川とつぼみ

『世の中には主人公になれる人と、なれない人がいる』
という話になった。
   
私の場合は絶対的な後者である。
 
目立たず存在感がない。
声も通らない。
平均の中の平均。
それが私である。
   
なので基本的にいつも
誰にも気付かれていないという前提で動いている。
   
『花には花の、
つぼみにはつぼみの美しさがある』
石田衣良氏の短編小説集
『1ポンドの悲しみ』の中にある
『十一月のつぼみ』という話の一文である。
   
こんな私でも
少し花に憧れた時期もあった。
   
かつて私のことを、
『誰も知らない場所で
誰にも見つけられることもなく
ただサラサラと流れている川のような人』
と表現した人がいる。
   
結局存在感がないということだな
と思ったが
なんだかとてもうれしかった。
   
このままでいいのかもしれないと思えた。
 
おそらくこの先も気付かれることは少ないだろう。
それでもいい。
志したいのは、つぼみの美しさである。


2012年1月10日 火曜日 古い日記から


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