見出し画像

エピローグ さよなら、女共!③

「ええ……ごめんなさい。あの子、火傷したんじゃないかしら。まだあのホットミルク、熱かったから」

「……オレにも、分かってたんです。けど、珀があなたを信じるから。千尋があなたをいい人だって言うから。だから、オレは何も言わなかった」

「……この子は、珀の子よ?結婚の話まで捨てたのよ?それが、あなたに分かる?」

「何だかんだ言って、誰よりも珀を愛してるのはあなたですね。でも、それは愛なんかじゃない。あんたがしている事は、ストーカーよりもタチが悪い」

「……あなたも引っぱたかれたい?」

「珀には、言わない。だから、このまま何も言わずに、オレ達の前から姿を消して欲しい。珀は、絶対に千尋を捨てない。もう、オレ達に関わらないでくれるなら、オレは珀には真実を話さない。約束します」

「……」

香夏子さんは黙って席を立ち、店内から出て行った。




「よっしい……」

よっしいってば、香夏子さんに何を言ったの?

今度は、香夏子さんまで出て行っちゃったじゃないの……。

何がどうなってるわけ?



――「玲!お前、頭どうかしてんじゃねえの?!」

「それより!あたし、火傷したってば!顔、痛い!」

「んなの、この寒さで冷やせばもう治っただろ!何、香夏子に喧嘩売ってんだよ!何、言ったんだよ!」

「その子どもは珀の子どもじゃないって言ってやったのよ!珀もバカじゃないの?!何で気付かないのよ!」

「お前……」

何で、オレの子だって知ってんだよ……。


「あ、香夏子」

すぐ後ろを、香夏子が通り過ぎる。

「珀、ありがとう。メリークリスマス」

「え?ちょ、おい!」


「珀!追いかけるな!」

「猛?」

猛まで、店から出てきた。

「お前まで、香夏子に何か言ったのか?」

「早瀬も、もう帰れ。これ以上、珀に嫌われたくないだろ?余計な事言って、珀を困らせるなよ」

「言われなくても帰ります!珀のバカさ加減にはいい加減呆れたわ。その見る眼のなさには、もううんざりよっ!」

玲も、足早に去っていった。


「マジで、意味分かんないんだけど……何がどうなってんの?何で香夏子、玲にホットミルクぶっかけたの?子どもがオレの子じゃない?ってか、何で玲がそんな事知ってんの?マジ、意味不明……」

オレは、頭をくしゃくしゃっと掻きむしる。

「お前は、本当にバカなヤツ。寒いな。ほら、店戻るぞ。他の女なんかほっとけよ。一番大事な女の子が、中で不安な顔して待ってるぞ」

「あ、やべー!千尋になんて言ったら……」

「愛してるって言えばいいんだよ。お!雪だ!」

猛と二人して空を見上げると、パラパラと雪が舞い落ちてきた。



「千尋、雪だぞ!どうりで寒いと思った!」

「珀ちゃん……てか、何がどうなってるの?大丈夫なの?香夏子さんは?玲は?」

「二人共、帰った。もう誰にも邪魔させない。ほら、千尋!外、見てみ!」

「うわあ、本当だ!イブに雪が降った!」

窓の外は、雪景色になりつつあった。


……って、ちょっと待ってよ。

そんなんじゃ、あたしは騙されないっつうの!

さっきのあれは何よ?!

あたし、珀ちゃんの彼女よ?!

何で彼女が蚊帳の外で、他の女達が修羅場繰り広げちゃってんのよっ!


「てか、珀ちゃん!」

その瞬間、よっしいが思いきり振ったシャンパンをポンッ!と開けた。

皆、キャーキャー騒いで……。


あたし達のクリスマスパーティーは、まだまだ終わらない。




―完―

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?