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インターナショナルスクールと国際スポーツ大会

大会の幕が上がると面白い状況が始まる

インターナショナルスクールで働いていた時、異なるバックグラウンドがよくもまあこれだけ集まったね、というぐらいみんな個性的だった。わたしは高等部に関わることが多い仕事で、毎日何かしらで彼らと話をしていた。当時の高等部生徒の人種的な割合としたら、日本とアメリカ、日本とイギリスのようにいわゆる「ハーフ」もしくは「ダブル」と呼ばれる生徒が3割、帰国子女を含めた日本人が3割、白人生徒が3割、残りはアジア系の生徒だった。

国際スポーツ大会の幕が上がると、インターナショナルスクールはなかなか面白い状況になる。日本にいながら個性的なメンツに囲まれているのには慣れているけど、スポーツ観戦となると話は別。

みんな興奮しているし、盛り上がり方がすごいのだ。滅多に聞けない英語以外の言語での応援や、「この選手はこういう特徴がある」とか、過去の対戦成績とか因縁じみたエピソードを解説してくれて、なかなか楽しかった。

野球のWBC、サッカーのワールドカップ開催時等には、普段存在感を感じない高等部のブックロッカーエリアのテレビが点けられる。授業の合間や昼休みに生徒だけでなく、教職員も混じってテレビ観戦をしている。かなりの人数が観戦していて、辛辣なコメントが聞かれたりする。個人的には人間観察が面白かった。

「日本の血が入っているし、日本人としてのプライドがある」

日米ダブルの男子生徒たちが、WBCで日本の試合の時は日本を応援し、アメリカ代表が試合の時はアメリカを応援していた。この両チームが対決する時に「どっちのチームを応援するのって聞かれるでしょ?」と尋ねると頷きながら、

「アメリカを応援するのは、友達に任せる。オレには日本の血が入っているし、日本人としてのプライドがあるから、日本を応援する。」

という返事がきて、すごく驚いたことを覚えている。彼らの名前から受ける印象や普段の言動は、いわゆる日本人的なものではない。けれども「自分のアイデンティティには、英語圏だけの考えや習慣だけで形成されていない。日本人としてのバックグラウンドも入っている。だからこそ応援したい。」という気持ちが彼らから強く感じられた。

日本に対するリスペクト

インターナショナルスクールには、ヨーロッパ勢の生徒もいる。わたしが勤務していた頃は、イギリス、ブルガリア、フランス、スウェーデン、イタリア国籍の生徒がいて、サッカーワールドカップの時は、すごく盛り上がっていた。母国チームの時は特に熱くなっていた。ある時何気なく、彼らに「日本代表の試合って興味あるの?」と尋ねると、

「母国チームの試合がある時は、もちろん母国チームを応援する。日本代表の試合がある時は、日本を応援する。だって日本に住んでいるんだよ。当たり前じゃない。日本に対するリスペクトだよ。もし母国チームと日本代表の対戦の時は悩む。どっちにしても良いプレーをして欲しい。」と言ったスウェーデン人男子生徒の言葉にも驚いた。他のヨーロッパ勢の生徒も頷いていた。そして、

「日本に住んでいるから、他の国の出身の友達とこうして仲間として一緒に盛り上がって試合観戦できるんだよ。」と別の生徒が言うと、「そうそう」と楽しそうに同意していた。

時として体が大きいのに、まだ幼さが残る言動が目に付く高校生の彼らから、こういう言葉が聞けてジーンしたことを覚えている。

あの時高校生だった彼らは、今、世界中のあちこちで東京オリンピックを観戦しているはずだ。オリンピック観戦の合間に、高校時代に別の国の友達と熱く試合観戦をしていたことを、懐かしく思っているのかもしれない。





























































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