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ベスト謝罪賞 #32

今年も「ベスト謝罪賞」が発表された。

ベスト謝罪賞は
近年、社会的な地位のある
個人や団体などが起こした
社会的信用を失いかねない出来事に対して

説明責任を果たさない、時を過ぎるのを待つ、
間違いを認めないなどの
対応が散見されるようになり、

これが世間一般にまで影響が及ぶのを危惧した
社団法人・日本謝罪協議会が
謝罪意識の向上を目的に設立された。

この賞は、謝罪までの
「スピード感・文言・姿勢」とあわせて
国際謝罪委員会が発表する
「謝罪におけるトレンド」などを参考に
その年に最も優れた謝罪をした
個人および団体に贈られる。

表彰式が行われる都内某所には
政治・経済、学術・文化、スポーツ・芸能などから
選出された人物たちが集っていた。

彼らは、
不倫、パパ活、恐喝、飲酒運転、
当て逃げ、セクハラ、パワハラ…など
多岐にわたる不祥事を起こし
公に向けて謝罪を済ませたものの
中には誹謗中傷などの実害を受けた人物もいる。

舞台上で表彰式の開演を待つ彼らは、
とても不祥事を起こした人物とは思えないほどに
清々しい表情だ。

SNS上では大方の予想で
「某著名人のドロ沼不倫」が
受賞するだろうと考えられていた。

というのも愛妻家というイメージを打ちだしながら、
何年にもわたって計画的に不倫を行っていたことが発覚し、
連日ワイドショーでも恰好の的にもなっていたからだ。

その後、彼は動画配信サイトに
涙を流し地面に何度も頭を打ちつけながら
謝罪をする姿を撮影した動画をアップ。
向こう1ヶ月間、世間はその話題で持ちきりだった。

ある謝罪の専門家は言う。
「彼が行ったことはダメなことですが…
 あの謝罪は素晴らしかった。スタンダードな謝罪でありつつも、
 きちんと個性を発揮できていましたね。」


「くだらねぇ・・・」
そんな呟きもSNS上の情報の波に
すぐにかき消されていった。

(完)

↓今回の作品ができるまでのワークシート

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