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『IQ2』ジョー・イデ(著)

亡き兄の恋人だった女性から、高利貸しに追われる妹ジャニーンを助けてほしいと頼まれた探偵“IQ”。腐れ縁のドッドソンを伴い、彼女が住むラスベガスに赴くが、事態は予想よりも深刻だった。ジャニーンは中国系ギャングの顧客情報に手を出し、命を狙われていたのだ。待望のシリーズ第二作。解説/丸屋九兵衛

1巻のラスト、兄マーカスを轢き殺した車をスクラップ置き場で発見した場面から、物語が始まる。
開始6ページで、遺留品と状況から、ひき逃げが事故ではなく、狙って行われた殺人であることを突き止めるアイゼイア・クィンターベイ(IQ)。最初からトップギアでドキドキする。

マーカス殺しの犯人を追う過去話と、マーカスの元彼女からの依頼で、彼女の妹を守る今の話が交互に語られるのだが、実はIQは彼女に惚れており、いいところを見せたい一心で依頼を引き受けるところが実に青臭い。
この青く不純な動機と、ギャンブル中毒者を守るため中国マフィアと命の遣り取りするはめになる依頼のハードさの対比が笑える。
過去編もシリアスだが、ピットブルのしつけだったり、ボランティア探偵業務だったりと、妙に気の抜けた話題を挟んでくる緩急が巧い。

急の方は、中国マフィアだけでなく、メキシコマフィアや高利貸し、資金洗浄業者など、敵がどんどん増えてゆき、過去編、現在編の2つの軸にギャングたちが入り乱れ、導火線が絡まるように緊張感が高まってゆく。

前作に比べると、エロさ、下品さ、バカさが激減しており、緩急の比率が逆になってる感じかな。
内容も、前作は落ちぶれてゆく様を描いていたけど、今作は成長のお話。IQ、ドットソン、ともに自己を見つめなおし、他者との触れ合いで、一皮むけてゆく。

ドットソンといえば、堅気になっており吃驚。奥さんのシェリースは出産間近。そんな中、IQの依頼で手伝ったがために、マフィアに狙われることに。
出産に立ち会うか、ピンチのIQを救うか、といった二択や、シェリースとの出会いの話、IQとの主導権争いなど、めちゃくちゃ楽しい。頭脳では負けているが、女運に関しては圧倒的完勝なのも笑える。それだけに、マフィアの影が忍び寄る恐怖がたまらなかった。沈黙の森みたいな展開になりませんように、と祈りながら読んだ。

どうえげつなく勝つかは読んで頂くとして、ただ勝ってめでたしめでたし、としないラストも素晴らしい。この苦味が癖になる。これで完結でも美しかったが、アメリカでは3巻が出てる様子。楽しみで仕方ない。

ちなみに①
暗黒街のホームズという帯がついてるけど、推理要素は50%以下で、アクション、サスペンス、策略要素の方が高い。エンタメ作品なので、推理モノが読みたい人には向かないかも。

ちなみに②
表紙は1巻のほうがポップでスキだな。

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