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縁の種類の複数性と複層性の話


何の共有を契機として形成される縁か、という意味での「◯縁」

同じ遺伝子を共有する関係のことを「血縁」という。このアナロジーで、特定のキーワードを共有する関係を「〇縁」と我々は呼んできた。

例えばまちづくり界隈では、地域的に同じところに住んでいることを契機に発生する縁を「地縁」という。それに対し、特定のテーマや目的を共有することを契機に発生する縁を「志縁」という。町内会などが地縁組織、NPOなどが志縁組織と呼ばれて対比されてきた。

最近は、趣味を共有する関係「趣味縁」とかもある。だったらSNSを契機とした関係「SNS縁」なんてのもあるだろう。

「気質やノリ」を共有する「気縁」、ルールを共有する「範縁」

それでいくと、ある人物と「気が合う」ことを契機に生じる縁もあり得ると思われる。考え方やノリ、性格などの気質が合うことっていうのは人間関係においては特に大事で、極論、目的や趣味が一致していなくても友達でいられたりする。この流れで行くと「気縁」といえるだろう。最近あちこちで観察されるワーカブルな組織に共通する特徴でもある。

目的や趣味は一致していない、気が合うわけでもない、しかし特定のルールに従うという一点で合致している、という縁もあり得て、これを規範を契機に作られる縁という意味で「範縁」とでもいおうか。例えば町内会のような組織は、一見「地縁」組織であるように見えて、「地縁」だけで組織を形成できるわけではなく、脱会や新規加入の停滞などで加入率の低下が問題視されている。

気が合わないため「気縁」もないし、趣味が合うわけでもないので「趣味縁」もない、目的やテーマも共有していないから「志縁」もない。ただ、地縁しかない。それじゃあわざわざ組織化しなくていいよね、となる。このことからも町内会というのは、町内会という組織に加入し、そのルールに従うことに約束した「範縁」組織なのだといえる。まあ、たいていの組織はそうだけど、地縁だけで集まっているわけではないのだ。

そういえばティール組織なんていうのもそうで、なぜ自律分散型なのに組織と呼びうるのか、烏合の衆とは何がちがうのかっていうと、特定のルールへの合意を契機として結成されている点だ。

複数の縁が絡まり合って「組織」ができる

地縁組織と志縁組織の融和は90年代後半からゼロ年代半ばまで重要な問題設定となっていたが、乾亨が「結局、地縁と志縁が融和する組織って、地縁組織の中に志縁組織を作るケースだよね」と指摘して、この問題設定の耐用年数を終了させた。人は網の目状に張り巡らされたいろんな縁に絡まっている。あたかも、複数の線を束ねて布を作るように。


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