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「サラダ記念日」を読む

電子図書館で、俵万智さんの「サラダ記念日」を借りました。

高校時代に所属していた文芸部、大人になってからはnoteと、少しですが短歌を作っておりました。
…しかし実は、歌集をほとんど読んだことがない。
そこで現代の歌人の代表格、俵万智さんの代表作を手にとってみた次第です。
調べてみると、この歌集が出版されたのは彼女が24歳の時。
短歌を作り始めたのは20歳の時。わぁ、若い…!
つまりこの歌集に収録されている短歌は、20歳~24歳の女性の生活を切り取ったものって事ですね。(当たり前ですが)
それを踏まえて拝見いたしました。

率直な感想を申し上げますと…
恋愛の歌が美しすぎる

二人で過ごすきらきらした時間。
会えない時も彼を想いながら過ごす時間。
しかしやってきてしまう、お別れの時間。

この一連の流れが、この句集に詰まっているんです。
たった数ページの間で、一つの恋物語が始まり完結していく感じ。

特に印象が強かったのは本を開いて一番最初の題、「八月の朝」。
愛しの彼の運転で海へ。
サーフボード、卵サンド、砂浜、沈む太陽。
そして、二人のもどかしい距離感…。

左手で吾の指ひとつひとつずつさぐる仕草は愛かもしれず

サラダ記念日「八月の朝」より

うわぁ~甘酸っぱい。
本当に20代前半の女性の恋愛経験?
いや、若いからこその作品なのか…。


しかしですね。
それ以上に引き込まれたのは、その後。
お付き合いをした二人に立ち込める暗雲。

「じゃあな」という言葉いつもと変わらぬに何か違っている水曜日

そして最後には、自ら別れを決心する。

吾をさらいエンジンかけた八月の朝をあなたは覚えているか

ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう

個人的には、失恋の歌の方が引き込まれました。
彼女の失恋歌特有の美しさといいますか。
失恋の悲哀を勿論感じているんだと思いますが、短歌ではそれを全面に出さず、あくまで日常のワンシーンとして丁寧に切り抜いている印象でした。
あと、ハンバーガーショップの歌にクスッときたのは私だけでしょうか。
もうハッキリと見切りをつけて「じゃあねバイバイ!」と身軽に去ったのか、それとも、辛さを感じないようにその心持ちでいたのか、はたまた現場が実際にハンバーガーショップだったのか…。想像を掻き立てられました。

失恋の歌といえば、別の章ですがこちらも好きです。

何してる?ねぇ今何を思ってる?問いだけがある恋は亡骸

サラダ記念日「風になる」より

うーん、芯をついている。
きっとそうだと分かっていつつ、離れがたいんだろうなぁ…。
「亡骸」って言葉選びも綺麗。
まだ形だけは存在しているけれど、その中身は抜けてしまっている。
関係だけは続いているけど既に終わりを迎えている恋を、上手く例えていると思いました。


以上、私が人生ではじめて「サラダ記念日」を読んだ感想でした。
短歌とも恋愛とも疎遠な日々を過ごしておりましたが、どちらも恋しくなってきた…。

私の語彙力では伝わらない魅力が沢山ありますので、短歌に興味を持った方や恋愛の気分を味わいたい方は是非ご一読くださいませ。

それでは本日はこの辺で。
お付き合いいただきありがとうございました!


野乃


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