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子供たちの行動から学ぶ

私は今、アメリカに住んでいて、ちょっとした御縁から、一日数時間子沢山の知り合いのお母さんの元、ベビーシッターをしています。私自身子供はいないのですが、昔から子供が好きということもあり、毎回楽しんでベビーシッターをさせてもらっています。

子供たちや親との関わりを傍から見ていると、依存症で苦しんでいた頃のシロの行動を思い出したりすることもある。大人のシロと子供たちを比べるなんてと思ったりもするけど、やっぱり子供の頃に経験したことは大人になってからも大きな影響をあたえるんだなぁと思う事がいっぱいある。それから、子供たちとの関わりで学んだ事がシロとのコミュニケーション方法にも役立ったりするから、このタイミングでベビーシッターができて本当にラッキーだな。(過去の日記より)

ということで、その私のベビーシッターの経験から面白いなと思った事があるので、ここで少し共有したいと思います。

1.Use your words(言葉で伝えよ)

少し前から主張することを覚えた2歳半のダイスケ(仮名)くん。最近、兄弟や家に遊びにくる近所の子友達との遊びの中で、おもちゃに対する所有権や遊びの主導権についてもどんどん主張していくようになった。

その時遊んでいなくても、他の子が楽しそうに自分のおもちゃで遊んでいると「これ、僕のおもちゃだから」と急に他の子から取り上げたり。「ママがこーやって遊びなさいって言ってたから、今から僕の言うことを聞いて遊んでね」と「キミは2歳半なのか!?」と私が疑問に思うような言動をしたり…とにかく主張が激しくなったダイスケくん。笑

最近はその主張が私にも向いてきているので、どうしたものかと思いながら日々悪戦苦闘している。

ちなみに私は、子供たちがお互いにケガをさせそうな喧嘩はやっぱり大人として仲裁に入るけど、そうでない場合は出来るだけ子供の喧嘩で間には入らず傍で見て、子供たち同士で解決させるようにしている。

現在の日本の子育て事情はあまり把握していないけど、私が今いるアメリカの家庭では、お母さんがよく、

"Please use your words(ちゃんと言葉で伝えなさい)”

と子供たちに言っているのを耳にする。たとえば、子供が駄々をこねたり、泣き叫んでいる時、「何がそんなに辛いのかお母さんはわからないから、ちゃんと言って?教えてくれる?」という感じ。

確かに、よくよく思い出してみれば、私の母は「泣いてばっかおらんと、ちゃんと言い!」と私に言ってくれていたような気はするけど、それは2歳とかではなく小学校に上がったころからだったと思うし、「以心伝心」「察する文化」の日本で育った私からすると、2歳児に対してこれを言うのは少し面白いなと思った。それから、まだ子育て未経験の私からすると、2歳児がどれくらいコミュニケーションを取れるかなんて未知の世界だったし、「いやぁ、2歳児にそれはどーなんだ?」と疑問に思っていたけど、ダイスケくんが生まれてすぐの頃から、たまにベビーシッターをさせてもらいながら、事あるごとに赤ちゃんの理解力のすごさを見せつけられていたので、「そうか、まだ言葉がしっかり話せなくても理解はできているから、ちゃんと親や周りの大人がしっかり話しかけてあげることが大事なのか」と理解しだした。

お母さんが他の兄弟の学校の送り迎えなどで、私がダイスケ君と二人きりになったりするとき、少し前の私ならダイスケくんの欲しているものが何なのか「察して」提供していたけど、このお母さんの「言葉で伝えて」というフレーズを聞いてから、面白そうだったので私も使ってみる事にした。

シーンその1

ダ:ねぇ、ノンちゃん(棚の上を指さして私を見つめる)
私:何?棚がどうしたの?
ダ:(そのまま棚の上を見つめて私の服の裾を強くひっぱる)
私:そんなに強く服をひっぱったら、やぶれちゃうからやめようね。何が欲しいか言ってくれる?(言葉で伝えてくれる?)
ダ:…(少し考えて)青い砂のおもちゃ……取ってくれる?
私:(言ったー!言ってくれた!!!)OK、じゃあ取るからちょっと待ってね。

シーンその2

ダ:(クローゼットの棚の上にあるおもちゃを指さして)ノンー!ビーズのおもちゃとって!!!
私:(ビーズのおもちゃを他のおもちゃと本気で勘違いして小さなビー玉のおもちゃを手に取る私)ビー玉のおもちゃね。はい、どーぞ。
ダ:ちーーーがーーーーうーーーーー!!!(と急に泣け叫ぶ)
私:え?ちがうの?(少しパニックになる私)え?じゃあこれ?(また違う小さなビー玉のおもちゃを手に取る)
ダ:ちーーーーがーーーーうーーーーーーー!!!(さらに声を荒げて泣け叫ぶ)
私:(勘違いしているままなので困惑)えー何色のビー玉?どれどれ?教えてくれる?
ダ:(感情が高まりすぎて止まらなくなり・・・)ちーーーーがーーーーーうーーーーーんやーーーーーーー!!!ちがーーーーーう!!!ちがーーーーーう!!!

色を聞いても、興奮状態のダイスケくんは聞く耳持たず…

ここで、ママ登場。

ママ:どーしたのダイスケ?ちゃんと言葉でノンちゃんに伝えなさい。ノンちゃん「どの色?」って聞いてるでしょ?
ダ:(ママが来て少し落ち着いたけどひたすら泣き続ける)
ママ:ダイスケ、"Use your words"、ちゃんと言いなさい。ちゃんとノンちゃんに言葉で伝えなさい。じゃないと、私もノンちゃんもわからないから、ダイスケも欲しいおもちゃで遊べないでしょ?

ここでようやくダイスケくんも少し落ち着き、状況を理解した様子。

ダ:赤のやつ…でも…でも…ビーズのおもちゃが欲しかったのに、ノンがビー玉のおもちゃばっかりとるんだもん・・・
ママ:(私の持っているビー玉のおもちゃを見て)あぁ、ノンちゃん、これは「ビー玉」でダイスケの言ってたのは、こっちの「ビーズ」のおもちゃよ。

実は、日本語と英語表現の違いで勘違いしたまま対応していた私は、ビー玉とビーズを同じものだと思い込んで、ずーと違うものをダイスケくんに提供していたのである。ただ、ダイスケくんは怒りのあまり興奮しすぎて泣け叫び続けていたので、私はさらに理解できずに負のループに陥っていたのである。

ただ、言葉で伝える事の大切さを目の当たりにし、2歳児でも、本人が言葉で伝える事の大切さが理解できれば、大人も子供の欲しているものをしっかり理解できるし、お互いに無駄なイライラが減って楽しく子育てできそうだなと思った瞬間であった。

この「言葉で伝える」ことについて学んだ私は、シロに対しても使ってみることにした。シロはどちらかというと自分からあまり意見は言わず、寡黙な性格である。嫌な事があると自分の部屋に籠って出てこなかったり、わざと私がイライラするようないたずらを仕掛けて、「自分が怒っている」ということを私に気づかせようとしていた。でも、私だってみんなの心が読めるわけじゃないし、シロの事だって全部が全部理解できるわけではないから、そのすれ違いが起こる度に私もイライラして喧嘩につながっていた事もあった。また、シロの場合は、その喧嘩を理由にしてお酒を飲むことに繋げていた所もあったのである。

そのため、家に帰ってから早速、シロの機嫌が悪いと感じる場面に出くわすと「シロ、もし何かイライラしている事があるなら、ちゃんと言葉で伝えてくれる?そうしたら、私もシロの欲してるものが分かるし、無駄な喧嘩しなくて済むから助かるんだ」と根気強く言うようにしてみた。

するとある時から、シロが少しずつ私に対して言葉で要望を伝えてくれるようになった。そのため、私もシロが不機嫌そうに見えるたびに「シロ今何考えてるんだろう?」と不安に思うことが減り、気分よく生活できるようになった。

でも、これはシロに対してだけじゃなくて、私も相手に察してほしい時に、「これぐらいわかるでしょ」と察され待ちをしていた事があることに気づいた。だから、それを少しずつ言葉で伝えるようにしてみた。すると、シロが「ノンちゃんがそー言ってくれると助かるよ。でも、今僕はこれで少し忙しいから、後でノンちゃんの言ってたことするね」と言う感じでポジティブな返答が返ってくるようになり、喧嘩が格段に減った。

でも、人によってコミュニケーションの方法は違うと思っているし、言葉で伝えなくても「以心伝心」のスタイルで成り立っているカップルもいると思う。ただ、私とシロの場合はこーゆー言葉によるコミュニケーションの方法があっていたんだなと気づいた。結婚してから8年目の事だった。

2.子供だってたまにはそっとしてほしい時もある

言葉で伝える事が定着してきた頃、ダイスケくんは段々と色んな方法でどこまで自分の主張が通るか試すようになってきた。

特にママがいない時、

ダ:ノンー、のどかわいたなぁ~( '3' )。
私:はい、どうぞ(お水のボトルを渡す)
ダ:えー、ちがうよ~。冷蔵庫にジュースがあるよ?

この家庭では、ご飯を食べるときや、3時のおやつの時など、お母さんが指定している時以外は、水しか飲めないのである。だから、ママがいなくなった頃合いを見計らって、ダイスケくんは私にチャレンジしてくるのであった。

私:今はジュースの時間じゃないから、これ飲んでママを待とうね。(水のボトルを目の前に置く)

ここでダイスケくんが自分の意見が通らず泣き出した。

私は必死でダイスケくんが泣きやむように、一緒に遊ぶかとか他の提案をしていたのだが、このときダイスケくんが欲しかったのは「ジュース」だった。そのため、私の必死の努力は実らず、ひたすらダイスケくんは泣き叫んだ。

ちなみに、その時、ダイスケくんのお兄ちゃんとお姉ちゃんがキッチンでお絵描きをしていた。この二人、さすが兄弟である、

「やれやれ、またダイスケの癇癪が始まったよ」的な感じで泣き叫ぶダイスケくんを横目に淡々とお絵描きを続けていた。これを見た瞬間、「あぁ、そっか、ダイスケくんは自分のジュースが飲みたいという希望がかなえられずにイライラして泣いているんだ。だから、気持ちが落ち着くまでそっとしておいた方がよさそうだな」というアイディアが浮かんだため、

私:ダイスケくん、今はジュースの時間じゃないからノンはジュースあげられないんだよ。ジュース飲みたいよね、悲しいよね。でも、私はお母さんとのお約束があるからごめんね。悲しい時は泣いてもいいから、落ち着いたら教えてね。

と言ってみた。すると、しばらくしてダイスケくんは諦めたようで、少しボリュームが下がったものの、泣いたままブツブツ言いながらリビングルームで一人で遊びだした。それから、気持ちが落ち着いた頃、さっきまでの泣き顔はどこへいったというぐらい笑顔で「ノンー、モンスタートラックで遊ぼー」とやってきて、その日は一件落着した。

この時、私はダイスケくんと遊びながら、「大人の私だって、自分の希望が通らないとイライラすることってあるし、そーゆーときってそっとしておいて欲しい事もあるもんな」と思ったのだった。

私は昔から「子供と大人の区別」についてよく考えていた。昔は子供扱いされるのが嫌だったのに、大人になってからはその子供の頃の気持ちも忘れ、このベビーシッターをする前は、子供は子供、大人は大人、だから、子供にこんなことは理解できるはずがないという考えが芽生え始めていた。でも、自分が嫌な事をされたら悲しくなったり、自分の主張が通らなくてイライラしたり、でも、人に優しくされたら嬉しくなったり、それって大人も子供も変わらないなということを今回の事で再認識させられた。

子供だってそっとしてほしい時もある。

それを学んだ1日だった。


ちなみに、最近Youtubeで、子育てに関するお役立ち情報を発信している方をみつけました。「てぃ先生」という名前で活動している方です。アメリカでのベビーシッターでも大変役にたっているので、子育てにお悩みの方は是非ご覧ください。てぃ先生のビデオを見ながら、色々と「確かに!!!」と思う事がよくあるので、大変勉強になっています。







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