見ているうちに、立山と剱岳以外の山に少し興味が出てきて、登ってみたいかも、と洗脳され気味になってきた。
そしてまた、ぼんやりと何となくいつか行きたいと思っていた秋の紅葉の時期の涸沢カール。ここの行き方を現実的に調べるようになった。

すると、両方面の捜査線上に浮かび上がってきた「上高地」という地点。
北アルプスを登るにしろ、涸沢カールに行くにしろ、そこを目指す人たちは、ほぼみんな、上高地という場所から旅が始まっているではないか。
そんな訳で、こりゃ、上高地行くしかないぞ、と思うようになったのである。
いつもながら前置きが長かったけど、まあもう少し聞いてほしい。

涸沢カールへは上高地から山道を登る行程も含めて片道6時間くらいかかるのと、紅葉のシーズンの涸沢の写真は、確かに美しくてこの目でも見てみたいが、ものすごい数のテントが密集していて今行くのもなぁと二の足を踏んでしまった。
そして、今月に入って少し体調を崩してしまったことで北アルプスアタックも三の足も四の足も踏んでしまった。

しかし、上高地にとどまるのならアリな気がしてきたし、山を近くで感じながらのんびりキャンプをするのもいいではないか、そもそも避暑地、保養地なんだから暑さから逃げて仕事からも逃げて、英気を養うために上高地に行くのこそ真っ当な理由じゃないか、という気分がムクムクと湧いてきた。
選択肢になかったあまりに、恥ずかしながら今まで知らなかったのだが、上高地へは新大阪から直行の高速バスで簡単に行けるということを今更知り、気づいたらバス往復券をポチッていて、私はとうとう正式に上高地への招待状を手にしたのである。片道11000円というのはちょっぴり痛かったが、ドアtoドアで上高地に着くことを考えればかえって安上がりかも知れないと思うことにした。

そんな訳で夜行バスで7時間ちょっと。
三列シートで隣も後ろも人が乗っていないディスタンスの取れた状態で一眠りしたら、簡単に朝5時台に上高地に着いた。
バスを降りたら、多くのガチな登山家風の人たちが登山靴の紐を締め直している。
まるでスペインのカミーノを歩いていた時の早朝のアルベルゲ(宿)の玄関のようでワクワクする。
私はと言うと、山に登らず静養するという意思表明としてトレッキングシューズではなく派手色のkeenのサンダルNEW PORTでお気楽に来ていたので、そのままの勢いで、バックパックからダウンジャケットを引っ張り出してサッと羽織り、初めてのキャンプ場まで歩くことにした。
(とは言え、keenのNEW PORTはハイキングも軽めの山登りも余裕の作りではある。)

先程目覚めたばかりで顔にアイマスクの寝あとがついたままの寝ぼけた状態で歩き始めた私に、夜が明けた途端に早速絶景が飛び込んでくる。
振り返れば焼岳が朝日に赤く染まっている。
山に一歩も登らず、バスを降りただけでモルゲンロートを目撃。思わずグーテンモルゲンと呟く。ここはどこだ。上高地だ。
そして、梓川の薄いブルーグリーンもどうなってるのだ、というくらい美しい。
上高地、恐ろしすぎる。
それから観光の目玉、河童橋と穂高連峰の風景。
もはや土産屋のポストカードがそのままドン。

引き続き、平坦な道をバスターミナルから10分歩けば、もう小梨平の森の中に入り、あっという間にキャンプ場到着。
平日だが、穂高連峰と梓川がバッチリ見えるベストポジションは既にテントがいくつか張られていたため、私は少し森に入った小川沿いの静かな誰もいない場所に「ここをキャンプ地とする!」宣言を発令。
バスを降りて20分後には、もう十分に英気を養えてしまっていた。
初めての上高地。
もう着いて20分で魅了されてしまった。
短い間ですが、自然の中にお邪魔させていただきます。テントの中で正座して、山や川や森や、できれば会わないでやり過ごしたい熊に、心の中で、そうご挨拶。ダウンジャケットを着て9℃に震えながら、今年最後のいい夏休みになりそう、と私は確信していた。

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焼岳、こんがり焼けました。

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梓川と河童橋

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ここをキャンプ地とする。

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木々の隙間からチラリと穂高連峰





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