すっきりとした幸福は少しだけ寂しい、ということを、春が来るたびに思い出す。
日差しが滑らかさを帯びて、音がほんのり遠くなる夕暮れ。
スパイスの香りが鼻をくすぐる街並みに、誰かの母国を愛したくなる。
行き交うものに嬲られて自らを忘れそうになる日々を、なんとか踏みとどまるために。

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