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宇宙を見渡す窓を開こう。#立冬「一瞬の宇宙」

こんにちは。広報室の下滝です。
いよいよ日差しも弱まり、日が短くなってきました。冬の訪れが感じられる日々ですが、空気が澄んで夕空や夜空の星がきれいに見える頃ですね。

今回はそんな美しい夜空をはじめとして、世界中の風景を撮影する写真家KAGAYAさんのフォト&エッセイ「一瞬の宇宙」をご紹介します。

写らないけれど、色あせないエピソード

ツイッターなどのSNSでKAGAYAさんの写真を見たことがあるという方も多いかもしれません。

現実とは思えないような幻想的で美しい写真の数々。
思わず、え、これって本当にこんな景色があるの?と尋ねたくなるような眺めを、彼はどのように探し、見つけて写し撮ってきたのでしょうか。

本書にはその内容や、撮影に至るまでのこぼれ話がたくさん詰まっています。

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撮影の中で生まれた「一本桜」との絆。
天候の条件が合わずトラブル続きの中、周囲の助力によってたどり着いた、地上にある宇宙「ウユニ塩湖」。

「ザトウクジラ」との出会いと、そのユニークな性格。
月夜に浮かぶ「虹」や、妖精の手助け(!?)で目にすることができた奇跡の「オーロラ」など。

世界を巡る写真の旅。一枚の写真に、こんなにも優しくて思いがけない出来事が隠れていたのかと驚かされます。
KAGAYAさんのいきいきとした語り口と、紆余曲折の末に撮られた写真の数々をぜひ楽しんでみてください。

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幻の橋で撮る幻の夜空

本書の中で私が最も心を掴まれた写真は、宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」の世界を追いかけて撮影された、北海道の「幻の橋」と呼ばれる廃線での一枚です。

最初に訪れてから年月が経ち、カメラの性能が良くなったこともあっての再挑戦。
1年の中でもわずか数日のタイミングを狙って撮影された星空には、今にも飛び立つ銀河鉄道が見えてくるような気がします。

画面を通して、カメラを構えたKAGAYAさんの興奮がこちらにも伝わってくるような、美しく雄大な写真。
こんなにも美しい光景が日本にあるのだと、胸が熱くなり、テレビの華やかな映像に慣らされてきた心に突き刺さるようでした。

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夜空は“宇宙を見渡す窓”なのだというKAGAYAさん。

夜空の写真を撮ることは、時空を超えてきた星の光をつかまえて、“一瞬の宇宙”を切り取ることだという考え方に、ロマンを追い求める真摯な人物像が見える気がします。

そして、そうした考えを宿しているからこそ、彼の写真の美しさは際立っているのかもしれません。

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いつか土星の環を間近で撮りたいけれど、生きているうちには叶わないだろうから月に行きたい、でもそうなるにもまだ時間がかかりそうだから、それまではこの惑星地球をくまなく巡っていきたいと語るKAGAYAさんは、きっとこれからもたくさんの美しい世界を発信し続けてくれるはずです。

彼が月に行ったらどんな写真を撮るのだろうと、想像するだけでワクワクしますが、それはまた未来のお楽しみですね。

寒い日には温かな飲み物を片手に、普段何気なく見上げている夜空が“特別な”ものに見えることを教えてくれる写真の世界に浸って、長くなってきた夜を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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-今回のここに注目!-
「変わっていくことは美しい」
万物は流転していき、今この一瞬を過ぎてしまうと、同じ眺めとは二度と出会えません。だからこそ、変わっていく一瞬を切り取った写真は私たちを惹きつけるのでしょうか。

時の経過を嘆くのではなく、過ぎていくことに美しさを感じながら日々を過ごしていきたいものですね。

■一瞬の宇宙

著者:KAGAYA
出版社:河出書房新社
定価:本体1600円(税別)
単行本:167ページ
ISBN:9784309027036

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