サービスエリアで事件は起きない

サービスエリアの雰囲気が好きだ。
そこには世の中の喧騒とかそういった空気は一切感じない。
人々が目的に向かう道中、腹が減ったから寄る、尿意を催したから行く、ただそれだけなのである。
彼らはそこにいるようでそこにいない。
心は目的地にいるのである。
目的地まであと何分か、おみやげは何がいいか、電話一本入れるべきか。
常に先のことを考えていて現在という空間はそこにはない。
サービスエリアで恋をしたり、勉強をしたり、行事に力を入れたり、ボランティアに勤しむことはない。
だからいいのである。
僕は車から降り、栃木の山を見上げた。
人もいない、家もない、電線もない、感動も特にない。
サービスエリアで事件は起きない。