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【新国立劇場 初台アート・ロフト】 『針と糸で繋ぐ未来への扉』展 WEBギャラリーツアー②

劇場内をゆっくりと散策できる”おすすめのルート”で、「新国立劇場 初台アート・ロフト」の衣裳展示をご紹介していく『針と糸で繋ぐ未来への扉』展 WEBギャラリーツアーは、今回が第2回となります。


■前回のWEBギャラリーツアーはこちらから

今回は、【3階西ギャラリー】の各ブースの展示空間や衣裳のみどころと 5階情報センターで体験できる『初台アート・ロフト「みる」「よむ」』から展示衣裳の演目や作曲家にちなんだ書籍、映像作品もあわせてご紹介します。

それでは出発していきましょう!
2階ギャラリー奥にある階段を昇ります。

ブリッジ奥のギャラリーに辿り着くと現れる階段を昇って3階へ


まず皆さんを出迎える大きなサル。今にも動き出しそうな大迫力です!

⑤『魔笛』(1998年初演) サル

美術・衣裳デザイン:へニング・フォン・ギルーケ
作曲:W.A.モーツァルト
演出:ミヒャエル・ハンぺ
衣裳制作:工房いーち/小寺洋子
小道具製作:ザ・スタッフ/HORIO
着ぐるみ:トレヴィソ工房/桑原治男/マツヤ工作所

躍動的なサルの姿を再現するために、特殊なポージングのマネキンを採用。岩場の多い惑星をイメージした空間に仕上げている。この岩のどれかは「椅子」が土台になっているとか。
想像しながらみるのも楽しい。
マネキン制作の裏側を紹介した記事で取り上げた、立膝をつくサルはここで見ることができる。
また両手を挙げた迫力のあるサルも必見。
人工毛に手作業でペイントを施している。舞台上で強いライトが当たっても平面的に見えない絶妙な陰影のつけ方は、やはり手作業の賜物。

■5階情報センターで「みる」

『魔笛』(1998年初演)
美術・衣裳デザイン:へニング・フォン・ギルーケ
作曲:W.A.モーツァルト
演出:ミヒャエル・ハンぺ

公演写真

展示の衣裳は、1998年~2016年まで上演されたミヒャエル・ハンぺ演出の衣裳です。新国立劇場ではこの他に、2018年からウイリアム・ケントリッジ演出でも上演されており、どちらの公演も情報センターでご覧いただけます。衣裳の違いがどのような印象をもたらすのでしょうか。


それでは、隣のブースに進んでいきましょう。
今度は華やかな男女が登場します。

⑥『ホフマン物語』(2003年初演) ジュリエッタ/ダペルトゥット

衣裳デザイン:アンドレア・ウーマン
作曲:ジャック・オッフェンバック
演出・美術:照明:フィリップ・アルロー
衣裳制作:工房いーち

妖艶で魅力的なジュリエッタのキャラクターを視覚的に捉えることができるように、柱やゴンドラにキルティングフラワーをまとわせた華やかなで情熱的な空間になっている。
ゴンドラに溢れんばかりのキルティングフラワーを装飾した。これらの花や蔦も全て手作り。
ジュリエッタのドレスは以前にお届けした「衣裳修復プロジェクト」により、本来の色彩を取り戻している。パイピングをよく見ると、赤とピンクのグラデーションになっていることがわかる。

■5階情報センターで「みる」

公演写真

『ホフマン物語』(2003年初演)
(キャスト)
ホフマン:クラウス・フロリアン・フォークト
ニクラウス/ミューズ:加納悦子
オランピア:吉原圭子
アントニア:砂川涼子

今日ではドラマチックな役どころをレパートリーとしている、世界で最も重要なテノール歌手の一人となったクラウス・フロリアン・フォークト。彼が新国立劇場に初登場となった、2005年11月の公演をご堪能ください。


それでは、次に進みましょう。
続いては、見る角度によって様々なストーリーが垣間見える仕立てのこちらのブースです。

⑦『魔笛』(1998年初演) ザラストロ/タミーノ/パミーナ

美術・衣裳デザイン:へニング・フォン・ギルーケ
作曲:W.A.モーツァルト
演出:ミヒャエル・ハンぺ
衣裳制作:工房いーち/小寺洋子
小道具製作:ザ・スタッフ/HORIO

司祭ザラストロのもと、愛の力で試練を乗り越える2人の姿を表現。
正面からは、ザラストロの試練に立ち向かう2人を見ることができる。
一方、後ろから見ると愛の力で試練を乗り越えた2人の姿が垣間見えるようにマネキンが配置されている。
パミーナのドレスは柔らかい色彩のぼかし染めが施されている。

■5階情報センターで「よむ」

切手によって綴られたモーツァルト伝

『切手が語るモーツァルトの世界』
著:栗田久暉

世界中のモーツァルト関係の切手のほぼ全てが網羅、配列され、目を楽しませてくれる一方で、的確なモーツァルトの生涯を辿ることができる。『魔笛』においては、台本に影響を与えたクリストフ・マルティン・ヴィーラント(ゲーテ・シラーと並ぶドイツの詩人・作家)から、パミーナ、ザラストロ、夜の女王、パパゲーノなど主要なキャラクターや多くのシーンの切手が掲載されており、今までになかった新しい切り口でモーツァルトが語られている。


●BREAK TIME②

ちょっとここで一息しましょう。ギャラリーのこちら側から対岸のブースを見ると、正面から展示空間全体をご覧いただけます。まるで客席から舞台を鑑賞しているかのように、登場人物の仕草や表情、舞台装置など、展示空間全体を見て感じることができるのです。

舞台作品をいくつも見ているような表情豊かなブースを対岸からみる


それでは再び、ギャラリーツアーへと参りましょう!
装飾の美しい2枚のドレスをご覧いただけるブースです。

⑧『イドメネオ』(2006年初演) イーリア/エレットラ

美術・衣裳デザイン:ルイジ・ペーレゴ
作曲:W.A.モーツァルト
演出:グリシャ・アサガロフ
衣裳製作:工房いーち
小道具製作:ザ・スタッフ

織り方の違う2種類のプリーツの魅力を引き出す華やかなブースに仕上げた。
細かなプリーツ加工を施したドレスの裾をブース全体に吊ることで、光に透かされたプリーツの美しさと、贅沢に生地を使用して作られた様を見ることができる。
ブレードで装飾の柄を作るという、手仕事の技術のつまったドレス。肩の装飾も美しい。
2色のブレードでひとつの線を描いたり、2種類のブレードで線を作ることで立体感や陰影が生まれ、装飾に深みを出している。

■5階情報センターで「よむ」

ギリシャ神話はどのように始まったのか

ビジュアル版『ギリシア神話の世界』
著:リチャード・バクストン
訳:池田 裕、古畑正富、服部厚子、池田太郎

ギリシア神話の名で知られる一群の物語ほど奥深く、人々に大きな影響を与えてきたものはない。さらに一連の変化や再解釈を加えた創作活動は一時も休まることなく続き、今日に至っている。人類最大の文化遺産をひとつ生み出した自然的・社会的背景を美しい図版とともに丁寧に描き、生成の秘密に迫り、神々の系譜を明快に解きほぐす。ギリシア神話の魅力を知ることで『イドメネオ』の世界をより深く感じることができるでしょう。


いよいよ、3階西ギャラリーの最後のブースになりました。鮮やかな色彩がブースいっぱいに広がります。

⑨『ナクソク島のアリアドネ』(2002年初演)エコーの大マント

美術・衣裳デザイン:オラフ・ツォンベック
作曲:リヒャルト・シュトラウス
演出:ハンス=ペーター・レーマン
衣裳製作:東京衣裳

オブジェクトスペースは、大きなマントを空間展示のメインとし、
石膏像や小道具には今展の装飾モチーフとなる手作りの蔦を飾りつけた。
かなり大きなマントを染める過程を思うと、単純に鍋で均一に染めるわけではないので、大変な労力だったのではと想像する。見る場所それぞれで柄が異なり、様々な色彩を楽しませてくれる。

■5階情報センターで「よむ」

主だった人物を中心にわかりやすく解説

『図解雑学 ギリシア神話』
監修:豊田和二

異伝異説にあふれるギリシア神話を、主だった人物を中心に整理してわかりやすく解説している。第10章の「テセウスの冒険」では、ミノタウロス退治のために生贄を志願し、迷宮でアリアドネに出会い、島から脱出する”アリアドネ伝説”が細かく解説されている。これを知ればもっと作品の理解が深まるに違いありません。

これで3階西ギャラリーの展示を全てみていただきました。
それでは、対岸の3階東ギャラリーへ移動しましょう。
とっておきの近道をお教えします!

ギャラリー脇の階段を降ります
下まで降りると、中劇場の入口前に出ます
向こう側にある階段へ(矢印参照)
この階段を昇り切ると、3階東ギャラリーです


階段を昇り切ると、いくつものガラスケースが並ぶ廊下にでます。

●BREAK TIME③

バレエ『パゴダの王子』や、オペラ『パルジファル』の舞台模型を見ることができます。こうした劇場ならではの展示もご覧いただくことができます。

舞台装置の模型だけでなく、珍しい関連本も陳列している。

■次回予告

次回はこの先に広がる、3階東ギャラリーをご案内します。
全ての展示を見終わるまで、あとわずか。
まだまだ見応えのある衣裳展示は続きます。どうぞお楽しみに!

■劇場までのアクセス




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