見出し画像

立川 あゆみ/パクチーシスターズ

法人名/農園名:株式会社noca/パクチーシスターズ
農園所在地:千葉県八千代市
就農年数:7年
生産品目:フレッシュパクチーと、規格外のパクチーを活用したペースト、グリーンカレー、クッキー、パクチー餃子(冷凍)、ドライパクチーなどの加工品
HP:https://www.pakucisisters.com/

no.183

40代の女性が新規就農するなら高単価で取引できるパクチー1本に絞ろう!

■プロフィール

 千葉県八千代市の農家に3人きょうだいの長女として生まれる。服飾系の専門学校を卒業後、アパレル会社に服飾小物のデザイナーとして就職。そのかたわらでお笑い芸人としても活動。昼はデザイナー、夜は芸人という生活を送る。

 1995年に職場の上司と結婚後は、仕事を辞めていったん専業主婦となるが、2005年には自宅でフラワーアレンジメント教室「Sopo」を開業。2007年、夫の急逝後は飲食店で勤務を始めるが、故郷の農業の衰退を目の当たりにして一念発起。2016年に両親の土地を借り、パクチー1本に絞って農業を始める。

 規格外野菜が廃棄される現実を知り、2017年からは加工品製造に着手。クラウドファンディングにより資金を調達してパクチーペーストの販売に乗り出し、オリジナルブランド「パクチーシスターズ」を立ち上げる。

 2020年にはECサイトを立ち上げる。テレビに取り上げられたことがきっかけで、9月に直売所を開設。

 一人での直売所運営に限界を感じ、2021年には補助金を利用して製品の自動販売機を設置。同年9月、フラワーアレンジメント教室と「パクチーシスターズ」を運営する「株式会社noca」を設立。

■農業を職業にした理由

 農業を営む両親のもとに生まれ、幼い頃から畑を遊び場にして育ったが、両親からは農業を継ぐことは勧められず、就農を考えたことはなかった。

 アパレル会社でデザイナーとして働きながら、子供の頃からの夢だったお笑い芸人として二足のわらじで活躍。13歳年上の夫と結婚後は、子育てしながらフラワーアレンジメントの教室を開く。

 結婚して12年目、33歳の時に夫が急逝した時には、あまりのショックで、3年ほどは精神的に不安定な状態が続いたが、子供がまだ小学生だったこともあり、家族や周囲に支えられながら地元の飲食店で働く。

 そんななか、生まれ育った地域では、後継者がいない高齢の農家が、70代を目前にしても、トラクターを買い替えて働いているという事実を知って、これまでの恩返しのためにも、両親が守ってきた農地を引き継ごうと就農を決意。

 近隣では、少量多品目の野菜栽培の生産者生産が多いなか、42歳の自分が始めるには何を作るべきか──?と熟考。多品目生産の場合、野菜の種類に応じて、さまざまな機材が必要になるため、投資リスクの負担が大きくなるとして、飲食店時代の経験から、高単価で取引できるパクチーに着目。

 軽量なので、女性の体力にも負担が少なく、首都圏への流通価値も高いなどの理由から、生産品目をパクチー1本に絞って栽培を開始。初めは両親の畑の一部を借りていたが、その後、後継者がいない近隣の農地を借り受けながら、栽培面積を少しずつ広げて、2023年現在は30アールに拡大。

 就農してすぐに、規格外で廃棄される作物を有効活用しようと、フレッシュなパクチーを使ったペーストの開発に着手。オリジナルブランド「パクチーシスターズ」として、ラインナップを増やし、イベントなどにも積極的に参加しながら、6次産業化を展開中だ。

■農業の魅力とは

 まずひとつに、大地のエネルギーをもらえること。

 大地からのエネルギーというのはすごいものだと思っています。農業を始めてからは、ほぼストレスがなく、毎日が楽しい。それは自然と向き合う仕事の大きな魅力のひとつだと思います。

 それからやはり、新鮮なものが食べられるというのも大きいです。

 そしてもうひとつ、市場取引では今はJAが強い状況ですから、今後、“自分の価値を見出して発展させていく”という意味で、農業には大きな可能性、伸び代があると考えています。

 生産者はみな自分の作るものを「美味しい」と思って作っています。もちろん、味の好みは人それぞれですから、パクチーに限らず、トマトやネギなどのメジャーな野菜であっても、食べる人によって美味しく感じるのは異なります。

 同じ野菜でも、私が作ったパクチーは、どこがどれだけ他とは違うのか、「これがいい」という部分を表現することが商品の付加価値につながり、ひいてはそれがブランドの価値に結びつくと考えています。農業にはその可能性があります。そう言う意味で、発展させていくのが面白い、魅力的な仕事ではないでしょうか?

■今後の展望

 デザイン、芸人、農業、加工、販売、自販機の設置など、これまで自分のなかから湧いてくるアイデアをもとに仕事を展開し、経験を積み重ねてきました。

 今後もそれを活かすことを続けるつもりですが、最近はパクチー生産や生産した作物を使った加工品も自ら手がける6次産業についての相談が増えてきました。

 つまり、農業生産物を加工してブランディングするといったニーズは確実に増えていると思います。ですから、今後は少しずつコンサルティング業も展開したいと考えています。

 パクチーは好き嫌いが分かれますから、苦手な人も多い野菜です。そこで餃子やカレーといった食べやすいメニューを作ることで、もっとパクチーを身近に感じてもらいたいと思って開発しました。

 それだけでなく、冷凍の餃子やレトルトのカレーは、賞味期限の面でもメリットが大きいです。商品ラインナップで言えば、ペースト、クッキー、ドライパクチー、グリーンカレー、餃子、アイスまでを展開しています。

 収穫量が多い春と秋に加工食品のストックを作っておくことで、フレッシュパクチーの売り上げが落ちる時期を補填する、という考えです。

 また、概念的なことで言えば、農業者もただ生産・出荷・流通を考えるだけではなく、食材を購入・使ってくれる人たちとのコミュニケーションも大切だと考えています。

 例えば、食事に行くなら自分の野菜を使っている人の店に行きたいし、そういう日頃からのつながりが、結局のところとても大切なんです。それは今後も大切にしながら進みたいと考えています。(記:沼田実季)

#40代で就農
#関東
#新規参入
#経営手法
#経営哲学
#挑戦者
#ユニークな経歴
#SDGs
#Uターン
#生産加工
#直接販売
#注目の農業者
#地域活性化
#六次産業化