楽しき故郷滞在記Part3
わしの実家は親父が定年後に建てた。
高校を卒業してすぐに就職したから40年ちょいずーっと一つの仕事をしてきた。
それが当たり前だった時代とはいえ、
すごいことだと思う。
見事に息子は真逆になったが…スマン親父。
そんな親父の建てた家にいると安心する。
快適というのもあるけど、親父とオカンに守られているような感じがする。
(まだ生きてるっつーの)
生まれ育ったわけじゃないけど実家なんだなと思いながらグビグビ牛乳を飲み干す親父を見ていた。
さて3日目はそんな親父が生まれ育ったえびの市に向かう。
今年、祖母が99歳で逝去したときは見送れなかったので手を合わせたかった。
愉快なおじ夫婦にも会えるし。
さらにカミさんが「陣の池」という素晴らしく水がキレイな場所を見つけたんだけど、
なんとすぐ近く。
親父たちは遠足でよく行く場所だったらしい。
ついでにカミさんは立ち寄り温泉にも行くので一挙四徳。
まるで幕の内弁当みたいな1日になりそうだった。
えびの市は鹿児島と熊本の県境にある。
主に稲作と農業と畜産が有名で祖父もこの3つを手掛けていた。
なので景色としては遠くに山、真ん中らへんに線路、手前は田んぼみたいな感じで絵に描いたような田舎の景色が広がる。
夏休みの時期に来ると青い稲が風に揺られて海のように見えるのが昔から好きだったな。
娯楽らしい娯楽は何にもないけど…
今のわしならゲームがあればどこでも生活できるから案外よいかもしれないなぁ…
さて…今日も今日とて親父は飛ばす。
高速はずっと110km
オカンいるときはゆっくりでいいのに。
ハイブリッドカーにしてエンジン音があまりしないのもあるんだろうか…
とか考えたりもしつつサービスエリアで一休み。
ブラブラしたらソフトクリームが食べたくなったのでおめざとしていただく。
おぢさんはソフトクリーム大好きなのです。
ついでに少し買い物をしてお金を落としてからえびのに向かう。
宮崎は地震の影響で観光が大打撃を受けてしまったから少しでも足しになればと。
ソフトクリームで血糖値を上げてニコチンを摂取してスッキリしたところで出発。
ひたすら山の中を突っ切るので景色は単調だけどコンクリートが見えないだけで何だか落ち着くのは都会から来た人間だからなのかなぁ。
いやまぁ退屈な景色ではあるけど。
目には優しいよ。とても。
そんなこんなでえびのインターチェンジで降りたら親父の実家はもうすぐだ。
でもその前にカミさんが温泉に行きたいということで立ち寄り湯へ。
野間家は全員、温泉が苦手なのでカミさんだけ入ってわしは近くを散策してきた。
(特にわしは線維筋痛症になってから熱いと痛みを感じるので無理)
裏手にある川沿いをほてほてと歩く。
遠くに見えるループ橋の先は内村光良さんの故郷、熊本県人吉市。
余談だけどグランツーリスモ7にはフォトモードがあって世界中の有名な場所や美しい風景と愛車で写真を撮れる。
その中にこのループ橋があるので持っている方はぜひに。
余談、終わり。
この街で親父は生まれ育った。
そこをてくてく2人で何を話すでもなく歩く。
親父と2人になると昔っから何を話すでもなく記憶に残らないような話をする。
おそらく不良文学青年だった親父にとってこの街はつまらなかったろうなぁ…と思いつつ、
いつも聞けない。
初恋の人は?とか彼女いたの?とか聞きたいんだけど(そこかよ)
なんか聞きづらいまま時が過ぎている。
次こそは聞いてみようと思うけど何だかんだまた聞けないんだろうな。
いや、聞こう。後悔したくない。
次こそは。
「いなかったよ」の一言で終わったりして…
温泉の前でファンタをぐびぐび飲みながらタバコを吸っていたら従業員の方に話しかけられたのでそのまま雑談をした。
かつてのわしならこういう場面に出くわすと、どうにかやり過ごすことばかり考えていたけど、
今は人と話すのが好きなので10分ほど立ち話をしてきた。
車に戻るとオカンが不思議そうな顔をしながら「あなたは本当によく声をかけられるわねぇ…話しかけやすいのかしらね?昔は人見知りだったのにねぇ」なんて呟いている。
オカン、違うよ。
明らかによそ者だから警戒してるんだよ(笑)
不審者にお巡りさんが声をかけてくるのと同じ理屈です。たぶん。
温泉でさっぱりしたカミさんを乗せてひとっ走りすると踏切が見えてくる。
祖母が亡くなったときストリートビューで見ていた景色だ。
車を停めると…おや、犬が吠えている。
2年前にはいなかったはずなんだけど…
とりあえずおじ夫婦にご挨拶して2度目のおめざをいただきつつ、
しばし雑談してから祖母が住んでいた離れに向かう。
うん、いるね、わんこ。
めっちゃ吠えてくる。唸ってはいないけどめっちゃ吠えてくる。
とりあえず祖母の仏壇に手を合わせる。
ようやく会いに来ました。
遅くなってごめんね。
カミさんも一緒です。
優しげな笑顔の写真がいい感じだった。
母屋に戻るときもわんこに吠えられまくったからしゃがんで手のひらをわんこに見せる。
名前はペロちゃん。
「見た目はこんなんだけど大丈夫だよ」と声をかけてそっと撫でたらゴロンと横になって、
いわゆるヘソ天状態。
どうも普段から吠えまくっているのでかまってもらえないらしい。
ピタッと吠えるのをやめてヘソ天してる姿におじは驚いていた。
いやペロちゃんは甘えん坊だから寂しいだけだと思うぞ…お座りもしてるし。
いつまでもペロちゃんと遊んでいたいけど今日のメインは陣の池なのでおじの車に乗って3人で向かう。
その道すがら、おじが双極はたらくラボやミライをてらすラジオのYouTubeを観たよと教えてくれた。
なんで知ってるんだろうと思ったら親父がLINEでシェアしたらしい。
知らないところで親父が応援してくれていることを知り胸が熱くなった。
そんなわしをよそに農道を進むこと10分。
少し森が開けたところに陣の池はあった。
ここは近隣の田んぼの水源でもあり観光地化されていないのでとても静かで心が落ち着いた。
えびのは「ヒノヒカリ」というお米を作っていてこれが抜群に美味しい。
(我が家もずっとヒノヒカリ)
この水の美しさを見ると納得。
さらに少し奥に行くともう一つ池がある。
湧水ならではの冷たさと透明度はこの地域の宝物だと思う。
いつまでも眺めていたい、守っていたい景色だ。
地域の水源なので正直あまり観光客には来てほしくないな。
すぐ隣は田んぼが広がっているしあぜ道もあるから人がたくさん訪れると残念だけど荒れてしまった気がする。
(忍野八海がそんな感じ)
ずっと眺めていたいけどこの後はみんなとランチなのでハゲそうなくらい後ろ髪を引かれつつ陣の池を後にした。
ランチ後、叔父の家に戻ってティータイムを取ることになったのでもう一度ペロちゃんと遊んできた。
甘えん坊の寂しがりやなんだね、あなたは。
だから吠えてたんだね。
というわけでおじに餌をあげるだけじゃダメ!と説教をしておいた。
やはり動物は心が落ち着く。
わしも宮崎に移住したらわんこをお迎えしたいなぁ…
またも後ろ髪を引かれつつペロちゃんにお別れをする。
覚えておいてね、また来るから。
またたくさん撫でてあげるよ。
今度はお散歩しようね。
帰り道。
田んぼを眺めながら将来のことを考えていた。
若い頃は何もないことが退屈だったけど時代が変わりデジタル化が進んだことで不便さが少しずつ解消されている。
もちろん最寄りのコンビニまで歩くと1時間はかかるしスーパーなども遠いという不便さは変わらないけれど、
今のわしはそこにしか不便を感じないかも知れない。
サブスクで映画も観られるし音楽も聴ける。
ゲームもダウンロードで買えるし服もネットで買える。
やはり都会で不便さをブツクサ嘆くより、
端っから不便な田舎で便利さを探すほうが心には優しいし荒むことなく生きていける気がする。
まぁ…どうやって収入を得るかが課題になるけどさ。
それが解決したら移住しよう。
さんざん迷惑をかけてきた両親への恩返しのためにそばにいよう。
そんなことを思いながら車窓を眺めていた。
…だから運転荒いって…親父…。
明日はいよいよ最終日。
戻りたくないけど戻らないとな。
まだやることがあるから。
ってなところで3日目はここまで。
お付き合いいただきありがとうございました。
アディオース!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?