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400字程度で書かれた小説たち。ライフワークであーる。 2020年4月11日より2023年12月31日まで 「なかがわよしのは、ここにいます。」(https://nkgwysn.…
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2024年7月の記事一覧

【400字小説】デュワデュワ

【400字小説】デュワデュワ

目覚まし時計が鳴り止まない。仕事は7時から。500食の弁当が待っている。降り積もる雪にハマってしまった軽自動車のように、脱出困難。スマホのアラームが追い打ちをかける。起きないわけにはいかない。もう6時半を過ぎているじゃないか。

モッサリとふとんを抜け出て、勢いを出して洗顔、歯磨き。ヨーグルトも食べている暇がない。救いはハゲているからヘアスタイルをキメる必要がないこと。玄関の鍵を閉めて、チャリにま

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【400字小説】Like a Virgin

【400字小説】Like a Virgin

「夕日がきれいだね」って告白したつもりが、あなたは漱石も知らないから、「おっきいねえ」って呑気に返したんだ。それどころか「あそこで誰か待ってる人、鎮座DOPENESSじゃない?」ってあり得ないことを言う。逆光で顔を確認できない。

『レザボア・ドッグス』を見に行く。デートには不向きかはあなたが決めてくれていい。ボクの大好きな映画だから気に入ってくれるといいなと思うなんて、涅槃にはほど遠い。新宿駅南

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【400字小説】TA・SHI・KA・NI

【400字小説】TA・SHI・KA・NI

「お前のはラップじゃなくてダジャレ。もしくは親父ギャグ」だってアツシに言われて、YZERRの気持ちがわかった。グゥの音も出ないってああいうことを言うのか。レクイエムだと自分のラップを称したバダサイは天才なんだ。パクリすらもできないわたしはYZERR以下。

「東京ドームでライブって最早ラップグループじゃなくね?」と素直な感想をアツシは口にした。そりゃそうだ、ラップははみ出し者の芸術だ。東京ドームク

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【400字小説】別れの曲が、聞こえている。

【400字小説】別れの曲が、聞こえている。

雨の日に猫が逃げた。わたしはグレープフルーツ食べてた。網戸の隙間から脱走したおしりを認めて、追いかけようと立ち上がったついでに、グレープフルーツを落とした。白砂糖が散らばる。でも、それどころじゃなくて、猫の名前を叫んだ。路地を小学生の集団が傘差して歩いていた。わたしの絶叫を聞いて笑っていた。必死な姿って笑えるんだろうな。テレビはNHKの地方ニュースが終わったばかり。笑福亭鶴瓶が散歩する映像の音が部

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【400字小説】boy meets boy of boy

【400字小説】boy meets boy of boy

あの夏だけ交錯。

若里公園の芝生が青かった。子どもらがボールを追いかけていた。コンサートホールのガラス張りの壁に向かって踊る若者たちがいた。太極拳をする集団は怪しさはなく、爽やかなくらい。コーラがベンチの下で倒れていた。シュワシュワしてたからまだこぼしたて。きみのTシャツに脇汗。パープルカラーの半ズボン。

顎に少しだけ髭を生やしているから、からかったんだ。すると怒るどころか嬉しそうに笑っていた

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【400字小説】ミステリー・ラブ・ファンタスティック

【400字小説】ミステリー・ラブ・ファンタスティック

鬱になって3ヶ月、家を出ていない。毎晩あの人が夢に出てくる。結婚したかった、あの人と。職場の同僚だった、でも、結婚して退職するんだ。ついでにオメデタだそうで。

それを小耳に挟んでから出社していない。今夜はあの人の送別会だった。その模様の写真が同僚から送られて来て、あの人が花束を抱いて、顔が涙で化粧崩れしているのに、泣き笑っているのが、美しかった。別れは一人一人にハグしてサヨナラしたそう。だったら

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【400字小説】超*サマーヌード

【400字小説】超*サマーヌード

明るいのに堂々と下着姿になったあなたは強かった。「早く脱ぎなよ」と急かされて、いもっぽかったな、おれ。さすが3コ年上は違うなって、制服を脱いだんだ。

「チラチラ見てたでしょう」と愛撫している最中に言われた。バイト先の先輩、それが彼女。忙しいってのに、にこにこ接客するその姿に惚れていたんだ。でも、おれにだけ見せてほしい、笑顔。「誰にでもやさしんスね」と胸を掴んでいた手を休めた。「手を動かせ」ってお

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【400字小説】ChatGPT is Dead!

【400字小説】ChatGPT is Dead!

夜の国道を眺めている。ヘッドライトが走り去る。行く先はちりぢり。テールランプが不規則に光る。赤信号は見えない。外に見える大型中古車店の前には超*巨大な観音が立っている。

我々はChatGPT。スピーカーから流れるカントリー曲はどれも聴いたことがない。調べればわかること。死んだコービー・ブライアントの亡霊がこのステーキ店の窓ガラスに映り、美しいダンスを見せている。その向こうに、ぼやけて見える景色は

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【400字小説】斬りっぷり

【400字小説】斬りっぷり

厨房の奥で延々と野菜を切り続けるあの人の横顔をカウンターから見つめている。菩薩のような柔和さを携えた表情。永遠に切りまくるので悟りの境地。食堂に客がひっきりなしにやって来ては、ヒレカツ定食を頼んで食べて去って行く。

わたしは2時間前からそこにいて、ビール、日本酒をちゃんぽん。つまみは自家製の惣菜を。ポテサラ、しじみ汁、カニカマなどを少々。取材される前も忙しかった店で、露出後は大団円を迎える花火の

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【400字小説】水玉戦法

【400字小説】水玉戦法

国道を横断している際に、車がやって来て慌てたわたしは転んで、そのまま牽かれた。運悪く死ななかったよ。カラフルな水玉がクッションになったの。

「意味がわからない」とあの人に小説をこてんぱんに言われたけれど、これがわたしの信条だからやめない、やめない。むしろあの人の感性を疑った。

そんなど~でもいいことを倒れた青い空の下でなぜか思い出して、水玉が弾けるたびに心臓がドキンとして。あの人は黒縁眼鏡の見

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【400字小説】生クリームの湖にダイブ

【400字小説】生クリームの湖にダイブ

あなたと抱き合うのは体がベッタベタになるから好まない。裸になればあの3万円の腕時計を思いきって買えるはず。30万円のサングラスしてるあなたの気が知れない。お金持ちなのは正直魅力だけれど、言い寄られるこっちの身にもなってほしいな、拒否感。

ユーガッタマネーで構わない、アイガッタソウルしたい。わたしは幸せにはならない。お金とかセックスとか二の次で、わたしは絵を描き続けるの。《楽しいから描く》がわたし

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【400字小説】きみがわるい

【400字小説】きみがわるい

貴美は顔面蒼白で「あなたは気が狂ってる」って震えながら言うから、わたしは傷つかなかった。飲めないジャック・ダニエルを気取ってさ、痛々しい。

「あなたの書いているのは小説じゃない」って突き放されたこともあったっけ。あの時は怒鳴ってしまったけれど、今になると大バカだったなって反省してるよ。頭に血が上ったことにじゃなくて、貴美のセリフは貴美の主観だから、わたしの主観とは何も関係ないってこと。わたしはわ

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【400字小説】地球じゃない

【400字小説】地球じゃない

あの世界の終わりはあなたと迎える。もう終焉に向かっている! もしかして、もうエンドロール? あなたと惑星の果てまで逃げよう。

音楽だけが世界を救うんだって信じていた。ギターを鳴らしながら眠ってしまった。気がついたらギターを抱き締めて寝ていた。浮気! あなたは知らん顔?

プルーデンス・ファローに会えたのは夢の中で。そこから戻ってきても戦争は終わっていなかった。ジョン・レノンがいたらって嘆く。ボブ

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【400字小説】精神科病棟に入院したきみ

【400字小説】精神科病棟に入院したきみ

好きだったよ、繊細なきみが。だから、わたしは入院したって聞いた直後に、駆け足で見舞いに行った。「やあ」でも「こんにちは」でもなく、「ダウンしちゃった」と第一声に、きみが笑った。弱々しくて泣いてしまった。「どうしたの?」って、頭をよしよししてくれたきみ、逆じゃん。

面会所の窓ガラスの越しに見える中庭が爽やかで、様々な人が笑い合っていた。ほがらかに活気があって、でも全員病んでいるんだなって偏見のある

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