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見知らぬ他人と住むことも悪くない、と気づかせてくれた寮生活
わたしが滞在している学生寮には、わたしの通っている語学学校だけでなく、市内のあらゆる大学・語学学校に通う留学生が集まっている。
今のところ、日本人はひとりも見かけていない。
他の学生とは、片言のフランス語で話している。
◇◇◇
初めて寮に着いたのは夜で、へとへとだった。
12時間のフライトのあと、3時間も空港で電車を待ち、待っている間に英語でレポートを書いて、電車の中でぐっすり寝こけてしまい、あと一歩で乗り過ごすところだった。
駅前でタクシーに乗り、もうこれで一安心、と思っていたら、
どの建物なんだい?
運転手に言われて窓の外を見ると、たくさんの建物。
てっきりひとつのマンションみたいな感じだと思っていたのに、広い敷地内にAからHまでの建物があった。
え、えーと、わたしも、その、この住所としか言われてなくて
運転手はフームと唸ると、窓を開けて、歩いていた学生を呼び止めて、わたしを受付まで連れていくよう頼んでくれた。
案内してくれた学生さんは、受付のあとも、わたしの部屋がある建物まで連れてきてくれた。
マックを買いに出ただけなのに、こんなことになるなんてねぇ
にこにこと笑う彼女を見て、「こんなに親切な人にいきなり出会えて、ラッキーだったなぁ」と思った。
わたしの部屋は3階なのだけど、スーツケースを無理やり持ちあげて階段を登ろうとしたら、通りかかった男性が「何階まで?」と運んでくれた。
わたしのスーツケースはとっても重たかったはずなのに、3階まで一気に運んで、「じゃあね」といなくなった。
部屋に入ったわたしは、み、みんな爽やか…やさしい…と感動していた。
そんな親切がこの街では当たり前のことだと知るのは、もう数日たった後の話だ。
◇◇◇
わたしはずっとひとり暮らしで、春からはパートナーと暮らす。
だからこれは、もしかしたら最初で最後の寮生活だ。
夜中に他の部屋から声が聞こえるのも、小さなバス・トイレも、共用キッチンで料理するのも、適応できるか不安だったけれど、住んでみたら意外と平気だった。
他の寮生と少しずつ知り合うごとに、寮が色づいていくような感じがする。
見知らぬ他人と住むことも悪くない、と気づかせてくれた。
短い寮生活だけど、最後まで楽しく過ごせるといいな。
最後までお読みいただきありがとうございます。 これからもたくさん書いていきますので、また会えますように。