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ナロペディア

はじめに

なろう系を始めとしたネット上の小説においてよく見かける言葉や言い回しを集めてみました。
よく見かけるということは記号として伝わりやすい半面、陳腐化して個性を殺す諸刃の剣でもあります。
その意図を咀嚼することで、作品にふさわしい別の表現が見つかるかもしれません。
用法用量を守って、正しく使いましょう。


あ行

「あー」

主人公が新しい解決法を提示する前に口にしがちな訥弁。常識や知識・技術格差への戸惑い、世界への影響を配慮して迷ったり、自己評価が低い場合に、思わず口をついて出てしまう。

例)
「あー、それって鶴翼の陣じゃダメなのか?」

悪役令嬢

元来は乙女ゲーなどで主人公を目の敵にして貶めてくる敵役の貴族の令嬢を指して言う。近年ではその逆張りとして、悪役令嬢として嵌められたヒロインを救ったり、主人公が悪役令嬢に転生して破滅を回避したり人生をどん底からやり直したりする。

「いや」

先に出た話題に対して、懸念を示したり新しい提案をする際に、セリフの冒頭に置かれる。元陰キャの主人公においては、相槌でさえ否定から入るという陰キャらしい面を強調する効果がある。

例)
「いや、そう言われてもな」

『〇〇・××・オンライン』

とある剣技系SFライトノベルの流行後によく見かけるようになった、作中のオンラインゲームのタイトル形式。

幼なじみ

主人公とともに家族同然に育った仲の良い相手。異性であることが多い。
かつてはヒロインの代名詞であったが、最近はその逆張りとして追放してきたりNTRされたりして、負けヒロインの代名詞に変わりつつある。

俺TUEEE

チート能力などを得て周囲に対して絶対的な優位を持った主人公あるいはそういう作品を指して言う語。
セリフや地の文より、タイトルやジャンル、タグに使われる。

か行

神様

主人公にチート能力を授けたり、ラスボスになったりする便利な存在。世界ごとに大抵一柱は存在する。

学園

主人公が入学する、あるいは入学する予定だった教育機関。多くの場合、国営で、国中から身分を問わず優秀な子女を集め、在学中は学徒として平等であるべしという先進的な考えを持つが、能力順にクラスを分けるという強い競争主義の面も見せる。

賢者

勇者の仲間として設定されることが多い。剣聖や聖女と似た立場だが、なぜか端役が多い。

剣聖

勇者の仲間として設定されることがある。特に異性の場合は主人公を追放する側のハーレムメンバーとして出てくることが多い。

米/味噌/醤油

日本から異世界に渡った主人公たちが求めてやまないソウルフード。多くの場合は日本に類似した文化圏があり、そこから仕入れることになる。

婚約破棄

主人公が貴族かそれに類する特権階級だった際に起きる追放の一種。
婚約破棄された異性を傍観者である主人公が救うパターンもある。

さ行

「さすがは〇〇!」

チート主人公を称える礼賛の言葉。〇〇には主人公の名前が入る。「さす〇」などと略され念仏よりも多く唱えられる。

ざまぁ

主人公が因縁の相手に見事な復讐を果たした際の心境を端的に表した言葉。追放系やNTR系と相性がいい。
セリフや地の文より、タイトルやジャンル、タグに使われる。

「~じゃ」

老人がつける語尾。いわゆる老人語。一人称「わし」と打ち消しの「~ぬ」がセットで使われる。
一説によると、江戸時代の上方語をさらに誇張して老人や知識人を表現するという手法が18世紀後半以降から用いられはじめたらしい。そのまま三百年も使われ続けている世紀の大発明。
現実でこの語尾を使うご年配とは、当然出会ったことがない。

ジャガイモ

異世界で主人公が見出して流行させ、金・地位・名誉を獲得するために使われることが多い。設定厨から突っ込まれることも多い。

ジョブ

異世界において、一定の年齢に達したすべての子女たちが教会などの神に仕える組織で儀式を受けて授かる職業またはその適正。ジョブには通説的あるいは絶対的な上下や貴賤が存在し、多くの場合主人公はその底辺である不遇職を授かる。

「知らない天井」

某ロボットアニメで主人公の少年が口にしたことで有名なセリフ。
気を失ってからベッドで目を覚ました主人公は、昭和に流行したダジャレを口ずさむ中年のごとく、必ずこの言葉を口にしなければならない。

スキル

異世界においては、すべての人に発現する特殊な能力。ジョブ同様に儀式で与えられる・発覚することもある。
現代ファンタジーにおいては、ダンジョンやモンスターの発生とともに、何らかの形で人々に発現する。
ジョブ同様に上下や貴賤が設定されることもあり、その場合は必ず主人公が最底辺のスキルを獲得する。

「すごい!」

偉大な主人公への素直な称賛の言葉。

ステータス

主人公の能力を数値と解説で客観的に把握できるとても便利なモノ。これ自体が特殊な能力として設定されることもあれば、その世界では当たり前の現象として扱われることもある。

「ステータスオープン!」

異世界に行ったら一度は口にしたくなる魔法の言葉。

聖女

勇者の仲間として設定されることがある。かつてはファンタジーにおけるヒロインや乙女ゲーにおける主人公の立ち位置だったが、最近は逆張りとして追放側のハーレムメンバーになったり、性悪自己中の転生者が中身に入って悪役令嬢を貶めたりする。

「世界、救っちゃいますか」

某SNSの投稿で有名になったセリフ。実際にこのセリフを言った有名な作品があるわけではないが、否定し難い妙な納得感もある。

た行

「~だぞ」

男主人公がたまに使う語尾。何かを説明するときが多い。現実の日常生活ではまず聞かない。

「~だわ」「~わね」「~わよ」

ヒロインの女の子たちがよく使う語尾。いわゆる女性語。セリフで性別を表現できるため記号的にはとても便利。現実ではもう昭和初期生まれのお婆ちゃんぐらいしか使わない。

「~だが?」

男主人公が周囲の間違いを指摘する際に使うことがある語尾。大抵は主人公の行為が大げさに見積もられた時に、たいしたことはないと説明する際に使われる。

例)
「今のは上級魔法のメ◯ゾーマ……!?」
「いや、ただのメ◯だが?」

チート/チート能力

主人公が、神やそれに類する存在から与えられる特殊な能力。他者に対して絶対的な優位を獲得できることが多いが、作品によっては冒頭あるいは途中で同様のチート能力者が出てきて、相対的に危機に陥ることもある。

追放

とってもガンバっていた有能な主人公がその成果や能力を無視されて追い出されるとても理不尽な出来事。
タイトル中やジャンル、タグとしても使われる。

「っ」

驚いたときや口ごもる際に使われることが多いセリフ。

「って言われてもな」

周りから言われたことに対して、主人公がやんわりと反意を示すための枕詞。面倒なことを頼まれた時や、主人公にとっては容易だがまわりにとっては難しいことについて言及された際によく用いられる。
「そう言われてもな」などの変形がある。

「っと」

話題を転換する際に使われることがある。
リアルな話し言葉らしい雰囲気を醸し出しているようでいて、実生活で聞くことはあまりない。

トマト

ジャガイモに同じ。

ドライヤー

異世界において、技術系のチートを持つ主人公が作って流行させることがある、巨万の富や地位・名声をもたらす約束された家電の一種。貴族系のヒロインから好意や興味を持たれるきっかけにもなる。

な行

「なっ……!」

驚きを表現する時にとてもよく使われる。
「な……!」「なっ!」「なぁっ……!?」などの変形がある。

「なんだ、〇〇か」

主に物語冒頭で主人公が悪友や幼なじみなどに声をかけられた際の返答。遠慮のない仲であることを感じさせつつ、相手の名前もわかって一挙両得のセリフ。現実において相手の名前を呼ぶ機会はわりと限られており、このような返答の中で呼ぶことははまずない。

寝取られ/ネトラレ/NTR

追放系の主人公が旅立つきっかけになる出来事のひとつ。脳が破壊される。

は行

ハンバーグ

異世界において、主人公が流行らせるとても画期的な調理方法。あらゆる相手から称賛されるが、作品によっては戦士系の人物から「食感が気持ち悪い」「肉は食いちぎってこそ」「女子供の食べ物」などと嫌悪されることもある。

ひょんな

主人公がヒロインと出会ったり、珍しい能力を手に入れたり、異世界に飛ばされたりする際の突飛な出来事を説明する際によく使われる。

不遇〇〇

ジョブやスキルが存在する世界観において、それを獲得しただけで周りから失望・嘲笑されるが、実はまだ誰にも発見されていない特別な能力や活用法が隠されており、主人公だけがそれを見つけて唯一無二の絶対的な力を手に入れられる。

武闘会/闘技大会

チート能力を持つ主人公の強さを見せつけるとても便利なイベント。

ま行

魔王

魔物あるいは魔族と呼ばれる種族の長として世界観に設定されることが多い。また対の存在として勇者が存在する。元来は【勇者vs魔王】として諸悪の根源、悪の親玉としての立ち位置だったが、その逆張りとして“優しい魔王”や“理知的な魔王”といった正義・主人公側の立ち位置となる作品も増えた。

「またなんかやっちゃいました?」

無自覚系チート主人公を代表するセリフ。実際にこれを用いた作品もある。最近はネタとして使われるほうが多い。

マヨネーズ

異世界で主人公が流行らせて大流行する調味料。

「目立ちたくないんだけど」

不遇をかこち心を折られ疲れ果てた主人公が、降って湧いた能力を思うままに奮って華々しく活躍した後で、周囲の称賛や羨望とともに強く干渉されて自由が制限される可能性を憂えて言うセリフ。
「あまり目立ちたくないんだが」「目立ちたくないんだけどな」など。

もう遅い

追放された主人公が、新天地でハーレムや立派なDIY拠点を築いたり、爵位などを与えられて幸福に暮らし始めた一方で、その有用性に気付いた古巣の者たちが戻ってくるように求めた際の、状況や心境を端的に表した言葉。
セリフや地の文よりもタイトルやジャンル、タグに設定されることが多い。

や行

「やれやれ」

チート能力によって解決は容易だがあまり気が進まない際などに主人公がよく口にするセリフ。「目立ちたくないんだけど」と合わせて使われることもある。現実ではまず聞かない。

勇者

魔王やそれに類する存在を討ち果たす役目を負った人物および役職。かつては人類が待望する最強にして唯一無二の正義の執行者だったが、最近は死ねばすぐに次が生まれ、また雨後の筍のごとく大量に涌いて出ることもある、ありふれた存在として扱われる。また元来は主人公の設定として使用されていたが、最近はその逆張りとしてもっぱら主人公を追放するなどの悪役となっている。

寄親・寄子

とある作品において貴族制とあわせて用いられ、主人公とその家を取り巻く複雑な力関係をうまく表現した。以降、貴族制を持つ異世界を舞台にした作品でよく使われるようになったが、元は奈良時代~戦国時代の日本にあった主従関係で、必ずしも貴族制に付随する要素ではない。

ら行

リバーシ

主人公が異世界で流行らせてバカウケする遊戯。初期の資金稼ぎによく使われる。

冷蔵庫/冷凍庫

ドライヤーに同じ。

わ行

「ん?」

何かに気づいた際にあげる声。リアルで自然な会話感を表現しているようでいて、現実では想像以上に耳にしない。

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