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病院とちびっ子


毎日更新284日目。

この前、皮膚科に行った時の事。

僕はここ2年ぐらい前からお肌の調子が悪く、定期的に皮膚科に通っているのだ。

最近、病院代がかかって仕方ない。

トホホである。

待合室で順番を待っていると、お母さんと3歳ぐらいの男の子が入ってきた。

男の子はお母さんに抱き抱えられ、入ってきた時点から大泣きしている。

病院が怖いようだ。

「イヤだー!イヤだー!」と泣き叫び、ジタバタと暴れている。

そして続けてこう叫んだ。

「ぼくはー!!びょういんがー!!!こわいー!!!」


ハッキリ言うやん。

めちゃくちゃハッキリ泣いてる理由言うやん。

この子、自己申告が凄いやん。


泣き叫びながらも何故かハッキリ言うので、周りの人達からも思わず笑みが溢れる。

僕もちょっと笑ってしまった。

男の子はまだ「ぼくはー!!びょういんがー!!!こわいー!!!」

と泣き叫び続けている。

男の子本人は必死だが、周りから見ると非常に可愛らしい。

お母さんは何とか泣き止まそうとしながら周りの人達に申し訳なさそうにしているが、全員「大丈夫ですよ」といった感じで微笑ましく見ている。

何より、みんな心の中でおそらくこう思っているはずなのだ。

「いや、皮膚科はそんな怖くないよ?」

男の子から見れば全部同じ病院に見えるのだろう。

もしかしたら以前、注射をして痛かったとかの記憶があるのかもしれない。

まあ皮膚科も注射が全くないとは言い切れないが、他の科に比べれば怖さはほとんどないはずである。

この事をちびっ子に伝えてあげたい。

みんな同じ想いを持っていた時、看護師さんがそっとちびっ子に話しかけた。

「大丈夫だよ。ここはね、全然怖くないよ」

みんなの想いを代表して言ってくれたのである。

続けてお母さんが言う。

「そうよー。ここはね、痛い事とか何もしないのよー」

しかし男の子は変わらず泣き叫ぶ。

「ぼくはー!!びょういんがー!!!こわいー!!!」

以前、余程怖い思いをしたのだろう。

なかなか聞く耳を持ってくれない。

僕は何の意味も無いながらも心の中でちびっ子に語りかけた。


やあ、ちびっ子。

君にいい事を教えてあげよう。

この病院はね、本当に何も怖くないんだよ。

看護師さんやお母さんの言う通りだよ。

全然怖くないんだ。

皮膚科はね、病院の中でも屈指の怖く無さなんだよ。

何も心配する事はないんだよ。

それにここの先生は凄く優しいし、きっと気付いたら時には診察が終わっているよ。

終わった時には「なーんだ、全然怖くないじゃないか」って思うはずだよ。

だから落ち着いて。

それにね。

世の中にはもっとはるかに怖いものがいっぱいあるよ。

皮膚科より怖いものがたくさんあるんだよ。

僕が思う一番怖いもの。

それはね。

金欠だよ。


金欠はマジで怖いよ。

どうしようもなく怖いよ。

皮膚科なんか比べ物にならないぐらい怖いよ。

たまにね、どう計算してもお金が足りない時があるんだ。

残り5日を300円で過ごさなければいけない時とかあるんだ。

これはね、物理的に無理なんだよ。

人間どうやったって1日60円では暮らせないんだ。

この計算やってる時は本当に怖いよ。

プルプルプルプル震えるんだ。

大のおじさんが震えるんだよ。

どんだけ怖いか分かるよね?

あれに比べたら皮膚科なんて全然どうって事ないよ。

あとね、数週間後に金欠が間違いなく訪れる事が分かっている時も本当に怖いよ。

今の僕がそうなんだけどね。

どう足掻いても今月末には過去最大級の金欠がやってくるんだよ。

恐怖の金欠予告だよ。

めちゃくちゃ怖いよ。

でももっと怖いのはね。

それが分かっているのに

つい最近、餃子の王将で餃子2人前とビールをやってしまった自分だよ。

節約とは真逆の方向に突っ走ってるよ。

ただ、めちゃくちゃ美味かったよ。

やっぱり餃子とビールは最高の組み合わせだよ。

これよく覚えといてね。


と、到底子供には聞かせられない内容を僕は心の中で語りかけた。

すると、いつの間にかちびっ子は泣き止んでいた。

僕の心の声に反応してくれたのかもしれない。

僕は最後に「がんばれ、ちびっ子」と心のエールを送りながら、自分の順番が来たので診察室に入った。


診察が終わり、僕は薬をもらうため横にある調剤薬局に向かった。

処方箋を出し、席に座って待っていると

さっきのちびっ子とお母さんが入ってきた。

入りなりまたもやちびっ子が泣き叫び始めた。

「ぼくはー!!びょういんがー!!!こわいー!!!」


僕は思った。

ちびっ子、ここ病院やない。

薬局や。



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