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なるべく背筋を伸ばして、高い位置で息をする。この世界で沈んでいくのは容易なことだから。
私があなたに歩みきれなかったのは、完全に私の中だけでの幸福だった。
あなたが花でなくて良かった。もしも本当に花だったなら、私はあなたを摘み取らんとするこの手を切り落としていただろうし、いずれあなたを枯らしてしまうこの大地を呪って負け戦の中を泥々と生き続けてしまうだろうから。
さようなら、可愛い可愛い私の星。
涼やかな夜の風におやすみ。
あと何度朝が来たって決して醒めない微睡を、貴方の中に灯してあげるから。
車窓を水平に直走る雨粒が流星群みたいで、これに願えばあと何回の明日を手に入れられるんだろうと思ったんだ
知っている。
幼き日のくるくるとした心は大人になって無くなるのではなく、生活の中に押し流され擦り潰されているだけだということ。
悲しい大人が時々取り出して、ぽろぽろ泣きながらお日様にかざしたりしていること。
木陰の海の中を鳩が渡っていく。
渡り鳥になれなかった夢を、ここで叶えているのね。
すっきりとした幸福は少しだけ寂しい、ということを、春が来るたびに思い出す。
日差しが滑らかさを帯びて、音がほんのり遠くなる夕暮れ。
スパイスの香りが鼻をくすぐる街並みに、誰かの母国を愛したくなる。
行き交うものに嬲られて自らを忘れそうになる日々を、なんとか踏みとどまるために。
野良猫に餌を与えない道理は分かっても、合わせた視線を引きちぎる痛みはどうしたって整理がつかない
噴水の側に煌めく粒子
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隙を見た店員のあくび
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少し耳がいたい高架下
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遅れても良い待ち合せ
君が彩る春を切り取る。