【400字小説】デュワデュワ
目覚まし時計が鳴り止まない。仕事は7時から。500食の弁当が待っている。降り積もる雪にハマってしまった軽自動車のように、脱出困難。スマホのアラームが追い打ちをかける。起きないわけにはいかない。もう6時半を過ぎているじゃないか。
モッサリとふとんを抜け出て、勢いを出して洗顔、歯磨き。ヨーグルトも食べている暇がない。救いはハゲているからヘアスタイルをキメる必要がないこと。玄関の鍵を閉めて、チャリにまたがる。
今年の夏も殺人的に暑い。朝から汗だくで職場に滑り込みセーフ。寝坊ギリギリだったことは誰にも悟られることはない。ロッカールームで気になっているサトミ先輩と一緒になる。声をかける勇気がなくて、中学生かと自分にツッコむ。おはようございますとだけ言えた。なぜかサトミ先輩が「あはは」と返した。それで姿見で確認すると顔に寝癖がついていた。始業のベルが鳴る。その顔のまま、朝礼に出た。出来たての唐揚げの匂いがしている。
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