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清水 太一/大磯うみのかぜファーム

法人名/農園名:フィールドワーク株式会社/大磯うみのかぜファーム
農園所在地:神奈川県中郡大磯町
就農年数:4年
生産品目:大玉柿「太秋」
HP:https://field-w.co.jp/

no157

町役場の職員が巡回中に出会った大玉柿に衝撃を受ける!

■プロフィール

 宇都宮大学大学院で農業土木を修了後、東京の建設コンサルタント会社に入社し、農業部門に従事。農業への憧れが高じて35歳で帰郷して、大磯町役場に転職。

 農業振興担当職員として産地を巡回中に、大磯町落葉果樹研究会の鈴木教夫会長から、特産の大玉柿「太秋(たいしゅう)」を紹介される。それまで柿にはそれほど興味がなかったが、試食してその味に衝撃を受けたことがきっかけで、本気で就農を考えるようになる。

 役場職員だった5年間、非農家出身者が営農できる道を模索した結果、神奈川県の農業技術センターが開発した「樹体ジョイント仕立て技術(ジョイント栽培)」ならば、苗木定植から3〜4年で早期成園化が可能だと知って就農に踏み切り、2017年、農業や土木コンサルタントと農業の兼業法人として独立。

 鈴木会長から借りた15アールの農地をベースに300株を定植。わからないことは、師匠の鈴木さんをはじめ、地域の先輩農家に聞きながら、現在も成長を続けている。

■農業を職業にした理由

 農業土木技術者として大手建設コンサルタント会社時代に担当していたのは、国や地方自治体などの大規模な事業が多かったことから、農業の現場に近づきたいと思い、35歳で故郷の大磯町役場に転職。

 農業振興職員として果樹を担当するうちに、柿名人として知られる鈴木教夫さんから幻の大玉柿「太秋」の試食を勧められて感動するとともに、柿は古くから日本にある伝統的な果樹のため、技術も確立しており、新規就農者でも挑戦できるかもしれないと注目するようになった。

 神奈川県の農業技術センターが開発した「ジョイント栽培」という新しい農法を知ったことで、定植から3〜4年で収穫できる早期成園の道が開けたことから就農を決意。

 役場の仕事を続けながら、鈴木さんが会長を務める「大磯町落葉果樹研究会」の生産者のもとを訪れ、教えを乞う日々が続いた。5年勤めた役場を41歳で退職した時には、同僚をはじめ、周囲の農家からも心配されたが、短期間で柿生産1本で生計を立てるのは厳しいとわかっていたことから、最初から技術コンサルタントとの二足の草鞋スタイルを選択。

 鈴木さんから借りた15アールの圃場をベースに25アールまで拡大。最終的には反収2トンを目標としているが、収穫量を追求するより、まずは苗木の生育が優先だとしている。

■農業の魅力とは

 前職時代から、いずれは農業に関わりたいと考えていましたが、いざ何の作物を作ろうかと考えた時、イチゴやブドウのようなオシャレな作物には興味がわかなかった(笑)。

 生産する作物が流行に左右されると苦労しますから、野菜で言ったらキュウリのような地味な果物がいいなと思っていた矢先に出会ったのが、地元の特産品である「太秋」です。

 和菓子の世界には、干し柿が甘さの基準という言葉がありますが、柿は奈良時代から伝わる古来種ですし、海外には無いので輸出展開の可能性もあると考えて選びました。

 とはいえ、「桃栗三年、柿八年」という言葉で知られるように、柿の栽培は、経営が軌道に乗るまで時間がかかるのが課題でした。そんな時に出会ったのがジョイント栽培です。一般的な1本仕立てに比べれば、資材費など投資コストはかかりますが、早期成園化できますし、作業効率も良いので、農園設立から4年目の2022年には1トン弱の収穫がありました。

 都心のマルシェに出店した時にも、柿に馴染みのない若い女性から「美味しい!どうやって食べるんですか?」などの反応があったのが何よりも嬉しかったし、子連れや外国人のお客さんにも好評でした。

 納品先の小売店からも「もっと持ってきて」と大人気です。技術コンサルタントとの兼業はこれからも続けるつもりですが、農業の仕事は自然のなかでできますし、すべて自分の責任・判断で決められるところが魅力ですから、この先もっと農業の売上を増やしていきたいと思っています。

■今後の展望

 大秋柿を作っている農家はまだ少ないため、市場に出回らず、「幻の柿」とも言われています。

 今の若い世代には、お金を出して柿を買う人も減っていますが、太秋柿は上品な甘さでみずみずしく、シャキシャキとした歯触りは梨のようで、柿に対する固定概念を覆す美味しさです。ぜひ、柿の苦手な人にも知って欲しいと思っています。

 そこで栽培面積を拡大し、全国販売することで、産地を盛り上げる営農モデルを作りたいと思っています。そのために贈答用パッケージを作り、インターネット販売も始めました。

 これからは傷モノなど訳あり商品を売る方法も考えていかなければなりません。すでに平塚市のカフェ「ダイニング カプリス」さんとのコラボレーションで、「大玉柿とほうじ茶のプリン」というスイーツの商品開発を進めています。

 また、太秋柿も1994年に生まれた比較的新しい品種ですが、今はほかにも新しい優良品種がどんどん開発されていますから、この先、新品種にもチャレンジしていきたいと思っています。ジョイント栽培なら、それが可能です。

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