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忘れられない映画体験。その時みんなは1つになった


毎日note更新19日目。

映画館に行きたい。

今とてつもなく映画館に行きたい。

現在、映画館自体はやっているのだが公開延期の影響もあり観たい映画はあまりない。

でも映画館に行きたい。

僕は映画自体も大好きだが、映画館も大好きだ。

映画館で観る事により特別な時間を体験を与えてくれる。

何より「知らない人達と大きなスクリーンで全員で一緒の映画を観る」

やはりこれが素晴らしい。

僕が生活してる中で最も好きな時間の1つが映画館にいる時間なのだ。

今日は以前僕が映画館で体験した「みんなで1つの映画を観た!」と思えた出来事について書いていきたいと思う。


8年前。

その日僕は時間を持て余していた。

何もやる事はないが何かしたい。

そんな状態だった。

しばらく考えた結果、1つの案が出た。


「全く観るつもりじゃなかった映画を観に行こう!」


普段ならまず映画館で観る事のない映画、そんな映画を今日は見に行こう。

映画館に行ってからラインナップを見て普段なら1番観る事が無さそうな映画をあえて選ぶ。

何か面白そうだ。

ワクワクしてきた。

僕が今まで食わず嫌いで観る事がなかったいい映画に出会えるかもしれない。

それまで持て余してた時間が急に輝き始めた。


映画館に入りラインナップを見て僕は即決した。

「これだ!」

何かその映画が光っているように見えた。

すぐにチケットを買い、劇場の中に入った。


席はガラガラだった。

僕以外で座っていたのは4組。


まずは1人で座っている気弱そうな大学生。

すごい映画が好きそうだ。

(映画を観る事だけが僕のつまらない学生生活の唯一の楽しみなんです)

そんな彼の心の声が聞こえてくる気がする。

実際に聞こえたわけではない。

でもそんな気がする。

そんな彼が選んだこの映画、面白そうである。


そして次にちょっと離れた所に座っているコワモテのおじさん。

パッと見た感じ、1人で映画なんて観に来そうにないタイプである。

という事は逆に映画がよっぽど好きなのだろうと考えられる。

コワモテおじさんが選んだこの1本、面白そうである。


3組目は僕の3つ隣に座っている絵に描いたような老夫婦。

本当に絵に描いたような老夫婦だった。

みなさん頭の中に老夫婦を思い描いてほしい。


それです。


今みなさんが頭の中に描いた老夫婦で大体合っているはずである。

それぐらい絵に描いたような老夫婦だった。

老夫婦の会話が聞こえてきた。

「今までいっぱい映画を観に行ったねえ」

「お父さん、私実は数えてたんですけど今日で100本目ですよ」

「おお、そうかい。もうそんなに行ってたかい」

100本目。

とんでもないメモリアルな瞬間に立ち会えた。

老夫婦が観る100本目、面白そうである。


そして最後4人目は1番端の席に座ってさば寿司を食べている小太りの男。

そう。

この男、さば寿司を食べているのである。

僕は思った。

何でさば寿司やねん。

持ち込み自体あかんけど、持ち込むにしても何か他にあるやろ。

さば寿司て。

映画館で食うさば寿司うまいんか。

たぶんそんなにうまないやろ。


僕はこの時以外でさば寿司を持ち込んだ人を見た事がない。

持ち込みの中でもぶっちぎりの持ち込み。

キングオブ持ち込み。

そんなさばキングが選ぶこの1本、面白そうである。


僕はこのメンバーを見て思った。

少数精鋭。

こんなに少ないお客さんでこんなにバラエティに富んだメンバーになる事はそうそうない。

これは忘れられない映画体験になる。

そう確信した。

そして映画が始まった。



2時間後。

僕はポカンと口を開いていた。


この映画


めちゃくちゃ面白くなかった。


信じられないぐらい面白くなかった。

本当に今まで観た中でダントツで1番面白くなかった。


僕は普段、映画に関して一言で面白くなかったとあまり言いたくはない。

でもこの映画に対しては面白くないとしか言いようがない。

どこを切り取っても面白くないのである。

最初から最後まで完璧に面白くない。

寸分の狂いなく面白くないのだ。


本編が終わりエンドロールが始まり壮大な音楽が鳴り出した瞬間

僕はプッと笑い出しそうになってしまった。

いやいや何がやねん、と。

何を壮大な感じ出しとんねん、と。


壮大なエンドロールの最後、監督の名前がバンっと出た瞬間また僕はプッとなってその映画は終わった。

そして場内の電気がパッとついたその瞬間だった。

僕を含めた全員が

「はああああ〜」

と同時にため息をついたのだ。

他人のため息がハモった瞬間を僕はこれ以外に聞いた事がない。

凄い一体感だった。

まるで慣れたライブのMCがその場にいるかのようだった。

MC「はい、じゃあみんなでため息出しときましょうね!いきますよ!せ〜の!」

みんな「はあああ」

MC「ちょっと声が小さいですね!もっと大きな声でため息出しましょう!好きなあの子にフラれた事考えて!せ〜の!」

みんな「は、は、はあ、はあああ」

MC「バラバラ!みなさんバラバラですよ!みんなで心を1つにしましょう!声も大きく!せ〜の!!」

みんな「はああああ〜」

MC「ありがとうございます〜!!それではスタートで〜す!!」

ぐらいの一体感だった。

みんな少しでも早くため息をつきたかったのだろう。

僕はここにいるみんなが戦友だと思えてきた。

この超絶に面白くない映画を耐え抜いた戦友。


戦友達はみな肩を落として出口に向かっていた。

僕は心の中で戦友達に語りかけた。


気弱な大学生よ、またなんかいい事あるさ。

コワモテのおじさん、今日はお疲れ様でした。また次いい映画見ましょう。

絵に描いたような老夫婦、今日の映画はノーカウントにしましょう。次を100本目にしたらいいじゃないですか。

さば寿司の男、次はさば寿司持ってくんなよ。


そして最後に自分へ。

いくらヒマだからって何のリサーチもせずその場で映画選ぶなんてトリッキーな事、二度とやめような。


僕たちは映画館の外に出て、またそれぞれの人生に戻っていった。













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