本は人生のおやつです!(2)
本は人生に彩を添えてくれるもの、という意味合いで、尊敬する書店の名前を拝借したこのシリーズ。ちなみに前回はこちら。
今回は「小説と地域活性化」について、最近読んだ本から感じたことを書いてみようと思います。
「京都寺町三条のホームズ」という小説をご存じでしょうか。北海道出身、京都市在住の望月麻衣さんにより、2015年以降双葉社から出版されているシリーズ小説です。
内容はざっくり言えば「ホームズ」と呼ばれる骨董品店の大学院生が、数々の相談に対して現場の状況から判断し、事件を解決する様子をアルバイトの女子高生視点で語られるライトミステリー小説ですが、この小説は他の「一般的」な小説とは異なるある特徴があります。
それは、物語の舞台となる「京都」の様々なスポットが実名入りで出てくることです。
仁和寺、先斗町、貴船や鞍馬といったメジャーどころから、物語の舞台である寺町商店街や下鴨さんの糺の森(このあたりも最近は有名になってきましたが)、嶋原や上七軒の花街から各通りの名前まで詳細に描かれています。
普通ならここまでマニアックだと京都に縁がない人は飽きてしまうこともありますが、この本はそうした人も取りこぼしません。ヒロインで一人称の女子高生が埼玉からの転校生、すなわち「ヨソモノ」であるという設定であり、京都の町には初心者で、知らないことはすぐに京男(本作の表現を用いるならちょっといけずな「京男子」)のホームズが答えてくれます。だからこそ、京都出身や京都在住の方以外でも物語がすんなり入ってくる。そして京都への興味を掻き立てる。僕自身も京都に関わる人の一人ではありますが生粋の京男ではないため、まだまだ知らない地名や事象も恥ずかしながらたくさんあります。この小説を読んでいると、「これどこ!?」という新たな気づきや「あ、よくとおる道だ!」という親近感等、通常の小説では考えられない楽しみ方をすることができます。だからこそ、京都の再発見ができるし、京都に縁のない人は「清水寺!」「八坂神社!」といった王道コース以外にも「あ、今日15日だから百万遍知恩寺の手づくり市のぞいてみようかな」というコアな楽しみ方ができるようになります。
なんとなく表紙デザインや登場人物の特性から、若い女性を主なターゲットにしてるのかなと思いますが、男性諸氏ももちろん楽しめる作品です。
さて、この「地域の実名を出す」手法、実は地域活性化の手段にもなりうるのではないかと。
僕自身は地域活性化に興味があるのですが、この小説を読むうちに「京都への親しみ・愛着」がさらに深まるような気がします。観光学の用語を使うなら「コンテンツツーリズム」になるのでしょうか。小説の舞台巡り(聖地巡礼というのでしょうか)もできますし、知らない土地に興味を持つことができる。他には有川ひろさんの「阪急電車」や「県庁おもてなし課」なども、広い意味ではこの種類に入るのかもしれませんが、今のところ「地域の詳しさ・興味が湧く強さ」の点ではこの「ホームズ」が一番かなと思います。
もちろん、この物語の舞台が誰もが知る観光地、京都であるということも前提の一つかもしれません。どこかわからない場所を舞台にするよりは一定の効果が見込めるのかもしれません。この辺りは今後も様々な小説を読む中で考えなければと思いますが、地域を盛り上げる手段として「小説」もありなのかもしれないと感じた本でした。
気が向いたら試しにnoteで「地域」を舞台にした小説を書いてみようとも思いますが、それはまた追々。上記の作品もまだ一巻を読んだところで、二巻以降もちょくちょく寝る前に読み進めていきますので、何か感じることがあれば何らかの形で共有しようと思います。
それではまた。
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