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円安で ”得”する人 ”損”する人

今日(4/28)の外国為替市場は、日本銀行が金融緩和策を実質強化する方針を打ち出し、現在の急激な円安も注視するとしつつ、日本経済にはプラスととらえているとしたことで、円安が加速し、2002年4月以来20年ぶりの1ドル130円を付けました。2002年4月といえば、私が小学校の入学式に出た時です。小学生なり立ての時期の水準にまで円安が進んだ格好です。
その後もさらに円安が進み、執筆している時間(23時15分ごろ)には131円台に乗せてきました。

日銀の金融政策決定会合の結果が出た12:08ごろに円相場は急上昇。
14:38に130円台の大台を付けた。さらに23:15(NY市場)では131円台にまで乗せてきた。

最近ニュースでよく”悪い円安”という言葉を聞くようになったではないでしょうか。連日財務相や政府関係者が「急速な円安は望ましくない」といった趣旨の発言をしています。しかし、
実は自分がいま置かれている立場によっては、
今の円安で『”得”する人』と『”損”する人』に分かれるのです。

今の円安がなぜ起きているのかを軽くおさらいしながら、円安で”得”するケース・”損”するケースを紹介し、今の円安をうまく利用できるようになれたらと思います。

今の急速な円安が起きている理由は?

3/1に1ドル=114.89円だったドル円相場は、2か月弱で15円以上円安になりました。その理由は何でしょうか。

①インフレ率の差による日本と各国の金利差の拡大

これが今回の円安の一番の理由だと思われます。アメリカの3月の物価上昇率は前年同月比+8.5%(8年半で物価が現在の2倍になるペース)であるのに対し、日本は前年同月比+1.2%(58年で物価が現在の2倍になるペース)と歴然とした差があります。そうするとアメリカの中央銀行(FRB)は過度な物価上昇ペースを抑えようと、利上げや量的緩和の縮小などの金融引き締めを行うため、国債の金利は上昇します。一方、日本は金融引き締めするまでの状況ではなく、むしろ景気回復のために金融緩和を行うことで、金利を抑えようとします。これにより日米で金利の差が大きくなり、利息が多くもらえるようになるドルの需要が高まり、ドル高円安となるのです。こうした状況は「日本ーアメリカ」のみならず、諸外国との間でも同様の事態となっているため、日本円は各国通貨に対して大きく下落しています。

②日本経済の構造変化による日本円の魅力低下

かつて「円安は日本にとってメリットになる」と社会の授業でも出てきていました。それは輸出で外貨を稼ぐ割合が高かったころにおいて、円安は輸出にとってメリットだったためにそう言われていました。しかし、現在はそうした声はあまり聞こえてきません。輸出で儲けていた企業は超円高時代の間に生産拠点を海外に移してしまっているため、輸出による恩恵は受けにくくなりました。
また以前日本は経常収支(貿易+財・サービスの取引など)で多額の黒字を出していました。しかし、現在は原子力発電所停止を補う火力発電に必要な石油石炭の輸入増やインバウンド消滅による所得収支の悪化により、経常赤字を出すようになり、日本からマネーが流出するようになりました。
円安による恩恵を受けにくくなる一方、日本からマネーが出ていくような状態では、その国の通貨である日本円の魅力は低下してしまいます。こうした要因も現在の円安を招いています。


円安で”得”する人

ここからは円安で”得”する人・”損”する人について紹介していきます。まずは”得”する人です。

①輸出企業・海外で稼いでいる企業

上記で「輸出の恩恵は受けにくくなった」と述べましたが、それでも輸出を中心に収益を得ている企業はあります。そうした企業は今回の円安で増収増益が見込まれます。また海外先で外貨建てで稼いでいる企業は決算時に日本に交換します。その際に為替が円安に進むと円換算における利益が増加します。これも”得”するケースの一つです。

②外国の資産への投資・外貨預金

今回の円安で外国資産への投資・利率の高い外貨の預金を始めた方も多いのではないでしょうか。現預金の保有比率が高い日本にとっては、今回の円安は海外への投資を始める絶好のチャンスです。私は昨年7月末から投資をはじめ、海外資産への投資も行っていますが、今回の円安ほどその恩恵を受けたことはありません。
実際に海外のETF等に投資している証券口座の評価額のドル建てと円建ての比較です。(下図)ドル建てではマイナス(=評価損)となっていますが、円建てではプラス(=評価益)に転換しています。
現預金を持ち続けていても超低金利においては利息はほとんどつかず、世界各国のインフレで日本円の価値は目減りしていることからも、投資を始めてはいかがでしょうか。

ドル建てでは158.3ドル(20,330円)分の評価損が出ていても、
円建てでは411円の評価益になっている。見えにくいかもしれないが、ドル建てでの評価額のグラフとの差の開きが3月半ば以降大きくなっているのがわかる。

③インバウンド旅行客

現在はコロナ対策により、入国がかなり制限されていますが、コロナ前は3000万人を超える外国人観光客が日本に来ていました。その時の為替レートは大体1ドル=105円~111円でしたが、それでも日本は割安だとして”爆買い”が起きていました。それが現在のこの円安水準となると、入国制限緩和後はさらなる外国人旅行客が入りそうです。これで日本経済が少しでも潤うことを期待します。


円安で”損”する人

①輸入企業・輸入材料を多く使っている企業

「輸出企業が儲かりやすくなる」の反対です。輸入企業は仕入れ価格が上がり、販売価格も上がってしまいます。また製品を製造する際に原料を海外からの輸入に頼っている企業も製造コストが高くなり、収益を圧迫します。素直に、コスト上昇分を販売価格に転嫁できれば良いのですが、日本では長年のデフレマインドにより、値上げに対してかなり敏感かつネガティブに反応するので、ただ企業収益圧迫につながり賃金の停滞につながります。

②海外旅行を計画している日本人観光客

インバウンド観光客が安く日本旅行できるのであれば、その逆、日本人観光客は海外旅行に使う費用が高くなります。ここでは詳述しませんが、日本と海外の物価上昇率の差で、日本円の購買力が著しく低下し、日本円の力強さを示す「実質実効為替レート」が1ドル=308円の固定相場制だった1972年以来50年ぶりの低さになっています。これも重なって、海外旅行先での物品の値段の高さにビックリすることとなり、買いたいものがなかなか買えなくなる状態になります。

まとめ

以上、円安で”得”する人・”損”する人を挙げてきました。為替の変動は一方にいい影響が出れば、もう一方には悪い影響が出ます。なので「円安=悪」と決めつけるのは少し無理があります。それでも賃金が上がらない日本にとって、物価上昇圧力がかかるとなると、スタグフレーション懸念も高まり、日本経済にさらなるダメージを与えることとなるので、為替の動きには今後も目が離せません!

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