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読書感想 ~僕は君の「熱」に投資しよう~

本書は友人との会話の中で出てきて手に取ることを決意した本である。

実はこの本、以前興味を持った本だった。ただし、本の帯に「生き方に迷っている10代・20代」と記載があるうえ、読者の評価でも「20~30代の若手に刺さる…」的な文言が多く、

40歳過ぎた自分が読んで『もう手遅れだ…』と凹むのはごめんだ。

と怖気づき、購入を辞めた。しかし、同年代の友人が読んで気づきを得たようだったので、改めて手に取った。

本書について私が感じたこと(概要)

著者は「佐俣アンリ」さん。ベンチャーキャピタル『ANRI』を立ち上げ。独立系ベンチャーキャピタルとして約120社に投資。ベンチャーキャピタルの頂点を目指し活動中。本書を読んで受けた私の印象は「熱い」人だ。

「挑戦せよ。君はかならず成功する。」と帯に記載がある通り、若者を中心に起業を志すような”挑戦(=行動)”を促す内容が基本である。ただし、私のような40歳以上の年代が、若者が行動を起こすマインドを理解し、行動を起こしやすい環境を整えるという視点でも学びがあると感じた。また個人的には、こういった視点を子育てにも役立てたいと感じた。以下、印象に残った内容をピックアップして説明をさせていただく。

成功の9割は「場所」で決まる

成長をするうえで環境の重要性を「ドラゴンボールにおける”クリリン効果”」として紹介しているのが面白い。

クリリンの戦闘力はZ戦士の中では最弱の部類に属する。しかしクリリンは地球人の中では最強だ。彼を人類最強にしたのは、宇宙最強を目指す異常な集団であるZ戦士という環境にある。宇宙最強の中で切磋琢磨していれば、地球最強になんて、なれてあたりまえなのだ。

つまり、自分を成長させてくれる場所に身を置けば、自ずと成長し成功を収められるというのだ。実際、アンリ氏はその考えのもと、起業家に”起業家が集う場所”を提供している。急成長していく仲間の姿を目の当たりにし、成功者の努力を肌で感じられる環境に身を置くことで、起業家たちの成功を後押ししているのだ。

組織に属していると、既存の環境のいずれかに身を置くことが主となる。そこが成長できる環境か否かは”運次第”と言えなくもない。だからこそ、我々中堅が若手メンバーのために「成長できる環境」を整えることが必要だ。また、仮に今の組織がそれが叶わない環境であるならば、「成長できる環境」を求め、行動するマインドを育てて上げることが、個人の成長支援には必要な視点だと感じた。

怖いけど、僕は「逃げない」/「ご機嫌でいる」責任

投資家は起業家を見守る。本書を通じてアンリ氏がベンチャーキャピタリストとして貫いている姿勢はこのひと言に尽きる。そして、この姿勢は、人を育てるうえで欠かせない視点だとも感じた。

DeNA創業者・南場智子さんと、南場さんへ投資をしたベンチャーキャピタリスト・村口和孝さんのエピソードから、投資家として「逃げない」信条を語っている。

南場さんは36歳で起業。リリース1ヵ月前に外注先が”何もしていない”ことが発覚。この一大事に幹部連中は全員逃げ出した。南場さんが誰もいなくなったオフィスを見渡すと、村口さんだけは逃げずにそこにいた。南場さんが「村口さんは怖くないんですか?逃げないんですか?」と尋ねると、村口さんは「私も怖い。」とだけ答え、そこに居続けた。このエピソードに感銘を受けた。

ピンチの際、早々に諦めて「負けモード」を作り出す人間の空気に影響され、本当に負けてしまうことは多々ある。でもほんとうは、そこから勝負が始まる。詰んでいるように見える状況から「生き筋」を見つけ、生き残ることが必要だ。だからこそ、自分は逃げず「仲間を見捨てない」と。

また、投資家は「ご機嫌でいる」必要があるとも伝えている。新しいビジネスを作るというのは、ハードで面倒くさくて面白くないことだらけ。それでいて失敗する可能性が高く、やり方を間違えれば叩かれる。

「私はこんなに大変なんです!」みたいな雰囲気の人間の空気は伝播し、しんどいことをしんどくやる委縮集団が生まれる。そのような環境から新しいものは生まれない。真剣ではあるべきだが、決して深刻になってはいけない。

この姿勢、人の成長を見守るべき立場の人が心得るべき信条だと感じた。それは、組織の上司・先輩もそうだし、子供達に対しての親もそうだと思う。逃げず、深刻にならずに、横で相手を見守る。私はそういう人間でありたい。

一片の後悔もない生き方をしよう

いま生きているこの瞬間に、先送りしてよいことなんて、ひとつもない。僕にそのことを教えてくれたのは、身近に感じた「死」だった。

アンリ氏の「熱さ」の原点のように感じた文章である。

ベンチャーキャピタリストになる前に所属していた会社で、30代のエネルギッシュな先輩が突然亡くなったそうだ。その経験から、「僕は死ぬんだ」と薄れゆく意識の中で、自分の人生を振り返った時に、後悔なく人生を閉じたいと考え、自分がやりたいことに一切妥協せず、すべてをやり遂げると考えるようになったそうだ。

こういった体験は、決して誰しもが経験するものではないし、可能であれば経験しない方がいい。ただし、こういう意識をもって日々過ごすことは、行動の原動力になると思う。「死」を意識する必要はないが、「この選択に後悔はないか」常に自分に問いかける必要がある。これができているか否か、自問自答もしていきたいし、周囲に問いかけ続け、行動(=成長)を促したい。

おわりに ~君は安心して好きな道をゆけ~

巻末にある読者に向けた言葉がこちらだ。いろいろ述べたが、行動を起こす若者、子供達に対して出来ることはこういうマインドを我々が持つことではないかと感じた。

図らずも自分の経験値からアドバイスという名のブレーキを掛けてしまったり、苦労してほしくないという思いからリスクのある挑戦を奨励していない素振りが出てしまったりする。相手のことを大事に思えばこそ、そういうことをしてしまっていると自覚している点もある。

まずは私自信が「君はかならず成功する」というマインドを持ち、「君は安心して好きな道を行け」と声を掛ける。そういう”挑戦(=行動)”を促す人間になりたいと本書を読んで感じた。

若者に限らず、若者を応援する人々に是非読んでもらいたい。そう感じる本であった。40歳過ぎた自分が読んで『もう手遅れだ…』と凹むのはごめんだ…、なんて思わずに、手に取ってよかった。

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