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「不確定名」という概念が僕に与えた影響

古くから有名なRPGで「ウィザードリィ」というものがある。

 僕は、アスキーから出たファミコン版の3作とスーパーファミコン版くらいしかプレイしたことがないが、極限まで削ぎ落とされた世界観描写や、純粋に迷宮探索とモンスター退治に特化したシステム、そしてシンプルを極めきったようなグラフィックなど、全力で「プレイヤー側の想像に委ねる」タイプのゲームで、熱狂的なファンが今も多いシリーズだと思う。

 僕も、当時小学生ながらあからさまに他のゲームとは種類の違う感触を覚え、そのクールさと硬派さに一気に虜になった記憶がある。

匿名性の高い、物言わぬパーティ達に感情移入しつつ、羽田健太郎氏の手がけるBGMに身を任せながら、まだ見ぬ宝物を探しに地下深く潜ったものだ。

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 魅力は語り出すとキリがないので、今回は一つに留めたいのだが、「ウィザードリィ(以下 Wiz)」の何が当時僕にとって「斬新だ」と思わされたかと言うと、モンスターが出てくる時の演出

 ドラクエでもFFでも、モンスター出現時「スライム」は始めから「スライム」として出てくるし、「ゴブリン」は「ゴブリン」として出てくる。

 Wiz の場合は、このパターンではなく、

「不確定名:にんげんがたのいきもの」

など、まず抽象的なグラフィックで出現し、戦いの時間の経過とともに、それがオークなのかコボルドなのか、目も慣れて徐々に正体がわかる…といった感じで展開されるのだ。

 僕はこの演出に対し、子ども心にもの凄い "リアル" を感じた。
と同時に、"恐怖" も同じくらい感じた。

何かわからないものを目の前にするほど怖いものはない。
幽霊などが怖いのも、自分が何を見ているのかわからないからだと思う。

人はそれが何なのかを「認識」して初めて、対策と戦略が立てられるのだ。

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この時の印象が強烈で、モンスターに限らず、僕は今も目の前に訳のわからないもの(虫でも動物でも人でも現象でも)が現れたとき、

「不確定名:◯◯」

という認識レイヤーを設け、いったん自分の中で状況を整理するようにしている。

恐怖を感じるという反応を細分化し、極力段階的に経る努力をすることで、少しでも冷静になれ、打開の思考へ意識を運びやすくするためだ。

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「何かわからないもの」をゲームの中に概念として取り入れてくれたおかげで、今こうして自分は意識の階層を一つ増やすことができている。

そのほかにも Wiz は僕に様々なことを教えてくれたが、
今日はこんなところで。

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