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ちくわぶの60分


まさかの3日連続更新。

1回更新し始めると止まらない。

それがにっしゃんのnoteである。

東京に来て1年半と少し。

僕が東京で一番カルチャーショックを受けたのは

ちくわぶ」である。

関東の方にはおなじみのおでんの具材。

しかし35年間関西に住んでいた僕は、このちくわぶという食べ物を生まれてこの方見た事がなかったのだ。

僕が初めてちくわぶに出会ったのは昨年の10月頃、コンビニでのバイト中。

夏が終わり、おでんの販売が始まった時である。

その日、僕が出勤すると前の週まで無かったおでんの容器が置かれていた。

おでんの販売に関する簡単な説明を受け、勤務を開始する。

昔働いてたコンビニでも数え切れない程おでんはやった事があるので、まあ楽勝である。

そう思いながら働いて2.3時間経った頃。

その日初めておでんをお客さんが買いに来た。

僕は容器を片手にお客さんが言った具材をトングで取って入れていく。

「え〜大根とたまごとしらたきと、、、あと、ちくわぶ!」

僕は「はて?」と思った。

ちくわぶ?

この人、いま"ちくわぶ"って言うたよな?

え、"ちくわ"じゃなくて?

ちくわぶって何??

なんや"ぶ"って?

変なぶ付いてんねんけど。

ぶ?

ぶって何?

部?

ちくわ部って事?

この人そういうおでん研究みたいな部活に入ってるって事?

「大根!たまご!しらたき!ウウ〜我らちくわ部!」

そういう部活紹介って事?

え、何??

それか「ひでぶ!!」みたいな事?

え、何か秘孔つかれたん?

北斗神拳伝承者に秘孔つかれたん?

え、じゃあもうすぐ頭爆発するやん。

勘弁してや。

そんな事を考えていると、お客さんがちょいちょいと指をさした。

そこにはちくわの形をした白い塊が沈んでいた。


こうして僕は

ちくわぶという食べ物に初めて出会ったのである。


おでんの販売をしていくうちに分かった事がある。

それは

ちくわぶはかなりの人気具材だという事だ。

おでんを買う人の結構な割合でちくわぶを選ぶ人がいる。

このちくわの形をした何か。

侮りがたし。

それにしてもこのちくわぶ。

謎だらけである。

何故ちくわの形をしているのか。

別の形じゃダメだったのか。

これはちくわのふんどしで相撲を取ってるんじゃないのか。

だって僕が今から全身青く塗って顔にひげ描いて首に鈴つけて

「ぼくドラえもんぶ!」

と言ってデビューしようとしても誰も相手にしないだろう。

それなのに何故ちくわぶはこんなに市民権を得ているのか。

謎である。

そして何より

どんな味がするのか。

それが気になってしょうがない。

気になって気になって、どうしようもない。

そう。

いつしか僕は

ちくわぶに心を奪われていたのである。


いよいよ我慢出来なくなった僕は晩御飯をおでんにし、そこにちくわぶを投入する事にした。

おでんの他の具材はパックに入ったすでに出来てる物を買った。

そして本命のちくわぶは別で一本売りされている物を買った。

本当はコンビニで全て出来ているおでんを買いたかったのだが、僕の家のすぐ近くには恥ずかしながらコンビニがない。

自転車でおでんを運ぶというハイリスクな行為は避けたのである。

家に帰ってきた僕はさっそく買ってきた具材を鍋で煮込み始めた。

一応あらかじめ出来ている具材なので、ちょっと煮るだけで完成である。

ただ問題が一つ。

そう。

ちくわぶである。


こいつだけは別なのである。

調理されているのかどうかも分からない。

どう調理していかも勿論分からない。

謎だらけの物体。

関東の白い塊。

まるで連邦の白い悪魔のような響きだ。

とりあえずパッケージの裏を見てみる。

うむ。

何というか。

「ひたすら煮ろ」みたいな事が書いてある。

まあ、ある意味分かりやすい。


という事で、僕はひたすら煮た。

ちくわぶを煮て煮て煮まくった。

それでも何か固い気がしたので、さらに煮た。

他の具材がトロトロになりそうだったので、先に食べた。

結局、鍋にはちくわぶだけがポツンと残された。

僕は思った。

何してんの、これ!?


何かちくわぶだけなったんやけど!

いつ完成すんのか全く分からんねんけど!

こんだけ煮たのにまだ全然固い気すんねんけど!


僕はとりあえず半分に切ってちくわぶを食べてみた。

うん。

モッサモッサ。


口の中がモッサモッサである。

何やこれ。

小麦粉、直で口にぶち込まれたんか。

あと全然味無い。

びっくりするぐらい味が無い。

え、俺キン消し食ってる??

これちくわぶよな?

キン消しちゃうよな?


僕はもう一度ちくわぶを煮込み始めた。

半分ヤケクソである。

こうなればトコトンやってやる。

クタクタに煮込んでやる。


味が無いので、しょうゆをぶち込んだ。

鍋が黒く染まる。

ぐつぐつぐつ。

ひたすら煮る。

この時の写真がこちらである。


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いや、毒作ってんのか!


何や、これ!

ほとんど魔女の鍋やないか!

お金無さすぎて具材一つしか入れられへんかった貧乏な魔女の鍋やないか!

何でこんな事なるねん!


こうして煮る事、60分。

ようやく出来上がったのが、こちら。

画像2


これを「おでんです」と言っても誰も信じてくれないだろう。

でもこれはおでんなんです。

おでんのちくわぶなんです。

一口食べてみる。


!?


!?


僕は思った。


わからん。


正解がわからん。

正解のちくわぶを食べた事ないから、これが正解に近いのかそうじゃないのか全く分からん。

確かにさっきよりはやわらかくなってるし、味もある。

でも、これでいいのかと言われるとそうじゃ無い気もする。

でもこれぐらいな気もする。

分からん!

全く分からん!!


こうして僕とちくわぶの60分は分からないまま幕を閉じた。

タイトルの「ちくわぶの60分」とはただただ煮込んだ時間だったのである。

我ながら世界一無駄な60分だった気がする。

あとこのちくわぶの60分ってタイトル、昔の漫才劇場の単独ライブでありそう。

とりあえずちくわぶの本来の味は未だに分かっていない。

機会があれば是非本来の味を味わってみたいものである。


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