海から届いた珍妙な土産
生きていると、人並みにお土産をもらう。
お土産は消え物がありがたいが、中にはクラフト雑貨で「これどうするかな…」と自分の生活様式にはどうしても当てはめられない物もある。
そんな時、私は潔く手放してしまう。
贈り物は相手に渡したら、その後どうするかはもらった側の自由だ。
何より気持ちを受け取ることが大事。
その多寡にもよるが、そう考えると贈り物も気楽になるし、使わない物をもらってもありがたい気持ちでいられる。
わたしの伴侶タレちゃんも、よくお土産を買ってきてくれる。
大抵は私の好物を鞄いっぱいに買ってきてくれるが、
あの時は見慣れないものが混ざっていた。
手の中で乳白色に輝く。
角度を変えると光が反射し、うっすら走る縦の線が浮かび上がる。
きれいだ。
以前、海の生物展示で見たクジラのヒゲのようだった。
「もしかして、クジラのヒゲ?」
私たちは、クジラが子育て期に戻ってくる南の小さな島で出会っている。
忘れかけていた、かつてのロマンスが蘇る。
「あぁ、おしいね。エラだよ。前、一緒に石垣島で食べたやつ」
「んっ?」
イットウダイのエラだった。
私は、自分の生活様式に当てはめられない物をもらった時は潔く手放してしまう。
のはずだが・・・どうしたものか。
捨てるに捨てられない。
一瞬とはいえ、ロマンチックにときめいた時間を返してくれという感想だが、イタズラの首謀者に南の地でエラを洗浄され、その上飛行機に乗せられバスと電車を乗り継ぎここにたどり着いたのかと思うと、妙な愛着が湧いてくる。
特に使い道はないが、捨てられないということは、
きっと私の生活様式にあてはまっているのだろう。
大事にしまっておくことにした。
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