ノブエイの森

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他ブログからお引越ししてきました。 ただいま過去の記事の引越し作業中です。 どうぞよろしくお願いします。

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    • 八日目の蝉

      買い物から帰ると家の駐車場のところに 小学校低学年くらいの男の子が立っていた。 バックで車を駐車場に入れようとすると よけてくれたが立ち去る様子はない。 私が車を停めるのを待っているようだった。 エンジンを切って車を降りる。 「こんにちは。暑いね」 と声をかけると 「ほら」とアスファルトの地面の方を指差した。 「さっき飛んできて落ちた」 蝉が仰向けに転がっていた。 「しょうがないんだよ」 男の子が教えてくれた。 「蝉はずーっと土の中にいてね、 出てきたら一週間しか生きられな

      • 八朔

        夏だ。日本の夏だ。暑すぎる。 先日街中を歩いているときに、喉が渇いたねという話になり、 「どうする?ビールとか飲んじゃう? それともジュースにする?」 と聞かれて 「本当にごめん。 今日は車で来てないからジュースは飲めない」 と答えたら 「なんか新しい言い方だな」と言われた。 「どーも」と少し照れ笑いすると 「褒めてないから」と言われ、 褒められていなかったことに気付く。 そして私たちは 熱々の餃子と冷え冷えのビールがあるお店に入った。 大人になっても会話はアホっぽい。 高

        • ショートでショート

          今、人生で一番髪が短い。 ずっと髪を長く伸ばしていたが、 行動が何かと制限される世の中になって 急に思い立って髪を切ってからというもの 私の髪はどんどん短くなっていく。 そして短い上に 髪の毛がくるんくるんになっている。 美容師さんに 「くるくるのパーマかけようと思って」と言うと 「どのくらい?」と聞かれて 「バウンディくらいかな」と答えた。 「バウンディ?」「そう。バウンディ」 「あの?」「あの」 「『怪獣の花唄』の?」「あーそれそれ」 「めっちゃ巻くやん!」 という

          ランナーズ

          バスから降りて 眠いなあと思いながら歩く。 横断歩道で待つ。 信号が青になって歩き出すと スーツ姿の男性が走り出し、 そのあとを追うように女子高生も走り始めた。 その2人の後ろ姿を眺めながら 横断歩道を渡っていると 後ろからジョギングの人に追い抜かれた。 私の目の前を3人の人が走っている。 こんなときってやっぱりアレかな。 私も走るべきかな。 走ってみた。 赤いポストのところまで走ってやめた。 2023年4月8日 土曜日

          海とパンと私

          「カレーパンとは」と検索したら 「カレーを具とする調理パンである。」 とWikipediaで出てきた。 そこに 「お腹が空いていても空いていなくても 食べたくなるもの」 という説明を付け加えてほしい。  歩いていたら 「揚げたてカレーパン」の看板を 見かけてしまった。 別にお腹は空いていなかったけど 「揚げたてカレーパン」と言われたら 入るしかないので入った。 そういえば 先日のミスターKのライブの朝目覚めたとき 私はベッドの中で本当に声を出した。 「え、今日やん!」

          海とパンと私

          ベストビールとミスターK

          ミスターKに会い、 声を聞いた夜、 いつも私は素敵な大人の女になったような気持ちになる。 しばらくミスターKの声を聞いていない。 声が聞きたい。 聞きたくてたまらない。 でも聞けない。 いや、聞けないのではなく、 自分の意思で聞かないようにしている。 聞こうと思えばいつでも聞ける。 今、この瞬間にも聞くことができる。 でも私は私の意思で、 彼の声を聞かないようにしているのだ。 なぜ聞かないのか。 例えば 限界まで喉の渇きを我慢して 飲むビール。 ベストな飢餓状態で飲

          ベストビールとミスターK

          ヒラエス

          十月、父とデートをした。 父は、他県から運転して帰ってきたばかりの私に気を遣い 市内のショッピングモールに行こうかと言ったが、 私は「やだ。案内してくれたらどこへでも行くから、 もっとパパが行きたい所に行こう」と提案した。 父は嬉しそうな顔をして希望の行き先を告げた。 私たちは日本海を目指して車を走らせた。 父に道案内をしてもらいながら たくさんのことを話した。 普段は口数の少ない父だが その日の父はとてもよく話した。 お昼はお寿司屋さんに入り、 父は、にぎり寿司を

          maybe tomorrow

          家にいなさいと言われているので家にいる。 「外に出られないから、おうちで踊ったり、 ソファでジャンプしたり、 和室で柔道の受け身の練習とかするしかないよね」 「じゃあその動画送ってよ」 くだらないメッセージのやり取りしながら 家でおとなしく過ごしている。 テレビも新聞もネットニュースも 毎日ひとつのことを流し続ける。 大切なことなので情報は入れたいが、 なんとなくブルーになる。 それでなくても 生きているといろいろあるので 心配したり、勝手に傷付いたり、 不安をぬぐいき

          ばんさめの港

          鹿児島の商店街の中の二階にある昭和の佇まいの店で 私たちは食事をしながらお酒を飲んでいた。 少し肌寒かったが 風が気持ちよかったので、 ひざ掛けを借りて 窓は開けたままにしておくことにした。 窓の外には赤い提灯が揺れ、 その下からは行き交う人たちの賑やかな声が聞こえていた。 どういう話の流れからか ひとりが 「近所のばんさめの港がすごくきれいでさ」 と話し始めた。 聞き慣れない言葉に「ばんさめ」とは何かと聞くと、 「え?わからない?夕方っていうか、なんというか。 んー、夕方

          いつもポケットにサザン

          音楽を持ち歩くなんて、昔はできなかった。 昔は家でしか聴けなかった。 あのレコードに針を落としてから 音楽が鳴り始めるまでの特別感が たまらなかった。 持ち歩くことができない音楽を いつも頭の中で再生していた。 今は聴きたくなればいつでもどこでも 好きな音楽を流すことができる。 大きなプレーヤーとスピーカーは 手のひらに乗るほどの大きさになった。 音楽はいつも私のポケットの中にある。 今日はどの音楽を聴こうか。 やっぱりサザンオールスターズ かな。 サザンの歌詞は

          いつもポケットにサザン

          死ねばいいのに

          よく「死ねばいいのに」という言葉を聞くが この「死ねばいいのに」 に代わるちょうどいい言葉はないかと 暇な私たちは考える。 「死ねばいいのに」 は あまりにも乱暴すぎる。 暇な私たちは案を出し合う。 「ガム踏めばいいのに」 「おにぎりを作るときに 塩と砂糖を間違えればいいのに」 「お気に入りの手袋を片方だけなくせばいいのに」 どれほど理不尽な扱いを受けても どんな裏切りにあっても 何をされても怒らず 全てを許して微笑んでいられるほどの大人には程遠い。 私たちもまだまだだ

          死ねばいいのに

          jellyfish

          「どうしたの?急に。頭おかしくなったの?」 そう言われ笑われたのは 私が「くらげって、死ぬとき消えるのよ」 と言ったからだった。 確かに急に言い出したみたいになってしまったが ずっとくらげのことを考えていたので 私にとっては急なことではなかった。 先日、 くらげは最後は消滅するということを初めて知った。 どんなに大きいくらげでも 必ず最後は消えてなくなるのだという。 なんて潔く美しい終焉だろうか。 生きた痕跡を残さずに死ぬ。 亡骸を残さ

          雨宿り

          本屋で数冊の本を選び、 家電量販店で買う予定のないコンポの説明を受け、 駅のコンコースで行列に並んでクロワッサンを買い 駅を出ると雨が降っていた。 横断歩道を小走りで渡ったところで 雨宿りすることにした。 赤い入り口のコーヒーショップである。 店の真ん中にある 大きな地球儀の周りを囲むカウンター席を避けて 今日は隅の席を選んだ。 周りの賑やかな声から逃げるように イヤホンを耳にして 買ったばかりの本を開く。 小さな店のこの席は私だけの世界になる。 ときどき地

          すぐには帰らない

          小さな花束を3つ抱き 川沿いの道を走っていた。 「仕事帰りにちょい飲みしよう」 と誘われ、 先に終わった私は 他の3人が終わるまでの1時間の間に用事を済ませて、 少し早いクリスマスプレゼントとして 小さい花束を選んだ。 違う色で全く違う雰囲気の花束を作ってもらいたくて選んでいたら 思いのほか時間をとられてしまったのだ。 待ち合わせのビルの下のベンチ目指して 久しぶりに走った。 なんとか間に合い合流し、 ほどよく歩いた場所にある目的のお店に着いたのだが

          すぐには帰らない

          川とつぼみ

          『世の中には主人公になれる人と、なれない人がいる』 という話になった。 私の場合は絶対的な後者である。 目立たず存在感がない。 声も通らない。 平均の中の平均。 それが私である。 なので基本的にいつも 誰にも気付かれていないという前提で動いている。 『花には花の、 つぼみにはつぼみの美しさがある』 石田衣良氏の短編小説集 『1ポンドの悲しみ』の中にある 『十一月のつぼみ』という話の一文である。 こんな私でも 少し花に憧れた時期