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超ショートショート

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超ショートショートとは、短くて不思議な物語。 「誰でも必ず小説が書ける超ショートショート講座」という本を読んで 「僕にも作れそう…!」そう、思いnoteで投稿することに決めました…
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#超ショートショート

マグロ自転車【ショートショート】#38

マグロ自転車【ショートショート】#38

出勤のため最寄り駅へ向かうのためバス停へ歩いていると
1台の真っ赤な自転車が猛スピードで僕の真横スレスレを通り過ぎて行った。

「危ないなぁ…」と思いながら自転車を目で追いかけていると
その自転車は赤に変わったばかりの信号にも臆することなく走り過ぎる。
さらに停車していたバスに乗りこもうとする
乗客とバスの隙間をも駆けて行った。

ちょうど乗りこもうとしていたご婦人は「ぎゃあ〜」と
仰向けにのけぞ

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夜逃げホテル【ショートショート】#37

夜逃げホテル【ショートショート】#37

「もう夜逃げするしかないな…」
男はそう心に決めると、早速準備に取りかかろうと
目の前についた物を掴もうとしたが
すぐに動きを止めた。

「せやけど、夜逃げって…どないな準備したらええんや?」
ポケットに入れていたスマホを探りながら部屋の隅に腰を下ろしす。
「まずいっぺん調べてみるか…夜逃げスペース準備と」
検索結果をスクロールしていると、ある謳い文句に目が止まった。

<<今すぐ夜逃げしたいあな

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命で買いもの【超ショートショート】#35

命で買いもの【超ショートショート】#35

深夜の時間帯にだけ開くスーパーマーケットがある。
このお店にはありとあらゆるモノが売っているが、
全てお金では買うことができない。

ここでは自分の寿命…つまり命の時間と引き換えに
モノを手に入れることができる。

例えば、もやしなら30円ではなく30秒、
アルコール飲料350ml缶なら300秒分の命の時間を切り売りし
購入するといったシステムだ。

もちろん自分の寿命がいつ尽きてしまうのかは当人

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紅葉獅子 #34

紅葉獅子 #34

紅葉シーズンになると賑わう動物園がある。
そこには秋になると立て髪が紅葉する雄ライオンがいるからだ。

よく白変種の動物がメディアなどで話題になっているが
このライオンは、特に珍しいと瞬く間に話題となり、
ライオン目当てに新たな紅葉スポットとして多くの人でごった返していた。

終えるような赤色が勇ましい百獣の王は
経営難だった動物園の救世主となった。

(完)

↓今回の作品ができるまでのワークシ

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祭りの配達 #33

祭りの配達 #33

祭りの配達は、新型ウイルスの感染症拡大により
気軽に旅行が出来なくなっていた頃に誕生したサービスだ。

有名な祭りから地元の人しか知らないものまで、
全国各地で開催される祭りの賑わいを自宅で楽しめる。
このサービスは人混みに巻きこまれることなく楽しめるとあって人気だ。

ただ、顔を赤らめたくなるような奇祭も含まれているので
家族やカップルで楽しむ場合は要注意だ。

(完)

↓今回の作品ができるま

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ベスト謝罪賞 #32

ベスト謝罪賞 #32

今年も「ベスト謝罪賞」が発表された。

ベスト謝罪賞は
近年、社会的な地位のある
個人や団体などが起こした
社会的信用を失いかねない出来事に対して

説明責任を果たさない、時を過ぎるのを待つ、
間違いを認めないなどの
対応が散見されるようになり、

これが世間一般にまで影響が及ぶのを危惧した
社団法人・日本謝罪協議会が
謝罪意識の向上を目的に設立された。

この賞は、謝罪までの
「スピード感・文言

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卵の就活 #4

卵の就活 #4

ある日、産み落とされた卵。
この卵は目標を持っていた。
それはオムライスになること。

しかし、今僕は毎日のように
通販番組でジェルクッションの上に置かれ、
その上から人間のお尻に踏まれるという仕事をしている。

こんなはずじゃない...。

「オムライスになると
みんながキラキラと目を輝かせながら出迎えてくれるわ」
そう教えてくれたお母さん

今から急遽、助っ人として
ボディービルダーの手で卵を

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孤独銀行 #3

孤独銀行 #3

孤独銀行は
「孤独」の預け入れ・貯蓄・貸出しなどを
行う機関である

日本にも孤独担当大臣なるポストが生まれ
国をあげて「孤独問題」を
解決しようとする動きがある中で、
この銀行は少し変わった動きを見せている

そのひとつは
不寛容社会から生み出され続ける
「ネガティブな孤独」を回収・運用し、
「ポジティブな孤独」へと変えていくというもの

ネガティブな孤独が引き起こす問題に
歯止めをかけようとす

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喫茶ふとん #2

喫茶ふとん #2

日本経済を支えるオフィス街に
「喫茶ふとん」という眠ることができる喫茶店がある。

薄暗い店内は、
昼食を済ませたビジネスマンやOLで静かに賑わっている。

ここに来れば、午後から気持ちよく働け
生産性が上がるというのが口コミで広がり
静かに人気を呼んでいる。

このお店には、喫茶店には 欠かせない飲み物コーヒーは置いていない。
その代わり、店主こだわりの眠りの質を高めるという
飲み物や食べ物が充

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消える小説 #1

消える小説 #1

忙しい現代人へ新たな読書体験として
“小説レシート”なるものが誕生した

文字通りレシートに書かれたラノベよりも短い小説
物語の内容は買い物をした お店によってさまざま
どんな小説と出会うかわからない

ただ、感熱紙で書かれているため
時間が経つと消えてしまう

ポイントは貯まらないけど
優しさが貯まっていく 儚い小説

(了)