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いつになったらホームシックの免疫つくのでしょうか。

ホームシックになった。
韓国に来てから1年と9カ月が過ぎようとしている。
その中で今回の日本帰国は3回目だ。
韓国に戻ってきてから3日目のこと。夜寝ようとしたときに父から「元気に過ごすんやで」とLINEが来たのだが、それを見て私は大いに泣いた。
余りにも盛大に泣いているので、旦那が「ダイジョブ? コワ~イ?」と声をかけてくれた。
つたない日本語が可愛いが、嗚咽女には旦那を可愛がる余裕がない。

3回目なのにホームシックにかかってしまった。

よく勘違いするのが、ホームシックは異国に戻ってからすぐにかかるというものでもない。ふとした瞬間に、ちょっとしたことがきっかけで急に襲ってくるものだ。

韓国に来て直ぐの時には大丈夫だった。1カ月くらい経ったころ私はYouTubeを見ていた。在日韓国人のイケメンおじ様が年季の入った居酒屋に入り、ビールを片手に焼き鳥を食べている動画が目に入った。ねぎまを塩で食べている。それを口に含む。新鮮な鳥を使ったのだろう、噛み締める強さからその弾力を感じ取ることが出来る。飲み込むと同時にビールで喉を潤す。その背景にある価格表は茶色く変色していた。
それを見た瞬間、私は大いに泣いた。
旦那が「ケンチャナ? ウェグレ?(大丈夫? どうしたの?)」とおどおどしながら声をかけてくれた。旦那曰く、焼き鳥を見て嗚咽する女に驚きと恐怖を覚えたらしい。
翌日、さっそく焼き鳥風鶏肉の炒め物を作り、それは本当に美味しかった。
でも私のホームシックが治ることは無かった。

私は美味しい焼き鳥が食べられなくて泣いたんじゃない。
もう気軽にあの文化の中に身を置けないところに来てしまったのだと気づいたのだ。一人で気軽に入れる飲み屋はここにはない。弾力のある鶏で作ったねぎまはこの国にはない。あの茶色く変色した価格表はここにはない。もう、ないのだ。

私がこの時のことをよく覚えているのは、それだけ辛く苦しい瞬間だったからだと思う。

このように、ホームシックは急に襲ってくる。

今回の日本への帰国(3回目)で、私は大いに楽しんだ。タイミングよくお正月を挟んで長期で帰国することができた。久しぶりに家族一同が集まりおせちを食べ、日の出を見に行き、神社にお参りをした。母とカフェに行き、家族女一同で女子会をした。その他はひたすらに会いたい人達に会った。
以前同じ職場で働いた先輩方。
30代序盤で必ずぶち当たる「私このままでいいのだろうか」問題に、逃げることなく真正面から体当たりし、答えを導き出した強者達。
私のやりたいことを応援してくれる三児のママ。
時間が経って形が変わり、場所が離れても繋がってくれる人達。
私の居場所は紛れもなくここにあった。

そんな場所から私は離れて3回目のホームシックにかかったのだ。
もう慣れとかそういうものではないのかも知れない。

私は、ホームシックはコロナのようなものだと思う。
人(何か)を媒介としウィルス感染する。でも中には感染しなかったり、感染しても症状が出ない人もいる。そんな人はもともと何か耐性があって症状がでない。
そして自分がなにかしら行動したその隙に感染してしまう。感染してしまうのは悪くない。この世界の全人類が経験したように、かかる時はかかるのだ。かかると骨の髄まで痛み、その辛さに泣きたくなる。

ホームシックのことを私は病だと思うようにしている。その人が弱いからではない。なんかかかってしまうのだ。だから、もしかかっても決して自分を責めてはいけない。決して弱いわけではない。
ではホームシックという病にかかった時の処方箋はあるのだろうか。
その答えは「ある」。それも何百万という処方箋がこの世の中にはある。
特に私がおすすめしたいのは自分の住んでいる国の旨いメシを食うことだ。
人間悲しくても、苦しくても、泣きはらしても結局は腹が減る。その国の旨いメシを食べるとなんだか力が湧いてくる。その土地から元気をもらうように。
そして、少なくとも自分の舌は、この国にしっかりと適応しているのを感じることが出来る。
その国のメシが旨いと感じることができれば必ず生きていける。
ちなみに私は今回、泣きはらした次の日に鶏一匹丸ごと揚げた昔ながらの韓国式フライドチキンを食らった。周りの衣はあらかじめピリッと辛く味付けしてあり、かぶりつくとパリッと軽快な音がする。中には熱々の新鮮な鶏肉が詰まっている。胸肉さえジューシーだ。口いっぱいに鶏のうまみが広がる。
この国に長く住んでいる人が知っているソウルフードだ。
うますぎて思わず笑えてくる。
ねぎまも良いけど、韓国の鶏肉最高!!!!!
この国に来て私は体重が4kg増えた。これは私が数々の困難を超えてきた証だ。パンツの上にのっかったお腹の肉が誇らしい。


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